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8番目、怒ってるぞ。37


朝食を食べたらユプスさんもシュナさんもそれぞれ仕事に戻るそうだ。

賑やかな朝食が楽しかっただけに、みんなが一気に帰ってしまうのはちょっと寂しい‥。でも仕事だし、そこは仕方ないか。


「ではリニ様、近くお勧めの小説を持って参りますね!」

「はい!楽しみにしてます」


シュナさんはそう言うと、背中から竜のような大きな翼をバサッと出すと、「それでは〜!」と空を飛んで行くので目を丸くした。


「え!?え???」


思わずベル様の腕をちょいちょいと引っ張ると、ベル様は少し耳を赤くした。


「‥キルシュナは竜族だからな。本来はドラゴンを統べる存在だ」

「す、すっごい方なんですね?!」

「‥まぁ、そうだな」


ほぁ〜〜〜!!

フィヨルムに来てから、一気に私の世界がファンタジーのような世界になってないか?いや、そもそもエルフ族もドワーフ族も魔族も獣人もいるんだけど、東の端っこの島国だったから全然会えないから普通に人間しかいなかったので、すっごく生まれ変わったんだな〜って実感しちゃうわ!



と、ユプスさんが空をげんなりした顔をしながら見上げ、


「可愛いもの好きなのだけは頂けないけどな‥。さーて、そんじゃ俺も帰ろ」


そろっと足を横に向けた途端、フィプスさんがじろっと睨んで、


「ユプス、ガラス代は請求しておくからな!」

「う、わ、わかってるよ!しょーがねーだろ。騙す奴が悪いんだって」

「騙される‥?」


私の言葉にユプスさんがぎくっと顔を強張らせると、フィプスさんがすかさずユプスさんの頭を引っ叩いた。


「すみません、うちの弟は本当に単純、単細胞、短絡的な奴でして、その事でリニ様にご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません」

「んがーーー!!俺はそんな単純、単細胞、たん‥なんとかじゃねぇ!貴族の奴らがなんかゴチャゴチャ言うから!!」

「ユ・プ・ス・?」

「はい、黙ります」


慌てて口を閉じたユプスさん‥。

貴族と仲が悪いのかな?ベル様を見上げれば、眉間にシワを寄せ、



「俺は平民だからな。貴族の奴等は俺が軍団長なのがずっと気に入らないんだ」

「え!?でも軍団長って、選ばれてなるものですよね?」

「そうだな。強さがないとまず話にならない」

「じゃあ、文句を言われる筋合いってあります?」



少なくとも魔物が出たと聞いて、あちこち飛び回っていたのに?

魔物じゃないけど、うちだって害獣が出たら狩るけれど、無傷で済む訳じゃない。どこかしら怪我をして帰ってくる。それを見てないのかな?なんだかムカムカして頰を膨らませていると、ベル様が珍しいものを見るように私を見つめた。


「‥‥なぜ、頬を膨らます?」

「あ、すみません。怒った時の癖です」

「怒った‥」

「だって!ベル様、私がいる時に魔物を倒してたじゃないですか!デリーさんは助かったって言ってたのに、それを貴族の方達は何を見ているんだ!?って思っちゃって‥」


あ〜〜〜!ダメだ、そんなことを言われてもベル様は困るだけだろうに、ムカムカしちゃってまた頬を膨らませてしまう!これやるとお兄ちゃん達に「またカエルがいるぞ〜」とからかわれてしまうんだけど、ついやっちゃうんだよね。



「‥可愛いな」

「っへ?」



なんか言われたことのない言葉を言われたぞ?

ベル様を見上げると、可笑しそうに笑う口元を手で隠しているけれど、ちょっと‥いや、しっかり見える。


「リニは怒ると頰が膨らむのか」

「‥‥つい。気をつけます」

「いや、初めて知れて嬉しいから、そのままで」

「な、なる、ほど?」


そっか。

私達、まだまだお互い知らないんだった。

両頬を手で挟みつつ、ちらっとベル様を見上げ、


「ええと、とりあえずベル様はしっかり仕事をなさっているので、貴族の方達にごちゃごちゃ言われる筋合いはないと思います!少なくとも私はそう思います」


そうしっかり伝えると、ベル様は眉間のシワがガッツと勢いよく入り、


「そうか‥!」


と、堪えるように頷いてくれたけれど、これは、嬉しい‥のか?

それとも何か私にはわからない葛藤を抱えているのか?

ユプスさんとフィプスさんを見れば、二人は肩を震わせているけれど、え、ちょっと?またやらかしたの?私の発言、まずかったの?オロオロしていると、ベル様が私をじっと見つめ、



「‥今日、家に戻ったら午後は一緒に本を読もう」

「あ、そうでしたね!人間についての本、私もしっかり探しておきます」

「では、仕事に行ってくる。おい、ユプス行くぞ。今日はお前のところだろ」

「へいへい。じゃあな」

「あ、はい。えっと、行ってらっしゃいませ!」



私が笑ってそう言うと、ベル様の眉間のシワがますます深くなり、それを見ていたユプスさんが「オルベル、眉間やベーぞ」とすかさず突っ込んだ。やっぱりそうだよね?でもそれがベル様の普通なの?そう聞きたかったが、二人は空から急降下してきたノルチェにあっさり乗って出かけてしまった‥。


魔族の出発、早い〜〜〜。





私は怒るとゴリラみたいな歩き方になってるそうです。

わかりやすいね☆

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