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8番目、お互い様?34


ベル様と一緒に中庭の畑へ行って、早速水やりだ〜〜!

ウキウキしながら一緒に中庭の端っこにある小さな畑に行くと‥、



「え!?もう芽が出てる?」



畑からまさかの芽が出ていて、私は目を見開いた。

どんなに早くても5日くらいはかかるのにもう芽が出てるってどういうこと?!隣でベル様が私を見て、「すぐに芽が出るんだな」と感心しているけど、そんな訳ないです〜〜!


「本当ならもっとかかるんですが‥。土地が違うから、でしょうか」

「そうなのか‥、俺は野菜を育てたことがないからよくわからんが、フィプスにでも聞いてみるか」

「ありがとうございます。私も貸して頂いた本で調べてみますね!」


ベル様にお礼を言ってから二人で井戸へ水を汲みに行けば、私だと重くて力がいる水をいっぱい汲んでジョウロに入れてくれた。‥いいなぁ、体力があって。



一緒に畑に水やりをしていたら、畝の横に小さな白い花が咲いていたのが目に入った。


「あ!これ、うちの周りにあったお花だ‥」

「そうか、小さくて可愛いな」

「はい。これお母さんがすごく好きで、これが咲くとよく家に摘んで帰ったんです。このお花をお母さんにあげるとすごく喜んで花瓶に綺麗に飾ってくれて、子供心にそれが嬉しかったんです」


もしかしてお母さんがくれた野菜の種の中に紛れ込んでいたんだろうか‥。ともかくその小さな花がここでまた見られるなんて思ってなかったから嬉しくて、しゃがんで指でそっと撫でるように触れた。



「ふふ、可愛い‥」



ベル様も横に並んで一緒にしゃがみ、その花をじっと見つめると、



「‥‥‥家に、帰りたいか?」

「え?」

「‥‥‥寂しいのかと、」

「寂しい、」



白い花をじっと見つめるベル様の横顔の方が、ずっと寂しそうだけど‥。

なんでそんなことを聞いてきたんだろ?ええい!会話だ、会話をせねば!


「私、帰りたそうに見えましたか?」

「‥色々、大変だろう」

「大変?」

「食べ物も、環境も、人も違う‥。それに、まだ18だ」

「まぁ、そこ全部引っくるめて来たんですが」


白い花の話を聞いて、里心が出たと思っているのかな?

ジッとベル様を見るけれど、肝心のベル様は白い花を長い指で突いていて、こちらを見ない。


話をするなら目を見なさい。


こっちを見ろ!とばかりにお花を突いているベル様の指をちょんと突くと、ベル様がわかりやすいくらい体をビクッと跳ねさせた。



「な、なんだ!?」

「一応確認しておきたいんですが、ベル様は私に帰って欲しいんですか?」

「っい、いて欲しい!」



驚きつつも私にそう言うと、慌てて目をまた横に逸らした。


「‥いて欲しい、が、強引に連れて来てしまったと思ってて、」

「なるほど‥」


自覚はあったのか。

でも咄嗟に「いて欲しい」と言ってくれた事が、じわじわと嬉しさになってやってきた。そっかぁ〜〜、いて欲しいのか〜〜。ノルチェに乗って気絶するわ、酔っ払って寝ちゃうわと、やらかしまくっているのに、心配してくれるんだ。それなのにいきなり帰るか?って聞いてくる分かりにくい優しさに、つい笑いが込み上げてしまう。どんだけ不器用なんだこの人。


ジッとベル様を見つめると、ベル様が驚きつつも私を見つめ返した。



「私はまだここに居たいです」

「え」

「お互いのこと何にも知らないんですし、ちょっとずつ知っていきましょうよ」

「そ、そうか?」

「はい。私達15年ぶりな上にまだ会って3日目ですし」

「‥‥それは、そうだな」

「だから今日もよろしくお願いしますね!」



握手をしようと手を差し出すと、ベル様の尖った耳が一気に赤くなった。

握手だけで照れる軍団長って可愛いなぁ。ベル様は耳を赤くしたまま私の手を、壊れ物を扱うようにそっと握った。


「今日も、よろしく‥」

「はい!こちらこそ」


きっと今日も良い1日になるぞ〜!

そう思っていると、ズズン‥と何か地響きのような音がして、そっちを見ると、自分の3倍くらい大きな猪の魔物を肩に担いだユプスさんが超絶笑顔でこちらへ歩いてやって来た。



「お、なんだもう起きてるのか?」

「お前は‥、帰れと言ったのに」

「なんだよ。人間に持って来てやったのにその言い方は!あ、あんた!話はフィプスから聞いたぞ。なんでも無理矢理嫁にって連れて来られたんだって?あんたも大変だな!」

「ユプスーーーーーーー!!!!」



ベル様が怒鳴ると、フィプスさんが飛んできて、バシーーンといい音を立ててユプスさんの後頭部を引っ叩いた。


「バカ!もっと丁寧に教えただろ!!!」

「えー、でも大体合ってるだろ?な?」


ユプスさんが私に確認すると、ベル様が私を緊張した顔で見つめた。

‥すごく分かりやすい。


まだ3日しか経ってないのに、こんな不器用な夫(仮)と結婚するなんて本当に面白い経験しているよね。私は小さく笑って、



「ちゃんとお互い納得して結婚したので‥。それに結構楽しいですよ」



そう言うと、ベル様は安心したように息を吐くので笑ってしまった。

うちの夫(仮)は、なかなか面白い人だな。





今日も読んで頂いてありがとうございまーーっす!!

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