8番目、ダブルデート前日。102
ごうごうとものすごい音がしていた2週間。
本当に町へ行く前日の夜に、ピタリと風が止んだ時はびっくりした!
驚くと同時に、お屋敷の明かりが一斉につき、レーラさんが「ようやく明かりが戻りましたね」と、ほっとした顔をした。そういえば、お屋敷の明かり分の魔力を全部町へ流していたんだっけ。
「すっごく家の中が明るいですね‥」
ベル様と一緒に夕飯を食べつつ、私がしみじみと呟くと、ベル様も天井をぐるっと見回して、
「今回は町の魔力回線がかなり派手に壊れてしまったからな‥。こんなに長引くとは思わなかった。リニには迷惑をかけたな」
「いえ、実家は元々節電の家でしたから‥、暗くてもそんなに不便は感じませんでした。あと精霊が飛んでないのも大きかったですね」
私の言葉に、ベル様が小さく笑った。
「うまい具合に精霊が黄泉に帰ってから嵐が来るからな」
「本当ですね‥」
世界って、まるで計算されたように上手く出来ているなぁって痛感するわ。お父さんやお母さんが、「天気に右往左往して、ダメな時は本当にダメなのに、長い目で見ると結局大丈夫‥なんて良くある」って、言ってたのを思い出す。
「あ、あと、明日の予定なんだが‥」
「はい、鉱石の町の視察ですね」
「ああ‥。その、ノルチェに乗って町まで出かけて、そこでヴェリとキルシュナに会う予定だ。朝の8時には家を出るが大丈夫そうか?」
「はい!早起きは得意です!」
「そうか‥」
安心したように微笑むベル様に、ムズムズする!
ううっ、恋心を自覚するって大変だ!明日、何を着ていこうかな‥とか、何を用意しておけばいいかな?とか、ずっと悩んでいるのに、早くデートを終えて落ち着きたいとか完全に支離滅裂だよなぁ。
「‥‥明日、楽しみにしてる」
「え、」
耳先が赤いベル様が、横を見ながらそうポツリと呟くように言うので、一瞬何て??と、思ったけれど、じわじわと言われたことの内容が伝わってきて、私まで耳先が赤くなった気がする。
「あのっ、わ、私も‥」
そう言いかけたその時、ドドド‥と、地響きがして、すわ地震か!?と、思った瞬間に食堂のドアが勢いよく開かれ、
「オルベル様!!!リニさん!!!明日、ど、ど、どうしましょうーー!!!」
「シュナさん!?」
涙目のシュナさんの登場に、驚く私とベル様。
そして後ろで急いで追いかけてきたであろうフィプスさんが「‥少し落ち着いてください」と、呆れた顔で注意した。
「どうしたんですか、シュナさん?明日はお出かけ‥」
「ふ、服ってどうしたらいいのかわからなくて!」
「え、」
「あと、私‥こんなに大きいので、やはりヴェリ様には相応しくないのではと」
「それは万が一にもなさそうですが、ともかく不安なんですね?」
私の言葉にシュナさんがコクコクと頷き、
「明日のことを考えるといても立ってもいられなくて‥」
と、大変乙女な発言をしたが、その後に「槍を素振り300回したけど、結局落ち着かなくて」と、言った。うん、やはり戦士だな‥。
チラッとベル様を見れば、眉間にシワを寄せ、
「‥‥俺は服に詳しくないから、まずレーラとリニに聞け。それからお前にヴェリが相応しくないと、誰か言ったのか?」
「え、えっと、」
目を泳がせたシュナさん。
分かりやすい‥。誰かに言われて不安になっちゃったのか。
私は席を立って、シュナさんの背中をそっと撫でた。
「私からするとシュナさんは、こちらへ来て間もない私に優しくしてくれて‥、ここだけの話、ヴェリ様に勿体ない相手なんじゃないかと思ってますよ?」
「え!?」
驚きに目を丸くするシュナさんについ笑ってしまう。
でもさ、人間相手に馬鹿にする人達がいる中で、すぐに打ち解けてくれて私は本当に嬉しかった。だから誰に言われたかわからないけど、そんなことでシュナさんの自信を壊されたくない。
「一緒に服を選びましょう!私もちょっと自信がないけどレーラさんがいてくれますし、一緒ならきっとなんとかなりますよ!」
「リニさん!!!」
「キルシュナ!!猫!子猫のように優しく抱きしめろよ!!」
ベル様が慌てて言うと、シュナさんはハッとしてそっと抱きしめてくれた。あ、ありがとうベル様。うっかり圧死しちゃうどこだったわ‥。
シュナさんの腕の中でお互い目配せして、小さく笑ったけど‥、いよいよ明日はデートかぁ。シュナさんにそう言われてから、どんどんドキドキしてきたし、なんだか緊張してきたぞ?!嵐ですっかり忘れていたけれど、私も大丈夫かな?そう思いつつ、そっと抱きしめてくれるシュナさんの背中を優しく撫でた。
本当〜〜〜に寒い!!
みなさま暖かくしてお過ごし下さい。




