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8番目の夫の呟き。

オルベルさん視点です〜。


小さい時、何もかも絶望していた。

貴族の父が亡くなったと同時に、妾だった母とまだ幼い俺は屋敷を追い出され、二人でひっそりと息を潜めるように生きていたからだ。なんとか食いつなぐ、ギリギリの日々。


そんな時、たまたま荷物が持ちきれず困っていた老婦を助けたら、高名な占い師だったらしく、



「あんたの運命の番は、東のトーランという国に150年後に生まれる8番目の娘だよ」



と、教えてくれた。


運命の番。

どこかにいる自分の半身。唯一の存在。

どれだけ生まれ変わっても、出会うことのできる特別な存在。


邪魔だと、生まれてこなければ良かったと言われる自分にとって、この世界の何処かで「自分の半身」がいるんだと知っただけで、目の前が変わった。俺を必要としてくれる存在が、150年後に生まれる。嘘かもしれないという考えが脳裏に掠めたが、それでも自分にとっては救いの言葉だった。


クソみたいな世界で、唯一の存在がいる。


150年後なんて寿命の長い自分達にとってはきっとすぐだ。

すぐにトーランという島国について調べれば、自分のいる国と比べ、ずっと小さく、弱い人間のように思えた。そうか、弱い人間かもしれない。それなら体を鍛えておこう。強くなければ相手を守れない。



決心した俺はひたすら体を鍛えた。

色々あったがヴェリに出会ったことが縁で、軍隊に入り、更に鍛えた。とにかく強くなって150年後に現れる自分の相手を守れるようにしなければ!そう思ったら、どんな大きな魔物だろうが向かっていけた。理由を知っているヴェリは「よく待てるね〜」などと笑ったが、相手は運命の番。当たり前だ。



150年経って、島国の王族に8番目の娘が生まれたと知った時は、すぐにでも結婚を申し込もうとしたが、フィプスに全力で止められ、「せめて3歳くらいまで待った方がいい」と言われた。その間に誰か婚約を申し出たらどうする!と、反論したが「生まれてすぐに結婚したいなんて言ったらやばいですよ」と、言われて仕方なく待った。



俺の運命が3歳になった当日、トーランへ出向けば、驚いた顔の王に「8番目の娘はどこにいる?」と、問いただせば、栗色の瞳が不思議そうな顔でこちらへやってきた。



俺の運命だ!



一瞬でその存在がわかって、嬉しくて、そっと抱き上げればこちらを怖がることなく俺を見つめるリニに心が踊った。


「お前をずっと待っていた」


出会えたことが嬉しくてそう話すと、不思議そうに首を傾げる仕草まで可愛い。


「あと15年後にお前を迎えに行く」

「迎え?」

「‥嫁に迎える」

「はい?」


目を丸くする表情まで可愛い。

ともかく宣言しておいたし大丈夫だろう。そう思って驚いた顔をした王に迎えに行くと約束すれば、流石にそれは‥と、言う。どう話せば納得するかと考えていると、リニは自ら嫁に行くと話した。


3歳なのに話を理解しているのか?

若干驚いたが、リニが言ったのであれば問題ない。


待っていると言えば、「はい」と頷くリニ。

やはり運命の番は、ちゃんと俺を選んでくれた。嬉しくて、緩みきった顔になる前に帰った。



まずは一緒に住む家を建てよう。

大き過ぎず、小さ過ぎず、安心な場所にだ。

好きな色を聞いておけば良かったが、薄いピンクの服を着ていたし、好きなのかもしれない。それを部屋の壁の色にしよう。準備はしっかりしておくに越したことはない。



誕生日プレゼントは欠かさず贈り、「待っている」とカードを付ける。

外敵を弾く魔法も付与してあるから、そのカードに触れたリニはしっかり守られているので安心だ。リニが生まれてからの15年の方が、150年よりもずっと長かった。早く大きくなってくれ。そうして側にいて欲しい。



そう思っていたのに、結婚の報告をしに行って、ヴェリに反対されてようやく気が付いた。



リニの気持ちをまるで考えていなかった。



何度も自分を蔑ろにされ、あれだけ辛酸を舐めてきたのに、「運命の番」という言葉で思考が停止していた。たった18歳のリニを巻き込んで、ここまで来てしまったことにようやくその時気が付いた。



そこへエルザが屋敷に乗り込んできて、魔族からの求婚を断れないでしょ?と、言われ、何も言えなくなる。そんな俺に対してリニは、



「好奇心からお話を受けた感じですね」



と、言う言葉に、正直叩きのめされた‥‥。

運命の番は、会ったらすぐに好きになるのかと勝手に思っていた。いや、自分は確かにリニが大切だと思っている。思っているが、そんなことリニは知ったことではない。自分の暴走っぷりに恥ずかしさと申し訳なさで一杯になっていれば、エルザに爆笑された‥。あいつ、今度本名で呼んでやる!!!



いやっ、それよりもリニは俺をどう思っているんだ?

いきなり親元から引き離すように連れてきて、実は嫌っていないだろうか。軽蔑してないだろうか。そう考えると、少しでも側にいたいのに胃が痛い。嫌われるのだけ嫌だ。



気持ちだけは焦るのに、言葉がうまく出てこない。

だって一緒にいたいとずっと思っていた相手なのだ。ずっと自分の心を支えていてくれた存在なのだ。けれどフィプスに触れたらすぐ壊れるのが人間!と、言われてどう扱ったらいいかわからない。



それなのにドラゴンに乗せたら喜ぶかと思ったら、気を失わせてしまって‥。いきなりやらかした俺はフィプスにそれは叱られた‥。明日、嫌われていたら俺はどうすればいいんだろう。もう、息ができないかもしれない。





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