8番目、突然捕まる。118
閉じ込められたベル様を早く助けなきゃ!
そう思って、幽体化するお茶を一気に飲み、岩をすり抜け、フィプスさんの元へ一心不乱に泳いで行くけれど、薄暗い洞窟はあちこちに道があって‥。
「ど、どこに行けばいいんだ!??」
キョロキョロと周囲を見回し、私は息を大きく吸った。
「フィプスさーーーーーーん!!!!」
それはもう腹から大声を出すと、私の声があちこちに木霊する。
どうしよう‥。フィプスさんも怪我をしてる?それともここにはいない可能性もある?オロオロしながら、どこへ行けばいいのかと足をバタバタと動かしていると、
「リニ様!!!」
パッとフィプスさんが突然姿を現して、目を見開いた。
「え!?え、どこから?」
「話は後です!ご無事ですね?ちゃんと生きていますよね!?」
「は、はい。生きてます!あの、赤いお茶を飲んで‥」
「良かった。万が一、この世のものならざる存在になっていたら、オルベル様まで昇天しかねないので」
「‥そこは是非止めてあげて下さい」
念の為、そう忠告するとフィプスさんは嬉しそうににっこり笑い、
「慌ただしくご実家に帰られてしまったので‥、元気そうで安心しました。再会を喜び合いたいところなんですが、まずはオルベル様を助けに行きましょう」
「そ、そうなんです!あのっ、あっちの道からやってきて‥って、あれ?」
フィプスさんと一緒に元来た道を戻ろうとすると、手が段々と元に戻っていく。あれ、戻るのが早いような‥。驚いていると、一瞬で姿が戻った!
「わわっ!!」
「大丈夫ですか?」
「はい。急に戻ったんでちょっとびっくりして、ともかくあっちへ‥」
「わかりました。では失礼します!」
「え」
フィプスさんがさっと私をお姫様抱っこを軽々とすると、
「あちらの道ですね!一緒に行きましょう!」
「でぇええええええ!??」
確かに私と走るよりフィプスさんに抱っこされた方が早い、のか?
教えた道をものすごい勢いでフィプスさんと駆けていくと、ドドン‥と、岩が崩れ落ちる音がした。目を凝らして、奥の道を見ればベル様が岩と一緒に倒れている!?
「ベル様!!!」
「リニ!?」
ベル様が叫ぶと、奥の黒ずくめの男達が一斉に光の球をこちらへ投げつけた。と、フィプスさんが「結界!!」と叫ぶと、私達とベル様の前に薄い透明のカーテンが現れ、はじき返された光の球があちこちにぶつかり、天井から剥がれ落ちた岩が黒ずくめの人達を襲った。
「うわ!!」
「ぎゃあ!攻撃をやめろ〜〜!」
う、うわぁ、大変だ。
いや、それよりもベル様だ!倒れているベル様の方を見れば悔しそうに顔を歪めている。こっちも大変だ!!早くそっちに駆けつけたい‥けど、フィプスさんは魔法使ってるし下手に動けない!ど、どうしたらいいんだ〜〜〜!
と、一旦黒ずくめの人達が後ろの方へ後退していく様子が見えて、ようやくフィプスさんの魔法が止まると、急いでベル様の方へ二人で駆け寄った。
「ベル様、大丈夫ですか!?」
「オルベル様、お怪我は‥」
「その前に、なんでリニを抱き上げているんだ?」
「「え?」」
私とフィプスさんが顔を見合わせると、ベル様が耳先を赤くして、「お、俺の妻なのに‥」と、言いつつボロボロの姿をなんとか自力で起こしている。
‥‥いや、そこかーい!?
思わず心の中で突っ込むと、フィプスさんが呆れた顔をし、
「リニ様、オルベル様はなんの問題もなさそうなんでご安心して下さいね。それよりもリニ様は大丈夫ですか?」
「なんだと!?リニ、怪我をしたのか!?」
「いえ大丈夫ですよ」
「リニ様、ご無理をしないで下さいね。オルベル様は無駄に元気が余ってるからそこらに放っておいても問題ありませんよ」
「おい!!!」
仲良くしてくれ〜〜〜。
私はひとまずフィプスさんにお礼を言ってから地面に下ろして貰い、ベル様の手当てをしようと手を伸ばしたその時、私の体がグイッと後ろへ引っ張られ、ドン!と後ろへぶつかった。
「え、え?」
後ろを振り返れば黒ずくめの男が私の体を掴んでいる?!
な、なんで?もしかして魔法?驚く私をよそに、男の人は私の方へ手を向けた。
「‥わざわざ細君が戻ってくるなんて涙ぐましいなぁ」
「おい!リニを離せ!彼女は魔族じゃないんだぞ!」
「そんなことはわかってる。まったくもう少しいいとこのお嬢さんだったら売れるところもあったのに、貧乏な王族の末娘なんて大した額にもなりゃしない」
「貴様‥!」
ベル様が怒りを露わにしたけれど、そうかぁ‥貧乏って時には人を守るんだな。などと、どこか遠くを見つめた私‥。いや、そんな場合ではない。どうにかして逃げなければ!




