8番目、恋と嵐。99
あれから3日経った。
外は相変わらずの大嵐で、ベル様は部屋で書類仕事をしているかと思えば、崖が崩れた!川が氾濫した!と報告がくれば速攻で出動していて、あまり会えていない。
食事の時間が合えば話しているけれど、なんというか言葉が上手く出てこなくて、部屋に戻っては自主的に反省タイムをしている。
だめだ!!
こんなメンタルでは病んでしまう!!
私はその度に畑へ駆けていき、雑草を抜いたり水をやったり、あとは畑の側へシートを敷いて貸してもらった本を読む。うん、薄暗い部屋にいるよりは外の方がまだ気分も上がる!外はすんごい風だけど‥。
「リニ様〜〜、お手紙が来ましたよ〜〜」
「え?もう?」
先日実家へ手紙を書いたけど、もう返信きたの?
レーラさんが手紙を手渡してくれて、お礼を言五つ宛名を見ればシュナさんからだ!おおっ、何気に初めてこっちへ来て友達から手紙を貰ったぞ!ワクワクした気持ちで封筒を開けた。
『リニさん、聞いて下さいよ!!ヴェリ様が、最近鉱石ならどんな色や形が好きかを手紙で執拗に聞いてくるんです!鉱石の町へ行くのは知っているんですけど、もしかして何かプレゼントしようと思っているのか気になって‥。そうなったらプレゼントをこちらも用意しなくてはいけないし‥、でもこっちは本気で嵐のせいで忙しくて!リニさん、何かオルベル様から聞いていませんか?』
‥うん、ヴェリ様はさては秘密にできない男だな?
そしてシュナさん、手紙もまんま話しているような感じなんだな。
これは私が勝手に返答する内容じゃないないな‥と、思ってそっと封筒に手紙をしまった。と、レーラさんが心配そうに私を見て、
「何か、緊急事態でも起きましたか?」
「‥ある意味緊急事態ですが、これはベル様にまず話をしないと‥と、」
すると私の言葉に、パッとレーラさんが顔を輝かせた。
「まぁ!オルベル様とお話を?」
「は、はい。ちょっと私一人で判断できないので‥。って、なんでそんな嬉しそうなんですか?」
「‥リニ様、最近お元気がないので」
「うっ」
「もしかしてオルベル様が、本気で嫌なのかと」
「そ、それはないですよ!!」
それはない。むしろ好きなんだけど、いや、好きだからちょっともやもやしているというか‥。しかも全然ベル様は何も悪くないというね。だけど、勝手に立ち聞きしてしまった話を誰にもできないし、この気持ちを自分一人でどう消化したらいいかわからない。
畑でもいじっていればスッキリするかと思えば、無意識に私が知らないタイミングで助けたお嬢様に会うのかな‥と、考えてしまう。
「ちょっと、色々考えちゃって‥。でも、もう大丈夫です!」
「無理をするとかえって辛いですよ」
「無理は、してない‥ですよ?」
ジトーッとレーラさんに見られると、全部見破られてしまいそうになるよ〜〜!と、膝の上に置いておいた小説が落ちて、慌てて拾うと丁度主人公がケーキを作る場面だった。ケーキ、ケーキか‥。そういえばカボチャのケーキ、せっかく作ったのにベル様にあげたのはたった二切れだったな。その後は、ベル様はあちこち出動しちゃったから私とレーラさん、フィプスさんで食べてしまったんだ。
「‥また、ケーキでも作ろうかな」
ボソッと呟くと、レーラさんが私の隣にそっと座った。
「私、リニ様が作って下さったあのケーキ大好きです!」
「そ、そうですか?」
「はい!オルベル様も特に嬉しそうでした。家族にケーキを作ってもらうなんて初めてだったんじゃないでしょうか」
「え?」
家族にケーキを作ってもらうことがなかった?
目を丸くすると、レーラさんはちょっとだけ声を潜め、
「ほら、リリオン様なんてご飯さえも作ったことのない王族でしょう?愛情は掛けていたと思うんですが、生活面はちょっとさっぱり‥な方ですし」
「お、お母様は‥」
「私は詳しくは知らないのですが、リリオン様に出会う前は生活に困窮していたと‥」
「こんきゅう‥」
精霊になって暴れたお母様を思い出して、「恨んでいない」と言ったベル様を思い出す。‥今世も、前世も多分私は家族に恵まれていた。そしてご飯も家族揃って食べていた。ベル様は、それがなかったの?
そういえば、お屋敷も私が来るまでは一人で住んでいたって言ってた‥。
そう考えたら、大きな家でポツンといるベル様を思うと、胸の奥がぎゅっと痛くなる。ええい!私よ!女は度胸、愛嬌、最強なんだぞ!ベル様がこの際、どこの誰と会おうがどうでもいいじゃないか!十分過ぎるくらい気遣ってもらってるのに、うじうじするな!
パンと両頬を両手で叩き、
「もう一度、いえ、何度でもケーキを作ります!」
高らかに宣言すると、レーラさんはちょっと目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。うじうじ悩んでも仕方ない!私は私が今できることしかできないんだ。まずはケーキ!ケーキを作るぞ!それでもって話し合いだ〜〜!
やっぱね、性別関係なくどかーんと行った方がいい時はありますよ‥。
あ、私はどかーんと行って、どかーんと跳ね返る事もあります。はい。




