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34.車内にて

 自分の生まれ育った帝都としばらくの間お別れ。私は感傷的な気持ちで車窓を眺めていた。一人で汽車に乗り遠出することは初めてだ。私はみっちゃんとマチに貰った紙袋を開けて中身を出した。水玉模様や花柄、苺やりんごの絵が描いてあるかわいい便せんと封筒のセットと、無地の葉書10枚と切手が5枚入っていた。

「流石、気が利く。」

封筒と葉書の宛先に、みっちゃんとマチの住所と氏名が書いてあった。私はそれを鞄に片付けると、おばさん達からもらった紙袋の中も確認した。みっちゃんのお母さんからもらったのは私が好きな駅前のmadokaという洋菓子店のクッキーセットだった。

「おばさんよくわかってるな。」

次にマチのお母さんからもらった袋の中を見ると、坂本製薬の臭わない湿布が10セット入っていた。

「おばさんらしい。」

と呟いてそれらも鞄に片付けた。


 これから24時間汽車の中で過ごさねばならない。私は持参した小説の中から推理小説を選び読む事にした。



「ふー、やっぱり犯人はあの医者だったのね!最初から怪しいと思ったのよ。」

つい熱中してしまい私は一気に一冊読みきってしまった。

気がつけば2時になっていた。私は加代子さんからもらった弁当を食べようと風呂敷開き、竹の皮を縛っている紐を外した。加代子さん特製のかしわ飯のおにぎりと玉子焼きと唐揚げ。私はそれをペロリと平らげ、又別の本を開いた。

「あれ?」

本に一枚のメモ用紙が挟まっていた。

『移動中でも修行はできます。瞑想、呼吸、丹田に力を入れ気を高める。どれも車内でできます。時間は有限です。頑張って。』

と父の字で、書かれている。はぁ。私がこの本を読まなかった事を父は想定していなかったのだろうか。私は本を閉じて修行を始めた。



「お弁当にお茶、コーヒー、冷凍みかんにお酒、おつまみはいかがですかー。」

気がつけば窓の外は真っ暗になっていた。腕時計の針は7時を過ぎたところだった。私は車内販売の売り子さんから幕内弁当とお茶を買って、黙々と食べた。一人で食べるご飯はなんだか味気ないな。


 食事を終えると車掌さんが乗客に毛布と枕を配りました。今日はこの座席寝るのです。私はお手洗いに行き、手洗いのついでに歯磨きを済ませてまだ8時半なのに毛布をかぶって横になった。

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