66.巡幸⑤
「大丈夫か?」
中村くんが心配そうに尋ねた。
「大丈夫じゃないかも。」
と答えた。そんなテンションダダ下がりの私をよそに西さんご家族と鈴木くんは嬉しそうに馬鹿皇子に挨拶をしている。馬鹿皇子は
「正面玄関に貼ってあるうどん出汁の研究、とても勉強になりました。うどん同好会の発表を楽しみにしていたんですが、本日発表に参加されないと聞いて残念に思っていたのですが、今日、こちらで面白い活動をなさると関先生に伺いまして無理を言って参加させて頂きました。今日はよろしくお願いします。」
と丁寧に頭を下げた。私達も頭を下げた。すると西さんが、
「第二皇子様はお忙しいだろうから早速始めよう!」
と言って、私たちはエプロンと三角巾をつけた。馬鹿皇子はおばさんにエプロンと三角巾を借りて活動を始めた。
私達はじゃんけんでグループ分けをして勝った西さんと鈴木くんと馬鹿皇子は関東出汁。負けた私と中村くんは関西出汁を作る事になった。おじさんは
「関東の出汁は主にかつお節が使われて、関西やこっちでは主に昆布とかいりことかが使われるんだ。それと醤油にも違いがあって関東は濃口、関西やこっちでは薄口を使うんだ。このはちゃんがこっちにきた時うどん出汁見て驚いてたもんな。」
「はい。」
と答えると、鈴木くんは
「第二皇子様はこっちのうどんを食べたことあるんですか?」
と尋ねた。すると馬鹿皇子は
「第二皇子様ではなく桜華と呼んでください。」
と言い、続けて
「こちらのうどんは初めてです。帝都以外でうどんを食べたのは、四国に行った時ですが、その時はうどんに薬味や大根おろしをかけて、出汁ではなく醤油をかけていただきました。」
すると西さんは目を輝かせて
「麺が固かってでしょ。」
と尋ねると馬鹿皇子は
「はい。」
と答えた。おじさんは
「こっちのうどんは柔らかくて美味しいですよ。」
と言って、茹でる前の麺を馬鹿皇子に見せていた。和やかな雰囲気で調理が進み、その様子を関先生が写真に撮っていた。私達が出汁を完成させると、おじさんが
「麺を茹でるよ!」
と言って麺を茹でると麺とネギを手早く盛り付け、その上に出汁をかけてテーブルに運んでくれた。
「さっ、食べ比べで見て!」
とおじさんが言うと、私達はいただきますを言って食べ比べをした。するとおばさんが
「よかったら食べて!」
と丸天やごぼう天を揚げて持ってきてくれた。私達は互いに感想を言い合いながら美味しくいただいた。その頃には馬鹿皇子とうどん同好会メンバーはすっかり仲良くなって、うどん以外の話までし始めていた。すると馬鹿皇子は
「そういえば、このはは眼鏡かけるようになったんだな。」
「はい、つい最近。勉強のしすぎで目が悪くなってしまいました。」
「学年6位って、頑張ってんだな。」
「まぁ、はい。」
・・・・あ。うどんのおいしさに気が緩んでいた。そう思った時には既に手遅れで、中村くんが
「え?2人は知り合い?」
と驚いた表情で尋ねた。




