8番目、三ヶ月後を誓う。122
ベル様に求婚したらぶっ倒れてしまった。
え、そんなに嫌だった?!と、一瞬思ったが、力が急に戻ったからショック状態になったのかも?!慌ててベル様をベッドまで引きずって寝かせたけど、合ってる!?これで合ってるの??心臓マッサージするべき?!
オロオロしていると、ベル様がぱちっと目を開けた。
「ベル様!大丈夫ですか?どこか痛いところは?気持ち悪いとかは?!」
「‥‥‥一つだけ、確認させてくれ」
「は、はい!!」
「求婚、されたのは夢か?」
「っえ?」
「‥‥‥やはり夢、」
「夢じゃないです!!私の一世一代のプロポーズを夢にしないで下さい!」
私がそう叫ぶと、ベル様はそれは目を大きく見開き、それから耳から顔まで全部真っ赤になった。
「‥夢、じゃない」
「現実です」
もう一度そう念を押すと、ベル様は私をまじまじと見た。
‥気を失ったからまだ夢心地なのかな。フィプスさんか、レーラさんが戻ってきたらお医者さんを呼んでもらおう。
「‥リニ」
「はい?」
「‥今回のこと、黙っていて、そのすまなかった」
「今回だけですよ。ただ、事によっては話せないこともあるでしょうから‥。そこはまぁ、これから相談しましょうね」
「‥ああ。あと、その、本当に夢じゃないよな?」
「現実です」
大丈夫だってば!とりあえず傷だらけのベル様の手当てをしようと、救急箱の方を見ると、慌てたようにベル様が私の手首を掴んだ。
「ベル様?」
「あ、あの、どこへ行くのかと」
「ああ、救急箱を取りに。ベル様、怪我をしてますし。あと顔も土が付いているから拭いた方が良さそうですよね」
取れるかな?と、顔についた土を指で擦ると、ベル様の顔がまたもや一気に赤くなった。‥照れ屋さんなのにうっかり触ってしまった。そっと指を離し、
「すみません、いきなり触ってしまって」
「いやっ!!大丈夫だ!!お、驚いただけで、そのっ、全然触れてもらって構わない!!」
「いえいえ、恋人だろうが夫婦だろうが勝手に触るのはマナー違反なので‥」
「そ、そうなのか?リニも急に触ったら嫌、なのか?」
「いえ、ベル様は平気ですけど」
「そうなのか!?」
いきなりガバッと起き上がって、驚いた顔をするベル様。
あの‥、本当にお身体大丈夫なのかい?私はそろそろとベル様に手を差し出すと、ベル様がそっと私の手を握った。
「‥‥怖くないか?」
「ちっとも。優しい手じゃないですか」
ベル様が嬉しそうに微笑むので、私までなんだか照れ臭い。
好きだと自覚した時は、照れ臭くてうまく目も合わせられなかったのに、結婚せい!って迫ったせいで恥じらいがどこかへ飛んでいってしまったんだろうか‥。だめだ、恋なんてしたこともなかったし、そもそもプロポーズをしたのも初めての人間だもん。何もかもわからない。
でも不器用で恥ずかしがり屋で、言葉足らずで、まだまだ知らない顔が沢山あるだろうベル様と一緒にいたいという気持ちは本当だ。
「リニ」
「はい?」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げると赤い顔のベル様が私をチラチラと見ながら、
「‥俺も、リニが大好きだ。その、これからもずっと一緒にいて欲しい」
そう一気に言い切ると、カァッと更に顔が赤くなったベル様を見て、胸の奥をわしっと掴まれた。‥は、反則じゃないか!?このタイミングで。
でも素直に嬉しくて、ベル様の手をぎゅうっと力を込めて握り返す。
「はいっ!」
そう、元気よく返事をすればベル様は安心したように、でも泣きそうな笑顔を浮かべるから、私はついベル様の頭をワシワシと撫でてしまった。
‥しまった、言ったそばから勝手に撫でてしまった。
「り、リニ?」
「‥すみません、つい、もっと嬉しくなって欲しくて」
「十分嬉しいぞ?」
「そう、ですか?」
「‥にやけそうになっているのを堪えている」
「へ?」
そうなの?
全然普通の顔をしてますけど?
じっとベル様の顔を見ると、思い切り目を逸らし、
「‥‥‥あと、少し、というか大分照れ臭い」
と、ボソッと呟くので私の心の中でビックバンが起きた。
ぎゃわいいな!?反対に私がにやけてしまうと、ベル様は照れくさそうに俯いた。‥‥もしかしてベル様の方が乙女なのかもしれない。
でも、どっちでもいいや。
私はベル様が好きで、ベル様も私が好きで、お互いに結婚しようという話まで発展して‥、ん?でも待てよ?ヴェリ様に結婚は正式には認められてないよね???
「えっと、そういえば結婚って三ヶ月後になるんですかね?」
「え?」
「ヴェリ様に正式に認められてないから‥」
「そ、そうだった!くそっ、今回の件が片付いたら結婚を認めろと迫れば良かった!いや、今ならまだ間に合うか?!」
「ま、まぁまぁ、三ヶ月後なんてすぐですよ」
「‥‥長い」
三ヶ月だけなのに?
けれどそんな風に言ってくれるベル様が嬉しくて、私はますますにやけてしまう。
「三ヶ月後、楽しみですね」
そう話すと、真っ赤になったベル様が力強く頷いてくれたのだった。
長い三ヶ月かと思いきや、あっという間の三ヶ月。
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