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8番目の疑問。33


ユプスさんの飲んでいたお茶を飲んで酔っ払って寝てしまった翌朝。

今度こそ目を覚ますと、大きな窓の外から雲の隙間から薄っすらと朝日が差し込んでくるのが見えた。


もう朝か‥。


いい匂いがする毛布から顔を出してみれば、昨日ソファーで寝ていたはずのにベル様がいない。‥もう起きたのかな?もそもそと毛布から体を起こして時計を確認すれば、6時を指していた。


いつもこの時間に起きていたけど、こっちへ来てもまだ体は覚えている。

それにちょっとホッとしてゆっくりといい香りがするベッドから起きた。いつの間にか白いワンピースのようなパジャマを着ていて、誰がこれを!?と、驚いたけれどきっとレーラさんだろう。



「ん〜〜〜!よく寝た」



体をぐーっと伸ばせば、背中がバキッと鳴った。

これはしっかり体を動かした方が良さそうだ。隣の部屋へ戻って身支度してくるか。シャワーも浴びて、さっぱりしたい。大きすぎるベッドから降りれば、足元にはちゃんとスリッパまで置いてある。至れり尽くせりだな。


スリッパを履いて、私の部屋に続いているドアをそっと開くと、ガラスが割れたままの室内。


うん、中庭や湖がよく見えるわ〜〜。

ガラスは綺麗に撤去されているけれど、確かにこの部屋へ戻って寝るのは無理だったな。ひとまず部屋の浴室でざっと体を洗って、パジャマのワンピースをもう一度着てタオルで髪を乾かしていると、バタバタと足音がした。



「リニ!?」

「へ?」



ベル様が勢いよく部屋のドアを開いてきたので、目を丸くした。


「ベル様、どうかしましたか?」

「え、あ、あのっ」


もしかして何かあったのかな?

ベル様の方へ駆け寄って、


「何かあったんですか?」

「いっ、いやっ、その、部屋に、いなかった、から‥」

「ああ、すみません。ちょっとシャワーを浴びたくて」

「そ、そうか、」

「身支度を整えたらベル様にお声掛けしようと思っていたのですが、一筆書いておけば良かったですね」

「だ、大丈夫っだ。無事なら、良かった」


そんな一瞬見えなくなっただけでえらい心配かけちゃうのか人間てぇ奴は‥。

まぁ、フィプスさんが私がこっちへ来ると聞いて越してきてくれたくらいだから、相当人間弱い認定されているのかもしれないな。



「ご心配お掛けして申し訳ありません。お茶は今度から飲む時は気をつけますね」

「あ、ああ‥」



ベル様は、明後日の方向を見ながら、


「こ、この後、少し早いが野菜の水やりは、するか?」

「はい。ベル様も一緒に‥」

「やる。だから、その身支度が終わったら教えてくれ。隣の部屋にいるから‥」

「はい!じゃあすぐ支度しちゃいますね!」


嬉しくてにこーっと笑えば、ベル様は私を眉間にシワを寄せながらも私を見てこくこくと頷くと、隣の部屋へ戻って行った。相変わらず表情筋、忙しそうだな‥。


「よし、さっさと着替えてこよっと!」


クローゼット部屋へ行けば、わかりやすいくらい目の前に濃いグリーンのワンピースが掛けられていた。



「‥もしかして畑仕事しやすいように、このカラーのワンピースを置いてあった‥?」



何故だろう。

この場にいないはずなのに、レーラさんが親指立てて「その通りです!しかも緑色なので草の汁がついてもちょっとやそっとじゃわかりません!」と、言っているイメージまで付いてくる‥。


イメージの説得力があり過ぎて、大人しくそのワンピースを着ると、これまたサイズピッタリだから驚きだ。髪を緩くまとめてから隣の部屋に向かってノックをすれば、すぐにドアが開かれて、ベル様が眉間にしっかりシワを刻みながら手を差し出してくれた。


これは行きたいのか、行きたくないのかどっちなのかとちょっと悩む。


ともかく差し出された手に手を重ねると、ベル様が静かに歩き出した。一言欲しいなぁ‥とも思ったけど、昨日とは違って私の歩幅に合わせて歩いてくれていることに気が付いて、恐ろしく不器用な人だったけと思い出した。



しっとりした絨毯の上を歩く足音しか聞こえない、静かなお屋敷。



まるで私とベル様しかいない感じがして、不思議な気分だ。うちだったら、お兄ちゃんはもう起きていて薪割りをしているし、お姉ちゃんはご飯を作っていたり、洗濯を始めてバタバタと動いている。



そう考えると、ベル様は寂しくなかったのかな?

大きな手が私の手をそっと握っているのを見て、ふと気になった。



「ベル様は、ここにずっとお住まいだったんですか?」

「ああ。レーラやフィプスが来るまでは気楽な一人暮らしだった」

「え、一人暮らし?!」

「魔法で掃除もできるしな。飯はその辺で食べてくるし‥」

「‥‥寂しく、なかったですか?」



生まれた時からずっと誰かの気配を感じて生きてきた私にとって、こんな大きな屋敷で一人暮らしってちょっと考えられない。思わず尋ねると、ベル様は私を眩しそうに見つめて、



「‥リニがいるから寂しくはなかった」



そう小さく笑って教えてくれたけど、私がここにいなかったのに寂しくない‥とは?首を傾げると、私の手を少しだけ優しく握ったベル様だった。





今日も読んで頂き、ありがとうございまっす!

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