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8番目、妻(仮)始動!15


目が覚めたら朝だった。


あれ?

ここどこ?

豪華な天蓋ベッドを見上げれば、お日様とお月様、そして花々が散りばめられている。おお〜〜、夢可愛いというやつだなぁ‥。


「いや、そうじゃないな?!」


勢いよく体を起こせば、白枠の窓からは綺麗な庭園が見える。

‥あ、そうだ。結婚(仮)したんだ。それで、私は昨日ドラゴンに突然オルベル様と一緒に乗って‥‥どうしたんだっけ?



「あ、リニ様、起きられましたか!お体は大丈夫ですか?!」



ノックと共にレーラさんが飛び込んできた。

うーん、朝からレーラさん元気だわ。



「おはようございます。もしかして私、ぐっすり寝ちゃってました?」

「‥‥正しくは気を失って、そのまま眠られていた、ですね。リニ様、オルベル様が本当に申し訳ありません!私共も謝罪を‥」

「いやいやいや、私がうっかり気を失っちゃっただけなんて!大丈夫なんで、顔を上げて下さい!」



慌ててレーラさんにそう言うと、レーラさんは泣きそうな顔をして、


「‥‥オルベル様、すごく反省をしてまして、」

「あ、はい」

「猪の魔物をもう一度狩りに行って‥」

「うーーーん!そこは素直に謝った方がいいかなぁ‥」

「そうなんですね!!じゃあ、すぐに引きずってきます!!!」

「待って!!待って下さい!!その前に、着替え!着替えをしますから!!」

「ああ、そうでしたわ!私ときたら先走ってしまって、申し訳ありません」


‥まるでコントみたいだ。


しかし、反省をして魔物を狩りに行くって、なんでやねん。

美味しいって言ったからもう一度喜んでもらおうと思ったのか?

それで機嫌を取ろうとしたってこと?不器用過ぎないか我が夫(仮)は。


ドラゴンに乗せられ、意識を失ったので今後は気をつけてもらえればいいだけなのに‥。オルベル様のちょっとズレた感覚に笑ってしまう。



そういえばうちの兄ちゃんも彼女に同じようなことをしてたな。

機嫌を取ろうと、彼女の好きなものをプレゼントしようとして、すかさず姉ちゃん達に「そこはまず素直に謝るのが先だ!」と、怒られてたっけ。薄い黄緑のワンピースを着ながら、笑ってしまう。魔族も人間と変わらないな〜。



なんだかおかしくて、朝から笑い出してしまいそうだ。

と、クローゼット部屋を出ると、レーラさんがそわそわした顔で立っている。



「あの、オルベル様が部屋の外でお待ちしておりまして‥」

「え、もう???」



出かけてたんじゃないの?

それともレーラさん引きずってきたの?ちょっと驚きつつドアをそっと開ければ、眉間にしわを寄せながらもしょんぼりした気配を漂わせるオルベル様。



‥ある意味、器用だな。



「おはようございます。すみません、爆睡しちゃったみたいで‥」

「いやっ!‥それは、俺の方が悪い。すまない、人間は弱いのに」

「結構丈夫な人間なんですけど、魔族と比べるとそこはそうかもしれませんね」

「‥‥‥‥もう、空を飛びたくはないか?」



レーラさんのそわそわが移ったかのように、そわそわするオルベル様。

‥だめだ、かなり面白いことになってる。吹き出さないように気をつけ、


「小屋のソファーに座れば大丈夫かと思います。あれなら怖くなかったので!」


そう言うと、レーラさんは口元に手を当て泣きそうな顔になり、オルベル様の眉間のシワがいなくなった。そうして、ホッとしたように、



「そうか‥!」



と、小さく微笑んだ。

おお!!!笑った!笑えたんか!!

私はそっちに驚いて、ついその笑顔をじっと見つめてしまう。結婚(仮)した相手は、こんな顔もするんだなぁ。


ちょっと感動していると、



ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜っと、お腹が鳴った。



そうだった‥、夕食食べずに爆睡してたっけ。

オルベル様と顔を見合わせると、



「ふはっ、すごい音だな!」



と、可笑しそうに、自然に笑った。

私は今度こそ目を見開いて、その顔をまじまじと見つめてしまった。

ちゃんと!普通に笑ってる!驚きと、じわじわとようやく普通の顔が見られたことが嬉しくて、私まで口角が上がると、オルベル様はハッとした顔をして、また眉間にシワを寄せた。


いや、だからなんでそこで笑うのをやめる???


レーラさんはそんなオルベル様を見て、呆れたように小さく首を横に振ると、



「元はと言えばオルベル様のせいでしょう!リニ様、すぐに朝食を用意しますね」

「あ、はい」

「ほら、オルベル様!もう一度きちんと謝って下さい!」

「‥‥申し訳ない。今後は気をつける」

「は、はい」



魔族って、面白いな‥。

主人はオルベル様なのに、レーラさんに怒られている。

笑わないようにしようと思ったのに、堪え切れずに小さく笑うと、オルベル様は尖った耳を赤くしつつ、「食堂に行こう」と手を差し出してくれた。うん、まぁ、今日もなんとかなるかな?





今日も読んで頂きありがとうございます!

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