8番目、恋と嵐。101
ベル様にケーキを食べさせ、大いに意識してもらおう!
そう思ったのに、二口食べたところでリリオン様がドアを勢いよく開け、
「オルベル〜〜!僕が持ってきたお花のエキスは美味しいかい?」
と、言った瞬間、レーラさんがリリオン様に飛び蹴りをかまし、ベル様は瞬時にその戦い(?)を見せないようにと私の目を手で覆った。早い。というか相手は王族だけど、そんなことしちゃっていいの?
ドサッと倒れる音がするかと思いきや、ドカドカと叩き合う音と、フィプスさんが呆れた声で、
「も〜〜!リニ様がいるんだからそこで戦わないで下さいよ〜。ほら、仕方ないから一緒にお茶してもらって、さっさと帰ってもらいましょう!」
と、いう声で音が収まった。
そろっとベル様の手が下されると、ベル様の部屋の大きなソファーにどかっとリリオン様が座って、
「フィプスは話のわかる子だねぇ!」
「‥リリオン様がわかりづらいんですよ。嵐でオルベル様が大丈夫なのか心配だってもっとシンプルかつ素直に言えばいいんです」
「え〜、そういうものなの?」
ベル様がはあっと大きくため息を吐きつつ、私にソファーに座るように勧めてくれた。ううむ、意識してもらう作戦は失敗か‥。ソファーに座れば、ベル様が自然に私の隣に座るので、それだけでまたも心臓がドキドキと慌ただしく跳ねる。隣にいるだけなのになんて心臓に悪いんだ。
「‥嵐は心配せずとも少しずつ収まってきている。そりゃあちこち崩れたり氾濫しているが、今回はヴェリもかなり手助けしてくれているから安心してくれ」
「え、そうなの?ヴェリが?」
「‥‥町への視察に行く為にな」
「ああ、デートか」
「でっ、ま、まぁ、そう、だが」
リリオン様の一言に耳先が一気に赤くなったベル様。
うむ、今日も本当に照れ屋さんだな‥。リリオン様は落ち着こうとお茶を飲むベル様と私を見て、
「デート楽しみだねぇ!」
ぶっとお茶を吹き出し、咳き込むベル様に私は慌てて背中をさすった。
絶対わざとやったなこの人‥。リリオン様をじとっと見て、
「リリオン様、またそうやってからかうとベル様に構ってもらえなくなりますよ?」
「え〜、そういうもの?」
「構うのと嫌がらせは紙一重ですよ」
私の言葉にレーラさんとフィプスさんとベル様が同時に頷くと、リリオン様はばつが悪そうな顔をして「気をつける‥」と、呟いた。すると、ベル様が驚いて、
「言うことを、聞いている‥?」
「ベル様、リリオン様は大人ですよ」
「そうだよ!僕はもうれっきとした大人の男だからね、リニの言葉だって素直に聞けるよ」
「じゃあ、こっちへ来る前に一言いえ」
「そこはつい忘れちゃうんだよね〜」
うん‥、そこはまあ仕方ないことにしよう。
でもベル様と話して、すんごく嬉しそうな顔をするリリオン様を見ると、本当に大切に思っているのはわかる。ただ関わり方が問題なんだよね‥。リリオン様の後ろに立っているレーラさんとフィプスさんが、何も言ってないのにこっくりと静かに頷いた。魔族って読心術でもあるの?
と、リリオン様が小皿にのったケーキを私の方へすいっと差し出した。
「リニもちゃんと食べなよ。味見だけだったでしょ?」
「えっ、ええっと、じゃあ、いただきますね」
そう言われて食べない訳にはいかない、よね。
ベル様やリリオン様、レーラんさんやフィプスさんにニコニコと微笑まれながら食べるので、ちょっと緊張するけれど、やっぱり美味しい。我ながら良い焼き加減だ!
「このエキスってお花から抽出したんですよね?」
「そうそう。ユプスやフィプスが住んでいる地域のお花なんだ。お茶にもなってねぇ、すごく美味しいんだよね〜」
「へぇ、お茶にも‥」
どんなお茶の味がするんだろう。
もぐもぐ食べていると、なんだかふわふわした気分になってきた。
ケーキを食べていてふわふわした気分になるって、なんでだろ?甘いからかな?と、レーラさんがハッとした顔をして、
「待ってください!お茶って、ユプスさんの好きなあのお茶ですか!?」
「あ、そうそう。煮詰めたエキスだから香りが良くて‥」
「リニ様!それをもう食べるのはやめた方が」
「んえ?」
なんで食べちゃダメなの?
と、言いたいのに頭はふわふわ、体もふわふわして上手く座れなくて、ベル様の肩にコテッと頭をのせてしまう。
「り、リニ!?」
ああ、ダメだ。リリオン様がいるのにこんなふわふわでは失礼だ‥。そう思うのに、ものすごく睡魔が襲ってきて、私はそのまま眠ってしまったらしい。
‥次の日の朝、ユプスさんの好きなお茶は、まさにリリオン様が持ってきてくれたお花から出来ていたらしく、私はケーキで酔っ払ってしまったそうな。ううむ、義理父の前でまたも失態!と、思ったが、リリオン様が上機嫌で帰ったそうだ。‥魔族、謎だ。
あとシュナさんのことはベル様が「なんとかする」と、話していたが、どうにかなるんだろうか‥。そこも謎だ。




