8番目、夫(仮)と収穫体験。129
イノシシの動きを止めて、食べちゃう?なんて聞いてくれたベル様。
魔族の国、フィヨルムだったら普通のことなんだろう。でも兄のフィリはそんな様子を見て私を心配して、結婚を辞めろとまで言うので驚いてしまった‥。
そんな会話が聞こえてないといいなぁと思いつつ、お母さん達の方へベル様と行くと、畑のすぐそばに木で作った新しいテーブルと椅子が置かれ、テーブルクロスの上にはずらっとご飯が並んでいた。
「うわ!!すごい!美味しそう!」
「色々作っておいたの。どれも美味しそうでしょ?って、そのイノシシは?」
お母さんの一言にドキッとすると、ベル様が「そこの畑にいたので狩った‥」と、説明すると、
「あらーー!そうなんですか?収穫だけじゃなくて狩りまでしてもらってすみませんねぇ!でもとっても助かったわぁ!そのイノシシ、何故か人間を見ると突進してくるから困ってたんですよ!」
「そ、そうだったの?!」
「まぁ、大体は爆竹を鳴らして追い払ってたんだけどねぇ。ええと、お昼を食べるのに流石にイノシシは邪魔だし、一旦預かっておきましょうか」
「もし良ければ食べてもらっても?」
「あらーー!助かりますわ!じゃ、お父さん折角だし頂きましょう!」
「そ、そうだな。フィリ、ちょっと手伝ってくれ」
どんどん話を進めるお母さんに圧倒されているお父さん。フィリの方へ声を掛けると、ベル様からイノシシを受け取って倉庫の奥へ持っていってくれた。と、お母さんが私を手招きした。
「オルベル様は、どんな味付けが好きなの?」
「え?」
「えってあんた、好きな人の好みくらい知っておきなさいよ。ほら、隣に座って色々説明してあげなさい。違う国から来たんだから戸惑うこともあるでしょ」
「は、はい!」
強引なお母さんだけど、そういうとこ優しいというか気遣いができるよね‥。私はベル様に隣の席を勧めて一緒に座ると、ベル様は並んだ料理をまじまじと見つめた。
「どれも、とても綺麗だな‥」
「あらーー!そうですか?!どうしても野菜がメインになっちゃうから物足りないかしらって心配だったんですけど、そんな風に言って頂けて嬉しいです!ほら、リニもお皿!」
「はいはい」
お皿を手渡され、私はベル様に並んだ料理の説明をすると、キラキラとした瞳で私と料理を交互に見つめた。
「リニはこういう料理を食べてきたんだな」
「え、ま、まぁ、そうですね」
いつもよりは大分豪華ですけどね?
ベル様が好きそうな味の料理をいくつかお皿に盛って手渡すと、嬉しそうに微笑んだ。くっ!可愛い。そしてもしかして結構なお野菜好きだったの?不思議に思っていると、お母さんが面白そうに私とベル様を見ながら、
「好きな相手がどんな食べ物が好きか知りたいですよね〜!」
「っへ!?」
「へってなによ。お互いまだ知らない事も多いかなって思って、リニが好きな物を作っておいたのよ?」
「そ、そうだったの?!」
「リニの好きなもの‥」
「はい!こっちの野菜とイワシのマリネは大好物ですね。あとジャガイモのグラタンも」
「そうか‥!」
お母さんに好きな食べ物を教えてもらって、目を輝かせるベル様。
ううっ、なんだか照れ臭い。‥でも、私が好きな食べ物を知りたいって思ってたんだ。ちらりと視線だけ動かしてベル様を見上げれば、ベル様が私のお皿に早速ジャガイモのグラタンをよそってくれている。
「べ、ベル様、自分でやりますよ?!」
「いや、こんな機会はなかなかない。折角だしやらせてくれ。ええと、あとサラダだな」
「あら!いいですねぇ。オルベル様、リニはこっちのお魚のソテーも好きですよ」
「そういえば魚介が好きだと言ってたな‥!」
「ちょ、ちょっと〜〜!!」
ちょっと二人とも落ち着いてくれ!お母さんまで私のお皿におかずをのせはじめたが、私の胃もキャパシティってもんがあるんだよ!?慌てて止めると、ベル様が私を心配そうに見つめ、
「リニは少食だから心配だ‥」
と、言うと、テーブルへ戻ってきたお父さんとフィリ、お母さんが一斉に、
「「「少食!!?」」」
目を大きく見開いて私を見た。
ちょっと静かにしてくれないかなぁ?!私が頬を膨らませると、フィリが今にも吹き出しそうな顔で、
「オルベル様、リニは相当食べますよ」
「そうなのか!?だが、あまり食べている感じではないが‥」
「ああ、まぁ魔族の人と比べたらそう感じるかもしれませんけど、人間の方ではかなりしっかり食べていますよ。なんなら僕より食べる時もあります」
「そうなのか!??」
驚きの表情で私をまじまじと見つめるベル様。
‥そうだって言ってたのに信じてなかったの?ジトッとベル様を睨むと、ホッとしたような顔をして、
「遠慮しているのかと思ってた‥」
なんて言うものだから、私の頬はシュッと萎んだ。
遠慮なんて考え、そもそもなかったんだけど。‥もしかして遠慮した方が良かった、のか?
イノシシって美味しいですよね‥。




