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8番目の初恋。  作者: のん


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8番目、夫(仮)と収穫体験。133


私にすんごい剣幕で怒鳴られたおじさんはすっかり萎んでしまい、お父さんとフィリがうまいこと宥めすかし、気絶したせがれを一緒に介抱しようと誘い、私とベル様は一足先に畑に戻るようにと言われた‥。



え、ええと、ちょっと今はベル様と二人っきりにしないで欲しいんだけど。



ものすごい勢いで怒鳴ったところを見られて恥ずかしいし、気まずい。しかし外交問題に発展する前に離れよう。距離大事!


とはいえ気まずい空気の中、ベル様と畑の方へ戻るも静かな空気に居た堪れない‥。うう、うちの島民がすみません!ちらりとベル様を見ると、



「リニは、あんな風に声を上げることもあるんだな」



と、言われて目を丸くした。

私、結構声を上げているような気がしますが?ベル様をまじまじと見上げ、


「私‥、結構前からが〜〜っと勢いで言っちゃってますけど」


プロポーズだって私から‥って、もしかして忘れちゃった?

戸惑う私にベル様が可笑しそうに笑った。


「そうだな‥。自分の気持ちを素直に話してくれるのは知っている。でも、実家だからかいつもよりずっと楽しそうだし、元気だと感じる」

「そう、ですか?」


でもフィヨルムにいる時だって結構楽しくやってるけどなぁ。ベル様にはそう見えないのかな‥。ちょっと心配になった私の手を、ベル様がそっと取って、優しく握り、



「ここへ来て良かった。どんな風にリニが過ごして、成長してきたのか、少しだけ知ることができた」

「え‥?」

「お互い、知らないことばかりだからな‥。ああやって普段から話す様子も知れて良かった」

「こ、今回はたまたまですよ?!普段は落ち着いたレディーです!!」

「そうか」



ふふっと優しく笑うベル様に、じゃじゃ馬な自分を見られた気がしてちょっとだけ恥ずかしい‥。本当に普段は大人しい乙女ですよ?そう言おうとすると、ベル様が私の手を自分の口元へ持っていくと、手の甲にチュッと小さくキスをした。


柔らかい感覚に目をまん丸にしてベル様を見上げると、可笑しそうに笑って、



「俺の妻は、勇敢で優しくて、素敵だ」

「そ、そっ、そうですか!?」

「働き者で、気遣いもできて‥」

「わ、ちょ、も、もういいですよ?そ、そんな‥」

「何故だ。俺は言葉が足りないとよくフィプスに言われるから‥、こんな時くらい沢山リニに言葉を掛けたい」

「ちょっと過剰気味です〜〜〜〜〜!!!」



多分、いや絶対真っ赤な顔であろう私はベル様の言葉を止めたいけれど、肝心の手は上機嫌なベル様に握られたままだし、目の前にうちの畑がもう見える。ううっ、とんだ収穫体験だ!赤い顔で上機嫌なベル様をチラッと見れば、嬉しそうに微笑み、


「また収穫に来たい」

「え、」

「リニの色々な顔も収穫できそうだ」

「それは勘弁して下さい!野菜!野菜だけで十分です!!」

「そうか?」

「そうです!それに、ほら、今日はまだジュースとかジャムもまだ作ってないですし‥」

「ああ、それは楽しみだ。もっとリニの色々な姿が見えるな」

「か、勘弁して下さい!」


ベル様、今日なんだか口が滑らかじゃない?!

もしかして香木で酔っ払ってたりしない?


赤い顔で結局畑に戻った私とベル様を見たお母さんは、なにやら面白そうに笑うと、


「ジュース、作ってみますか?」


と、お父さん達のことは何も聞かず、いつものように調理をし始めた。‥いいのか、お父さん達は。


しかし、ベル様がジュースを嬉々として作り始める姿に何を言えよう。

ものすごい量の果物をお母さんに教えられ、あっという間に絞りきってしまったベル様。お母さんに褒めちぎられめちゃくちゃ得意満面に‥。ちょっと、いや、かなり可愛い。



私がベル様に楽しく過ごして欲しいと思っていて、一方でベル様は私をもっと知りたいと思ってくれていたことが嬉しくなる。考えていたことはそれぞれ違うけど、どっちもお互いを大事に思っていたってことだしね。そう考えたら、お母さんの隣で果物を大きな鍋に入れて焦がさないようにそっと木ベラでかき回すベル様が、余計に愛おしく見える。



「リニ、ジャムはこんな感じでかき回せばいいのか?」

「あ、は、はい!」

「オルベル様、コツはゆっくり搔き回しつつアクをこまめに掬い取る事ですよ」

「そうなのか。では慎重にやっていこう」



お母さんに言われて緊張したような顔で、さっき摘んだベリーの大鍋を見つめるベル様に小さく吹き出すと、大鍋の向こう側にいるお母さんが私達を見て、


「仲良しでなによりね」

「え!?」

「まぁ、まだまだジャムのように煮詰めることは必要だと思うけど、お互いを大事にしていればいい感じに出来上がると思うわよ」


なんだか深いことを言われた?

ベル様を見上げれば、私を見つめてとても嬉しそうに頷いた。



「リニとならきっと大丈夫だ」

「あら、なんて頼もしい!良かったわね、リニ」

「ちょ、お母さん!?ベル様!!」



赤い顔で反論しようかと思ったけれど、嬉しそうにお鍋をかき回し始めたベル様の横顔に、まぁいっか!と、あっさり思い直した私。だってやっぱり美味しいジャムにしたいしね。





美味しいジャムにしたいのに、砂糖をケチる女は私です。

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