8番目、夫(仮)と収穫体験。126
ノルチェの小屋の中は魔法で拡張したらしい。
と、いうかそもそも拡張してあったそうだ。そうだったの!?と、驚いた。魔法って本当に便利だな。狭い我が家にも魔法を掛けて広めにして貰いたい‥、いや、その前に屋根の修理とお風呂場を新しく‥。
「リニ、その、もしかして眠いのか?」
「え?」
ベル様の肩に頭をのせていた私は顔を上げれば、真っ赤な顔をしている夫(仮)すみません、衝動のままに動いてしまいました。
「あ、眠くはないんです。ただちょっと肩にもたれさせてもらって考え事を?」
「そ、そうなのか。それなら、そのいくらでもいいぞ」
「そうですか?」
可愛いな〜〜〜。
めちゃくちゃ照れてるのに「いくらでもどうぞ」って。
でも1時間も体がカチコチのままじゃベル様も疲れちゃうだろうし、今はやめておこう。なにせ今日は果物の収穫とジャム作りなのだ!欲を言えば野菜の収穫も畑の手入れも草刈りもしたいが、そこはまぁ、次回にしておこう。
頭を元の位置に戻すと、若干残念そうな顔をして私を見つめるベル様。
‥なんですかその可愛い顔は。きゅんとしちゃうじゃないですか。もう一回肩を借りようかなとも思ったけど、その前に相談もしておかねば。
「‥えっと、ベル様は果物は好きですか?」
「ああ、好きだ」
「ジャム作りはしたことは‥」
「ない。作ったといえば、スープくらいか」
「スープ!」
「‥小さい時だから、そんなに覚えてないがな」
少しだけ寂しそうに笑う姿に、小さい頃にお母さんが亡くなってしまったんだっけと思い出した。食事が大事なのに!って思ったけれど、生きるだけで大変だったんだもんね。これからは一緒に作ったり、食べたりすればいいよね。
ベル様を見上げて、
「沢山野菜を育てて食べましょう!!」
と、言えばベル様は嬉しそうに微笑んだ。
守ってみせるぜ、この笑顔。ひっそり気合いを入れた私をよそに、あっという間に先日帰ったばかりの実家へ辿り着いた。
小屋の小窓から見れば懐かしい畑。
嗅ぎ慣れた土の匂いと、果実がなる季節にだけ香るほんのり甘い香り‥。それだけで胸がぎゅうっと痛くなる。ちょっと感傷的になっている私をよそに、ふわりとノルチェが地面に降り立つと、家の玄関からフィリが飛び出してきた。
「フィリ!ただいま〜」
小屋の窓から顔を出して手を振れば、フィリがずり下がった眼鏡を直しつつホッとした顔をした。
「良かった〜。違うとこの竜だったらどうしようって思った。あとお帰り」
「違う竜って‥。こんなに賢い竜はノルチェしかいないけど」
「冷静に考えろ。そんなの一般人にはわからんぞ」
「そうかなぁ」
まぁいいや。
とりあえず小屋から出ねば。
と、ベル様が私の方へ手を差し出してくれたので、ちょっと照れ臭いけれど手を握って一緒に小屋から出ると、フィリがピッと姿勢を正した。
「‥オルベル様、本日はお日柄も良く」
「ああ、そういう堅苦しいのはなしにしてくれ。今日は家族としてこちらへやって来たんだから」
「‥ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせて頂きます。両親は収穫の時期なのでもうすでに畑にいるので、そちらへ案内しますね」
「ああ、よろしく」
おお、フィリとベル様がなんだか貴族と王族のような会話をしている‥って、そもそも我が家は王族であった。そしてベル様は国を守るトップの軍団長様だった。ついつい自分の立場を忘れてしまうな。と、一人納得(?)していると、フィリが私を手招きした。
「何?どうかした?」
近付いた瞬間、私の肩を掴むと顔を寄せ、
「お前なんだっていきなり果物の収穫に来たいって言い出したんだよ!」
「え、だってそろそろ収穫の時期でしょ。それにジャム作り私もやりたい」
「アホか!!!だったら一人で来い!なんで魔族のお偉いさんまで連れて来るんだよ!」
と、小声で訴えた。
「‥‥お偉いさんって。お、夫だし?」
ちょっと照れ臭いけれどそう言うと、フィリは私をまじまじと見て、
「待て?ちゃんと結婚してたのか?」
「え、えーと‥‥し、してるよ」
「お前、本当に嘘下手くそだよな」
「してるってば!!」
一応、一応ね!
ジトッとフィリを睨むと、後ろの方でベル様が咳払いをしたので二人でそろっと振り返ると、少しそわそわした様子のベル様が、
「畑は、どちらにあるんだろうか」
目をキラキラさせてこちらを見ている。
‥なんかあったな〜!大昔のゲームで魔物が仲間にして欲しそうにしてる!ってやつ。なんだかアレに似ている。私とフィリは顔を見合わせると、フィリは眼鏡をさっと掛け直し、
「では、早速参りましょう!!」
そう言ってさっさと小高い丘の方にある果物畑へ一歩先に歩いて行ったのだった。
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