41.修行って?③
「ごちそうさまでした。」
朝食を終えた私にババアが、
「片付けの前にちょっとこっちにおいで。」
と言って流しにある大根のヘタを私に見せた。
「要は、さっきと一緒さ。」
と言ってヘタに爪楊枝を3本刺し、皿に入れるとシンクに置いた。そして真ん中の楊枝の上1センチくらいだけをパチンと飛ばした。飛ばした楊枝の破片は皿の中の大根の隣に転がっている。1週間以内にマスターしな。」
そう言って私に楊枝の箱と、水に入った皿に大根のヘタを入れて渡した。
「はい。わかりました。」
私は食事の後片付けをしてから部屋に戻った。
「宿題が増えたな・・・。」
とりあえず、力の加減ができない間は外で術の練習をしないと危ないので人気のない、寺の裏で練習をすることにした。大根に爪楊枝を刺すと、気を少し溜めて放った。
「あ。」
爪楊枝だけでなく大根も皿も綺麗に消えて無くなっていた。
昼食の片付けが終わり部屋に戻っていると、
「こんにちはー。」
と声がした。玄関に若い日に焼けた青年が立っていた。年齢は20歳位のそこそこイケメンだ。
「こんにちは、あの・・・どちら様でしょうか?」
私が来客者の対応をしていたら、ババアがやってきて
「悪いね。智之。この子が私のひ孫のこのはだ。頼んだよ。」
と言った。智之さんは
「わかりました。」
とババアに言うと、続けて私に
「家庭教師をつとめる芦屋智之です。覚えてないかな。小さい頃にあったきりだよね。」
「智にいちゃん?」
「おっきくなったね!」
感動の再会を果たしているとババアが、
「ちょっと早いけど始めてくれないかな。この子は勉強があまり得意じゃないようだから。」
それから私達は4時50分(ババアは5時までと言っていたが5時からはおつとめがあるから4時50分)までみっちり勉強を教えてもらった。智にいちゃん曰く、国語、数学、理科、社会、英語の5教科に関しては数学と理科が足を引っ張っているので、冬休み中にこの2教科の学び直しをすることになった。
それから私はおつとめ、夕飯の手伝い、食事、食事の後片付け勉強、爪楊枝の修行をして1日を終えた。
それから1週間私は朝起きておつとめ、掃除、食事の準備に朝食、後片付け、勉強と術の練習、昼食準備に昼食、後片付け、智にいちゃんと勉強、おつとめ、夕食の準備に夕食、後片付け、風呂歯磨き、勉強と術の練習、就寝というルーティーンを続けた。時々ババアの買い物の荷物持ちをしたり檀家さんの法事にも同行もした。ちなみに正月(1月1日)は昼前にどこかのお店のおせち料理が届きそれと、雑煮を食べて、ババアにお年玉をもらった。
そして今日が1月2日、ババアに術を見せる日だ。朝のおつとめが終わり掃除を終わらせるとババアが、
「さあ、やろうかね。」
と言って爪楊枝を刺した大根を皿に入れて持って来た。
術の練習初回は全てを吹っ飛ばしてしまいババアにかなり呆れられてしまった。そして、ババアから
「これから毎食大根のフルコースになりそうだ。」
と言われてしまった。そしてその言葉が現実のものとなり1月1日のおせち料理と雑煮以外は大根のフルコースの日々だった。ちなみに年越しそばもおろしそばだった。・・・悪いのは私、大根には罪はない。でも、もう大根は食べたくない!!私は身体の力を抜き、指先についた鼻くそをピッと飛ばすような感じで人差し指に気を入れてすぐにピンと弾いた。すると真ん中の爪楊枝の上の部分がプチッと取れてポトッとさらに落ちた。ババアは楊枝大根の皿を持って来ると
「合格だ。じゃあ、今度は。」
と言って大根のヘタに楊枝を3本差し、
「今度は上の部分を1本ずつ右から落とす。次は左から落とす真ん中のから左右。」
と言葉通りに楊枝が(5ミリづつくらい)パチパチと落とし、どんどん爪楊枝が短くなっていく。
「すごい。」
「感心してる場合じゃないよ。1回やってみな。」
とババアに言われてやってみると、できるにはできたが楊枝が半分の長さになってしまった。ババアは楊枝を大根から抜き
「まあ、がんばりな。冬休みが終わるまでの宿題だ。大根は飽きたからしっかりおやり。」
と言って玄関に向かった。




