4.イケメン医師
「で、父さん、こんな所でのんびりしている暇はないでしょ。」
と言うと、父は
「そうだな。」
と言って馬鹿皇子の父の元へ行き、何か耳打ちをした。するとダンディが
「二階堂、例の場所に2人を案内してくれ。あっ、その前にこのはさんの怪我の処置を。」
と指示を出した。二階堂さんは
「かしこまりました。」
と言って私達を案内しようとすると、
「ちょっと待ってくれ。」
と、私達は馬鹿皇子に呼び止められた。そして私に
「お前、名前は?」
は?さっきから私の父や、あんたのダンディなお父様が「このは」って言ってるのを聞いていないの?あんたやっぱり馬鹿皇子ね。と心の中で悪態をつくも、ダンディも見ているし答えないわけにはいかないので、ため息混じりに 「はぁ、私このはと申します。それでは失礼します。」
と答え、一礼してから回れ右をし、馬鹿皇子に背を向けると二階堂さんと父について邸宅へ向かった。
・・・ダンディは第二皇子(馬鹿皇子)の父親ということは、この国の皇帝陛下ってこと?えー!あんなに素敵な人なのに、残念皇子のお父様?!確かにどっかで見たことある気がしてたのよね。・・・あ、そういえば、1年前に皇后様が亡くなったって新聞に出てたわね。・・・お母様を亡くして馬鹿皇子がグレたってこと?執事さんやメイドさんは馬鹿皇子は本当はいい子って言ってたけど。・・・まぁ、知ったこっちゃない。世の中、親を亡くした子供なんて五万といる。自慢じゃないが私もその一人。母を5歳の時に亡くした。しかし、私が皇子と違うのは母を亡くしても、非行に走ることなく近所でも評判な親孝行娘に育ったところだ。そんな事を考えていると、玄関に着いた。私達はメイドに迎えられ、邸宅の中に案内された。邸宅の中は洋風で、高そうな絵が壁にかけられ、豪華な花が豪華な花瓶に生けられている。二階堂さんに
「さっ。こちらにどうぞ。」
と言われ部屋に入ると、メガネをかけた白衣のイケメンが座っていた。素敵な方だなーと感動していると、イケメンは私に微笑みかけ
「怪我をしたんだね。見せて。」
と優しい口調で話しかけた。
「はい。」
と私は返事をして彼の前の椅子に座った。イケメンは私が止血に使っていた手ぬぐいを外すと、手際良く消毒をし、塗り薬を塗ってガーゼをあてると、包帯を巻きながら
「傷口は浅いから縫う必要はないし、跡にもならないでしょう。家に消毒液はありますか?」
と父に尋ねると、父は
「はい。あります。」
と答えた。先生は
「じゃあ、今日はお風呂に入る時はこのまま、濡れない様に入ってね。明日の朝、包帯とガーゼを外して、家にある消毒液で消毒してからこの薬を塗ってね。ガーゼや包帯はつけなくていいから。2日くらいできれいに治ると思う。はい。おしまい。」
と言って私に塗り薬と、手ぬぐいをビニール袋に入れて渡した。
「ありがとうございました。」
とお礼を言うと、
「いえいえ。どういたしまして。」
と言ってイケメンは私に微笑んだ。きゃー。素敵。最高!この瞬間、先程の嫌な出来事が私の脳内から排水溝へ綺麗に流れていきました。私の心の中で、楽しいワルツの調べが流れはじめました。