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8番目、妻(仮)始動!24


オルベル様との初ピクニックはどうなるかと思ったけれど、気持ち良い場所を選んでくれて、なかなか楽しい。あ、オルベル様はもそもそと無言でサンドイッチ食べてますけどね。


チラッと視線だけ動かしてオルベル様を見れば、眉間のシワが消えていて、どことなく楽しそうな感じもする。


ううむ、魔族ってよくわからない。


確かキルシュナ様を「シュナさん」と、呼んだら眉間のシワが深くなっていた。と、いうことは、名前をそんな風に呼び合うのが本来はタブー、だった可能性もある‥。これはオルベル様に聞いてみる方が早いかな。そう思ってサンドイッチを膝の上に置いて、オルベル様の方へ体を向けた。



「あのっ、オルベル様」

「‥なんだ」

「名前って、もしかして何か重要な意味があったりしますか?」

「重要?」

「愛称で呼ぶと、危険、とか」

「いや、そういうのはないが‥」

「え、じゃあ、シュナさんと呼ぶのは大丈夫、ですか?」



私がそういうと、オルベル様の眉間のシワが復活した。

なんでやねん!やっぱりダメってこと?!!こりゃしっかり確認しておいた方が良さそうだ。


自分に気合いを入れてオルベル様をジッと見つめると、オルベル様は驚いたように私を見返した。


「オルベル様、何か私に黙っていることはありませんか?」

「え、」

「例えば、人間族では普通だけど、魔族だと知らないと困ることなど‥。具体的に言えば、愛称で呼ぶのは実はタブーとかありませんか?」

「そ、れは‥」

「やっぱり!何かまずいんですね!?」


わーーーー!!やっぱりめっちゃやらかしてしまったんだ!

内心ドキドキしているのに、オルベル様ときたら耳が赤くなって、目がウロウロし始めた。頼む!いっその事、ひと思いに言ってくれ!と、ジッとオルベル様を見つめると、オルベル様は自分の手元を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。



「‥‥‥‥‥俺も、リニと、呼んでいいか」


「っへ?」



あれ?

呼んでなかったっけ?

記憶を遡ってみると、結婚の報告の時に呼ばれたけれど、それ以外で‥、ないな?!全然ない!



「そういえば私の名前、呼んでなかったですね」

「そ、うだな」

「普通に呼んで下さい。一応夫婦なんで」

「‥‥‥‥一応」



ズンと一気にオルベル様の周りの空気が重くなった。

いや、だって結婚はあくまでも仮免許扱いだしさ。一応という表現でいいかな?って思ったんだけど、何かまたまずった?


と、オルベル様は緊張したように視線をそろっと上げ、



「リニ、」



私の名前を呼んで耳の先を赤くすると、パッとまた下を俯いた。



え‥‥、ちょっと待って。

なんだその新妻よりも初々しい感じは。

手元のサンドイッチの紙を指でいじっているその仕草とか、照れている‥のか?



片や私は横でサンドイッチをデカイ口でばくばく食べていたのに、この恥じらいよう。‥普通は逆じゃないのか?いや、この際、普通という考えは横に置いておこう。なにせ私は人間、相手は魔族。そもそもの全部違うのだ。



「オルベル様」

「なんだ‥」

「オルベル様は、なんとお呼びしたら嬉しいですか?」

「え?」

「旦那さんですし、何か呼び方があるなら、そちらの方がいいかな‥と」



そう話すと、オルベル様の黒と赤の瞳がパアッと輝いた。

おお、わかりやすいくらい輝いたぞ!


「ベル‥、で」

「ベル様ですね」

「様は、別に」

「いえ、旦那さんですし」

「キルシュナは、シュナと呼んでいた‥」

「友達ですからね。ベル様ではダメですか?」

「‥‥一度、ベルと、」


こだわるな〜〜。

でもなんだかそのこだわりようが可笑しくて、オルベル様を見上げて、



「ベル」



と、笑って呼べば、オルベル様は目を見開き、動きが止まった。



「ベル?」



もう一度呼べば、オルベル様が音もなく地面に倒れた。


「お、オルベル様ーーー!??ど、どうしたんですか!大丈夫ですか!?」

「‥‥‥‥大丈夫、だ」

「ほ、本当ですか?どこか痛いところは?苦しいところはないですか?」

「‥‥‥‥大丈夫、だ」


じゃ、じゃあなんでそんな胸を押さえているんだ!

本当に痛くないのか?大丈夫なのか?オロオロしていると、オルベル様が私の方へ手を伸ばしたので、思わずその手を握ると、



「‥やっぱり、様は付けておいてくれ」

「は、はい!」

「もう少し慣れたら、その時は外してくれ」

「は、はぁ?」



オルベル様は、ゆっくり体を起こすと私の握った手を見て、そっと握り返してくれた。


「‥リニ」

「はい」

「リニ」

「はい、なんでしょう?」


やっぱりどこか痛むのだろうか?

どこか嬉しそうなのに、辛そうな顔をするオルベル様を見て心配になる。

空いている手で、オルベル様が地面に倒れた時に頭についてしまった草をそっと手で取ってあげると、オルベル様は目を丸くし、それから小さく笑った。



「名前、可愛いな」



と、なんでもないことのように言うから、今度は私が目を丸くした。あ、ありがとうございます?





ちょっと甘くなってきましたね!??

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