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8番目、妻(仮)始動。19


私を抱っこしたまま視察をしようとするオルベル様。


頼むから一旦落ち着いてくれ!

歩きます宣言をされたオルベル様は、本当に大丈夫なんだろうか‥と、不安そうな顔をしたが、安心して欲しい。私は普段から畑を耕し、時に海に潜って魚も採ってくる丈夫な人間です。


ようやく地面に降り立った私の手を、オルベル様がしっかり握ると、



「オルベル様!?まさかこちらへ来られるとは知らず、すぐにお出迎えできず申し訳ありません!」



振り返れば、茶色の髪を後ろに撫で付けた髭のおじさんが、青ざめた顔でこちらへ全力で駆けてきた。もしかして領主さん、かな?というか、もしかして連絡せずオルベル様ってば、こっちへ来たの?


チラッと見上げれば、オルベル様はしれっとした顔で「キルシュナに言われてたのを思い出して、立ち寄っただけだから気にするな」と、のたまった‥。おおーーい!報告!連絡!相談!!こりゃこっちのが百パー悪いので気にしないでくれ‥と、ばかりに微笑むと、そのおじさんはオルベル様を見て、それからもう一度私を見つめた。



「‥もしや、奥方様ですか?」

「はい。お初にお目に掛かります。リニ・プレファンヌと申します。今日は急遽お邪魔させて頂き、感謝します」

「おお!!そうでしたか!申し遅れました、私この領地を守らせて頂いているデリー・トベルクと申します。私こそお会いできて光栄です」



おお、魔族っぽく耳が尖っているのに、すごくスマートだ。

それでもって周囲で見ている人達も、耳が尖っているけれどうちの国の人達に似ている。‥ガタイは皆さんすごく良いけれど。ともかくスマイル!スマイルである。なにせ女は度胸、愛嬌、最強だからね。


にっこり微笑むと、デリーさんも同じように微笑んでくれて内心ホッとしていると、オルベル様が周囲をチラッと見て、



「漁に苦戦している‥と、聞いたが今はどんな状況だ?」

「は、はい!実は魔物が近くの漁場に住み着いたようで‥、町の隊長とどう対処しようかと、」

「港はあっちだったな」

「はい!こちらです!」



デリーさんが急いで先導すると、町の人達がサッと道を開けてくれた。魔族の人達って強いから、魔物が出てもさっさと倒して食べてしまうイメージだったけど、そうじゃない時もあるんだな‥。まだ知らないことだらけだ。


3人ですぐ近くの港へ行けば、よく嗅いだことのある潮の匂いと、小さな波音にホッとする。


チャプチャプと水音がする港は、薄い茶色のレンガを重ねて作られていた。そして、そんな海へ突き出た港の周囲を岸が丸く囲んでいた。なるほど、小さな湾のようになっているのか。魚網を繕うおじさんや、小さな魚を網の上で乾燥させるおばさんを見ると、どこも海がある場所は似ている光景だな‥と、感動してしまう。だって今更だけど、私海外に来ている訳だし?



「魔物が住み着いたのは、あの湾の少し先ですね」

「あそこか。キルシュナが言っていたが、どうも魔物が住みやすい環境らしいな」

「同時に魚も住みやすいので、環境を変える訳にも行かず‥」

「なるほど。では魔物だけ仕留めてくるか」


「「え?」」



私とデリーさんが声を揃えてオルベル様を見上げると、オルベル様が私の手をそっと離した。


「少し待ってろ」

「え、あ、はい?」

「オルベル様、お一人で?!せめて供を‥」

「要らん。大丈夫だ」


オルベル様がピイッと指笛を吹くと、黒い大きな影が足元で映った。

パッと顔を上げれば、風と共にドラゴンのノルチェがオルベル様の腕を掴み、そのままポイッと背中に投げたので目を疑った。ちょ、ちょっと投げられているけど、大丈夫なの?!


けれど、離れていくノルチェの背中を見れば、オルベル様が首元の手綱を握って立っていて‥驚きで言葉が出てこない。



「魔族の方って、すごいですね」

「あれは多分オルベル様だけですね‥。といってもどの軍団長様もお強いですが」

「そうなんですね。確かにエルザ様もすごくお強そうでした」

「どの軍団長様も我々魔族からしたらそれはお強いです。特にオルベル様は圧倒的ですね」

「そうなん、ですね‥」



15年ぶり2度目ましての私にとって、最強の魔族という情報は本当に〜?なんて若干疑っていたけど、こうして実際に魔族の人達がいうと、真実味が増す。いや、真実なんだろうけどもね。


「オルベル様、すごく努力されたんですね」

「はい!それはもう奥様とご結婚される為に」

「え?私???」

「はい、有名なお話です」

「ゆ、有名?」


私と結婚する為に強くなった?なんで?と、頭の中で疑問符が飛んでいると、湾の少し先で突然ドーーーンという音と共に大きな水柱が立ち上がった。



「え、な、何?!」



水柱を見れば、その中から大きなタコが水の中から追い出されるように空中を舞い、それが一瞬で大きな火に包まれて海へ落ちる前に真っ黒になってしまった。



「「え?」」



ちょっと待て?なんか急展開過ぎない?

でも隣のデリーさんも驚いた顔をしているから、これは私が驚いてもおかしくないってことだな?そう納得して、また海をぽかんとした顔で見つめた。





たこ焼き‥食べたくなってきたぞ。

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