313.奥底に
チュッ、チュッ。チュッ。
私は今、馬鹿と唇を重ねている。私に唇を奪われた馬鹿皇子に変なスイッチが入ってしまった。馬鹿皇子は私をソファーに押し倒して何度も唇を奪ってくる。・・・。馬鹿皇子と唇を重ねる度に私の心臓は高鳴り、幸せな気分が身体中を駆け巡る。ダメだ。私、やっぱり、馬鹿皇子の事・・・ダメなのに。好きになってはいけない人なのに。
私は馬鹿皇子の胸を押し距離を取った。やばい。なんとか誤魔化さないと。
「はぁ、はぁ。桜華様、もう十分にお互いの唾液は摂取できました。。それに私、学校の準備もありますからこのくらいで・・・。」
「あ、あぁ。」
そう言って馬鹿皇子は私をソファーに座らせた。そして私を熱っぽく見つめて思いっきり私を抱きしめた。・・・いかん。だよね。そうなるよね。私が苦し紛れで言った唾液が摂取できたという言葉は聞こえてなかったのかな?まぁ、私が馬鹿皇子の唇を奪った事実は今更なかったことにはならないよね。仕方ない。このまま続けよう。
「術を施しますから。」
私がそう言うと、馬鹿皇子は驚いた顔で、
「あ、ああ。」
と答えた。肌を重ねずに行える術。昨夜馬鹿皇子が眠った後に見つけた術だ。私は馬鹿皇子の右手に術を施した。
「あの、桜華様、私に見えないようにテーブルに何か書いてくれますか?」
「あ、ああ。」
「できたぞ。」
「・・・今の口づけはなん・・・。すみません。途中までしかわかりませんでした。この術は間者同士が使っていた術なんでしょうね。これは術と術をかけられた者だけに見える文字が書けるようになるという術なんです。私も書いてみますね。向こうを向いていてください。」
「あ、ああ。わかった。」
私は文字を書くと、
「できました!」
と伝えた。
「じゅつで、おうかさまと、わ・・・。ん〜ここまでしかわからなかった。」
「そうですか。途中までしかわからなかったし、あまり使えないものなんでしょうね。まぁ、一応これで桜華様と私は術で繋がりましたよ。」
「そ、そうだな。」
馬鹿皇子は、なんとも言えない表情でそう答えた。
私はこうして卑怯にも自分のしでかしたことを誤魔化し、自覚した馬鹿皇子への気持ちを胸の奥底に沈めた。そして馬鹿皇子に心の中で何度も何度もあやまった。




