8番目、夫(仮)と収穫体験。132
香木を燃やすなって言われたはずのせがれ。
しかし、それをまた燃やしているのを見つけて慌てて止めようとしたら、まさかの土中から巨大な芋虫が飛び出してきて、私とフィリ、お父さんはそれはもう目を見開いた。
ものすごい大きな白い体の芋虫‥!
全長何メートルあるの?!丸太のような太い体が土の中から出てきて、バケツの周りをグルグルと這うように動くので迂闊に近付けない!
「な、なんだあれ!!!」
「あんなの見たことないぞ!!」
「うちの島に、ま、魔物が!??」
「‥あれは普段は土中にいて出てこないが、体液が良い薬になるからかなり乱獲されたやつだ」
冷静にベル様が説明したけど、いきなり地上に出てきて大丈夫なやつなの?!あと、原因のせがれ!!そっちも危ない!!そっちを確認すれば引っくり返って気を失っている。
「わーー!!!た、助けに行かないと!!!」
「で、でも、どうやって!??」
「では俺が‥」
ベル様がそちらへ行こうとすると、お父さんとフィリが慌てて「「危険です!!!」」って止めたけど、多分ベル様なら大丈夫では?でも外交上は行かせられないよねぇ。どうしたものかと思っていると、
「おい!あれはなんだ!!!」
「え、おじさん!?」
「あれ、リニちゃん!?帰って来てたのか?」
よりにもよってさっきのおじさんがこっちへ駆けてきた!
なんでここに?驚いていると、おじさんが大きな芋虫と、ベル様を見てから、
「なんで魔族がここに!?というか、そいつのせいであの大きな魔物が出たんか?!」
「「「違います!!!!」」」
私とお父さん、フィリが同時に叫ぶと、ベル様がおじさんの前にずいっと立ち塞がり、
「魔族だからといって、闇雲に魔物を出せるものじゃない。あれはあのバケツの中の香木が原因だ」
「こ、香木?じゃあ、あの匂いが原因‥?って、おい!あそこでせがれが倒れているぞ!!」
「こんな時だけどおじさん落ち着いて」
「これが落ち着いてられるか!あの魔物はどうすんだ!!」
我々は一応王族なんだけど、なんだろうこの気安さは‥。
お父さんと私、フィリはどこか遠くを見つめると、ベル様は魔物をじっと睨み、
「香木の匂いで酔っ払っている様だな。どれ、少し酔いを冷ますか」
「酔いを冷ます?」
私がベル様を見上げると、スッと手を挙げ、
「水よ!!!」
そう叫ぶと、大きな芋虫と私達の上にザッと大量の水がバケツをひっくり返したように落ちてきた。
「わぁああああああああ!!??」
ザバザバと辺り一面水浸しになると、びっしょり濡れた芋虫はグルグルと地面をのたうち回っていたのに、ピタッと動きを止めた。バケツの中で燃えていた香木も引っくり返ってびっしょり濡れている‥。
芋虫はキョロキョロと辺りを見回すと、慌てて地面の中へ再び潜っていって‥、ベル様以外の一同、ポカーンとその光景を佇んで見ていた。
「え、もう、大丈夫‥なんですか?」
「そうだな。あの魔物は普段から地面の中で生息していないから、あの香木を燃やさない限りもう出会うこともないだろう」
そ、そうなの!?
私は目を丸くすると、びしょ濡れになったおじさんがベル様の前に飛び出し、
「本当に大丈夫なのか?!あんなでかいやつ、この島で見たことないぞ!!嘘だったら承知しないぞ」
「お、おじさん!?」
「だってあんな危険なやつがまた出てきたら大変だろう!俺たちで倒せる訳ないだろう!騎士団もなければ自警団だって島の若いやつだぞ?!」
「‥ちゃんと一応訓練してますけど」
フィリがジト目で訴えたが、おじさんは初めての大きな魔物を見てパニックを起こしているっぽい。私はおじさんの肩をポンポンと叩き、
「大丈夫ですよ。こちらも香木を使わないようにすぐに通達しますから」
「でも魔族の言うことだぞ!?信用していいのか?」
ベル様の顔が一瞬曇ったのが見えて、私はおじさんを睨みつけ、
「魔族とか人間とか関係ないでしょ!!!ベル様は私達よりずっと色々魔物のことを知っているんです!それに水を降らせてあの魔物を止めたのは誰ですか?ベル様でしょう!!」
それはもう腹から声を出して怒鳴った。
おじさんも、フィリもお父さんもベル様もそれはもう目を見開いて私を見るけれど、もう止まらない。
「大体ねぇ!魔族だから危険って、何も知ろうとしないで勝手に決めつけるのは本当に良くないですよ!人間だって色々なタイプがいるでしょ!根性悪いのと一緒くたにされたら怒るくせになんで魔族には良いって思うんですか!」
「り、リニ‥」
「ベル様は黙ってて下さい!!こちとらベル様の折角のお休みを楽しんで欲しいと思って帰ってきたのに、その言い草!!ちょっとは反省して下さい!」
私の剣幕におじさんが、「は、はい‥」と、頷くと、フィリが私の肩をポンと叩き、
「‥‥リニ、お前も落ち着け。オルベル様がびっくりしてるぞ」
その言葉にハッとして後ろをそろりと振り返ると、それはもう目が落っこちそうなくらい驚いているベル様がいて‥、私はとりあえず口角を上げておいた。
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