37.ババアに必死についていく
「おい、いつまで寝てんだい!」
私はババアに叩き起こされた。よほど疲れていたのか、膝に置いていたかばんに頭を置いて熟睡していたため、バッグによだれがべっとり垂れていた。
「ほら、さっさと降りるよ!」
と言われて財布を出そうとすると、ババアに、
「払ってやるよ。」
と言われ、そのまま私はバスを降りた。高尚院のバス停を降りたすぐそばが(高尚院)ババアの家だ。
「さっ、行くよ。」
と言われ私は思わずため息をついた。目の前には長い階段。早速憂鬱になった。、100歳を過ぎたババアがスタスタ上がっていく。
「化け物だ。」
とつい口から漏れてしまった。既に20段くらい上がっていたババアが、
「誰が化け物だって?220段くらい軽く登れなくてどうする。早くおいで!」
と言ってどんどん上がっていく。このババア、地獄耳だな。100歳過ぎたババアに負ける訳にはいかない。私はババアを追いかけた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
ババアを追いかけて階段を駆け上がったため、足がガクガクして、息も上がってしまった。
「遅かったね。」
と言ってババアはまたスタスタと歩き出した。
ババアは高尚院(寺)の裏手にまわり、鍵を開けて引き戸をガラガラっと開けると、
「無くすんじゃないよ。」
と言って私に鍵を渡した。そして中に入ると、スタスタと廊下を歩き、部屋の引き戸を開けた。
「今日からここがあんたの部屋だよ。荷物を置いて、あの作務衣に着替えたら突き当たりのあの部屋においで。」
と言って出て行った。
部屋には布団が一組置いてあり、その上に作務衣が置いてある。そして机の上には教科書や参考書、ノートが山積みにされている。私は着物を脱いで衣紋掛け(えもんかけ)にかけると急いで作務衣に着替え、突き当たりの部屋に行った。
トントントン
「入んな。」
「失礼します。」
「ついて来な。」
ババアはそのまま玄関に行くと、
「鍵は?」
「部屋にあります。」
「とって来な。」
「はい。」
私は急いで部屋に戻り鍵を持って玄関に戻った。
「貸しな。」
とババアに言われ、鍵を渡すと、ババアはそれに紐に通して
「いつも首からかけておきな。」
と言って私に鍵を返した。ババアは私が鍵を閉めている間に先に歩いて行った。私はババアの気配を追うと、階段を降りているババアを追いかけた。
「いらっしゃい!いつもの席空いてますよ。」
とおじさんに言われ、ババアは奥のカウンター席に座わり、私を手招きした。
店内は出汁のいい匂いがする。ここは西といううどん屋さん。もうすぐ2時という遅い時間にも関わらず、店内はほぼ満席である。私はババアの隣に座ると
「好きなの頼みな。」
と言ってババアは私にお品書きを渡した。私が選んでいるにも関わらず、
「丸天うどんと、かしわおにぎり二つ。」
とババアはさっさと注文した。ぐずぐずしてまた嫌味を言われては嫌なので
「私も同じものを。」
とおじさんに注文をした。
「はい。お水。」
と言っておじさんは私とババアの前に水の入ったコップを置くと、
「お孫さん?」
「ひ孫だよ。」
「やっぱり、芦屋さんに似てますもん。目から上が。」
「そうかい?まっ、私の若い頃の方が美人だったけどね。」
「そうなんですね。」
私はババアと、おじさんの会話を聞きながらひ孫に張り合うなよ。と心の中でツッコミを入れた。それから3分もたたないうちにおじさんが
「丸天うどん二杯とかしわおにぎり2セットね。」
と私達の前にうどんと、かしわおにぎりの皿を並べた。
「うどんの出汁、透明。」
と私は思わず呟いてしまった。それを聞いたババアは
「こっちではこれが普通だよ。いただきます。」
とババアは手を合わせ、うどんに一味を入れてさっさと食べ始めた。私も
「いただきます。」
と手を合わせ、私もうどんに一味を入れて急いで食べた。
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまでした。」
私達は同じタイミングで食事を終えると、ババアはさっさと会計を済ませて
「行くよ!」
と言って店を出て行った。
ババアは来た道を戻ってスタスタと歩いていく。はぁー又、あの階段を登るのか・・・。
「遅かったね。」
デジャブ?階段を登り終えた私は、ババアからさっきと同じ台詞を言われた。そしてさっきと同じようにババアは寺の裏にまわった。私が鍵を開けると、
ババアは私の部屋に入っていった。




