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8番目の初恋。  作者: のん


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122/138

8番目、結婚を迫る。120


ベル様の力が戻ったそうだ。

といっても、今さっきっていつ!?と、突っ込みたいが一瞬にして屋敷に戻った私のまずすべき事はベル様の手当てである。


とはいえ、ほんの二日ぶり?なのに、中庭の畑を見れば懐かしさに泣きたくなる。艶々に輝く野菜達が目に入り、きちんと手入れしていただなと嬉しくなる。


あ、いかん、野菜じゃなくてベル様の手当てだ。



「リニ、俺の部屋で手当てをしよう」

「は、はいっ」



いや、ベル様の手当てだっての!と、自分に喝を入れて一緒に部屋へ入ると、ふわりとどこかお花の甘い香りがして‥、それだけでほっと安心してしまう。一方、ベル様は棚から急いで立派な木箱を取り出し、ソファーへ私と一緒に座るといそいそとハンカチと薬を取り出した。


「では、リニ手当てをするから手を出してくれ」

「ベル様が先ですよ?!」


思わず突っ込んだよ。

どう見てもそっちの方が重症でしょうに!顔や腕も服が破れて血が出ているのが見えるんだよ?!破傷風舐めてかかったら怖いよ?!


「私よりベル様の方がずっと怪我が酷いじゃないですか!」

「俺は魔族だから大丈夫だ。力も戻ったし、すぐに治る」

「そ、そうだった!力は、いつ?いつ戻ったんですか?!」

「リニのブレスレットが壊れた時だ」

「え‥!?」


私のブレスレット‥‥?

目を丸くすると、ベル様が私の手に問答無用で持っていた薬を振りかけ、そっとハンカチで拭き始めた。



「‥少し前に嵐の日にベヒモスの巣へ入ってしまった奴らがいただろう。あの中にヴェリの‥王家転覆を狙う隣国の人間達がいたんだ」

「え!??」

「リリオンが敢えて危険な目に遭わせて、俺が助ける。そうして信用させて鉱石を融通して欲しいと頼んで作ったのがあのブレスレットだ」

「あのブレスレットにどうしてベル様の力が‥」



チラッとベル様の手首につけられているお揃いのブレスレットを見ると、ベル様がそちらをチラッと見た。


「呪いだ。俺か、ヴェリのどちらかの力が奪い取れるように呪いが掛けてあった。ただ、呪いは誰が、どんな風に呪ったかわかる証拠品でもある。ヴェリがその証拠を掴み、呪術の研究をしているレーラが書き換えた」

「レーラさんが‥」

「研究をずっとしているんだ。ともかく、その力を一時的にリニのブレスレットに閉じ込めて、力を失った風を装い、敵をおびき寄せたんだ」

「敵‥!?あ、あの黒ずくめ集団ですか」

「ああ。まさかブレスレットを作った途端に現れると思わなかったから、リニを実家へ‥」

「いや、どう考えても返しちゃダメでしょ!?危険極まりないのに!!」

「だが、リニの方がずっと危険だ」


おいーーーーーーーーー!!

私の手にハリセンがあったら、迷わずベル様の後頭部を打ってたわ。

いくら私が弱いからって、自分の力を持っている私を実家に返して、何かあった時はどうするつもりだったの?!そっちのがずっとゾッとするんですけど!!



私はベル様の手を敢えてぎゅっと握ると、ベル様が驚いたように私を見つめた。



「許しません」

「えっっっ」

「今度、そういう大事なことを言わないでいたら許しません」

「えっっっ」

「あと今度、弱っている時でさえも私を守ったら許しません」

「だ、だが、リニに何かあったら‥」

「私は!ベル様と同じように、ベル様が傷ついても大丈夫だって思いません!!悲しくなるし、辛いんです!私は、どっちも幸せがいいんです!!」



ぽかんと、ベル様が私を見つめたままだけど、言っている意味わかってる?じとっと睨むと、ベル様の耳先がじわじわと赤くなった。



「‥俺は、リニがいるだけで、幸せだが、」

「奇遇ですね。私もです。でも私は欲張りなので、もっとベル様が幸せでいて欲しいんです。怪我もして欲しくないし、一人で苦しいものを抱えて欲しくもない。苦しいのも楽しいのも半分こしたいんです」

「でも、苦しいのは与えたくは‥」

「ええい!!結婚ってのは、苦しい時も病める時も助け合うものなんです!人生楽しいことだけじゃないから、半分こして一緒に乗り越えるんです!ちゃんと誓って下さい!今!!」



‥‥ん?


私、結婚せいってもしかしなくても迫ってる?

いや、でも仮に結婚しているから問題ないのか?ちょっと心の中で首を傾げつつ、ベル様の手をぎゅうっと更に握ると、ベル様の顔が真っ赤になった。


「‥人間は、そうやって結婚を誓うのか?」

「ま、まぁ、そうですね」


ただその前に、私達お互いを「好き」なのかどうかを確認してないな?それを確認した上で結婚って誓い合うもの、だよね?


「ええっと、お互い、好きな人‥同士がするものですけど」


と、付け加えると、ベル様の顔がますます赤くなり、目があちこち泳ぎだした。そうして覚悟を決めたように私を見つめると、



「‥‥俺は、リニが好きだ」

「え」

「リニは‥‥?」



じっと、緊張気味の黒と赤の混じった瞳が私を見つめた。

結婚を誓えと迫った女が、これで嫌いと言うと思ったか?私は静かにベル様の手の甲を口元に近付け、小さくキスをした。



「大好きです。だから結婚して下さい」



そう静かにいうと、真っ赤な顔をしたベル様がそのままソファーにひっくり返って倒れた‥。





プロポーズは突然に。

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