97.春休み・(修行に励む日々⑤)
「最近、この手の話が増えてるね・・・。」
と師匠はポツリと言った。そして、
「飼い主も見つかったし、私達はこれで。」
と言って頭を下げた。すると女性
「本当にありがとうございました。お礼は改めて伺います。」
と言ったが、師匠は
「お気持ちだけありがたく受け取ります。」
と言って動物診療所?を出た。私は
「師匠、看板もありませんけど、動物専用の診療所なのですか?」
と尋ねると、師匠は
「ああ、末岡先生は獣医だからそうなるね。先生は普段牛や豚や鶏や馬の診察やらで往診に行っているからね。ほとんどあそこにはいないんだ。だから看板を出してないんだろうね。さっき電話をしたら運がいいことにいらっしゃったから今回はあそこで見てもらえたけどね。」
と答えた。へぇ。そうなんだと納得した。そして、先ほど師匠がポツリと呟いていたことが気になり
「師匠、さっきこの手の話が増えてきたとおっしゃっていましたけど、魔物が増えたということですか?」
と尋ねると、師匠は
「ここ1ヶ月の間、屠殺場(牛や豚などの家畜を殺して(屠殺して)解体し、食肉に加工する施設)や、火葬場、墓地で度々魔物が出て、度々退魔部隊が出動しているらしいんだよ。今のところは退魔部隊で対応できているらしいんだけどね、もしそれができなくなった時は応援を頼まれるかもしれないんだ。その時はあんたも連れて行くからしっかり修行しとくんだよ。」
と言った。
「わかりました。」
と返事をし、続けて
「それって、この前見せてもらった張り紙が関係してるんですか?」
と尋ねると、師匠は
「さあね。それよりも、もう5時だよ。急いで帰っておつとめをするよ!」
と言って走り出した。師匠は100歳を超えても足が速い。私は置いていかれないように必死についていった。
家に着いた時には5時半になっていた。それから私たちは1時間しっかりおつとめをした。夕飯の支度をしよう台所に向かう途中、電話が鳴った。師匠は電話に出ると
「わかった。」
と言って電話を切ると
「魔物が大量発生したんだと。迎えが来るから5分で支度しなさい。懐刀を忘れんじゃないよ。」
と言った。私は急いで部屋に戻り懐刀を持ち、手ぬぐいとちり紙と飴玉を作務衣のポケットに入れて玄関口に行った。すると既に師匠は玄関で私を待っていた。師匠は
「じゃあ行くよ。」
と静かに言った。




