表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/73

8番目の結婚(仮)11


食事会はなんとか無事、終了した。


オルベル様の同僚のエルザ様にも、なんとか良い印象を与えられたようだし、新妻としては結構いい結果を残せた方ではないか?‥まぁ、まだ限定妻だけど。

と、レーラさんが私を見て、



「お疲れでしょうし、一度お部屋で休まれますか?」

「あ、はい」



ドレスも以上汚しちゃ悪いし、着替えた方がいいだろう。

私が頷くと、斜め横に座っていたオルベル様が素早く顔を動かし、私を見てどこか残念そうな顔をして、いる‥?なんで判別が難しいかって、こっちを睨んでいるからだ。


けれど、眉が上がったり下がったりしているから、残念そうなそうでないような‥と、いう推理からきた考察だ。こんなんで半年間どうにかなるんだろうか。しかし、そんなことは全くわからない。なにせ我々は15年ぶりの2度目ましてなのだ。


ちょっとじっとりした空気に私は思い切って声をかけることにした。



「あの、オルベル様‥、一旦着替えたらお屋敷を案内して頂けますか?」



私の言葉にどこか驚いたような顔をしたかと思うと、オルベル様は小さく頷き「案内しよう」と、言ってくれた。うん、まずはお互い歩み寄りは大事だろう。でも主に私がしているような気もするけど、人間すぐ死ぬって言われたし、きっとちょっと怖いんだろう。そう思うことにしよう。


レーラさんはそんな私とオルベル様を見て、ニコニコ笑い、すぐに私を部屋へ案内してくれた。


「うふふ、オルベル様ったらとっても嬉しそうでしたね!」

「そ、そうなんですか???」


ずっと眉間にしわが常駐してたけど、魔族ってあれがデフォなのだろうか‥。いやはや種族が違うと、常識も違うもんだ。再び豪華な部屋へ戻り、レーラさんがクローゼット部屋へ案内してくれた。


ん?待て、なんだクローゼット部屋って‥と、思ったけれど、確かに部屋だった。



一体私の体がいくつあると思ってるんだ?

と、いうツッコミが霞むくらいのドレスやワンピースが、ずらりと飾られた部屋に目を見開いた。



「リニ様は、どんなドレスの形や色が好きですか?」

「どれ、でしょう‥」



うちは何度もいうが貧乏な島国の王家。

こんな大量のドレスを当然持っている訳はない。お母さんからお姉ちゃんへと、脈々と語り継がれてきたかのようなドレスを使い回していて、新品に手を通した記憶がない‥。


っていうかさぁ、私、弱小な人間ぞ?本当に何の利点もない人間ぞ?

そんな小娘の私に、こんな服を用意するってなに?!ヴェリ様が手を出すなって言ってたけど、もしかして私は供物にされるとか、そういう感じだった?と、考えてしまう。


だけどレーラさんは、そんな私の考えなど知る由もなく、ルンルンと鼻歌が聞こえてきそうな足取りでドレスを選ぼうとしたので、せめて気が楽なワンピースにして欲しいとお願いした。‥繊細なレースのドレスなんて怖くて着られない。いくらすると思ってるんだ。



結局、薄い茶の髪に合う少し落ち着いたピンクのワンピースを着せてもらった。



‥ピンクって初めて着たわ。

可愛らしいワンピースを着る私が鏡に映り、私、もし正式に結婚したら、これから畑を耕さずに暮らすのか‥?そう考えたら、急に不安になった。


だって自分で食べ物を作れないって怖い。


飢饉になったら?オルベル様が怪我をしたり、病気して、働けなくなったら?そう考えたら、この広いお屋敷の維持も大変だし、そもそも食べられなくなる。



と、自分の持ってきた荷物の中に、お母さんが出発直前に渡してくれた野菜の種が入った袋が目に入った。そっとその白い袋を手に取り、中を開けて見ると、私の好きな野菜や果物の種がどっさり入っている。私の不安な気持ちを見透かすような種の多さに、ウルッとしてしまって、種の詰まった袋を宝物のようにそっと大事に握りしめた。



「リニ様?どうかされました?」

「あ、ううん。ワンピース、可愛いなぁって‥」

「そうですか!オルベル様、どれが似合うかとすっごく悩んで選んだので、きっと喜びますよ」

「ん?選んだ??オルベル様、自ら??」

「はいっ!!」



‥そういうのって、業者か、服屋さんに発注するものじゃないの?


もしかしてあの大量の服、全部選んだの?あの眉間にシワが常駐しているオルベル様が。なんだか俄かには信じられない。けれど、一瞬心細くなっていた気持ちがあっという間に軽くなる。‥自分は本当に単純だな。



どこかふわふわとした足取りで部屋を出れば、扉の前でオルベル様が腕を組み、眉間にシワを寄せて仁王立ちしていた。



あ、ちょっとまた気持ちが怪しい雲行きになってきたぞ?

なんて思っていると、そんなオルベル様にフィプスさんが肘で脇腹を突いた。



「フィプス!何をする」

「そんな顔でエスコートするんですか?ただでさえ怖いんだから、眉間を平坦にして下さい!」

「平坦‥!?」



そんなことできるか!と、言わんばかりの顔をしつつ、なんとか眉間の力を抜こうとする夫。島にいるお母さん、夫になる人は、怖いんだか面白いんだかまだよくわからないよ‥。






伴侶は面白い人がいいと思うが、私はまず自分が面白いと

思ってますね‥。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ