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309/315

309.馬鹿皇子と西園寺先生②

「西園寺先生、お待たせしました。」

「待ってないよ。休み時間はあと4分残ってるから、のんびりしてなよ。」

「ありがとうございます。」

その時、

「きゃっ。」

馬鹿皇子が私の手を引っ張り、私はソファーに座っている馬鹿皇子の太ももの上に座らせられた。馬鹿皇子は私を抱きしめて、

「ゆっくり座ってろ。」

と訳の分からないことを言い出した。

「ちょっと、やめてください。なんなんですか?離してください。」

「なんで?いいだろ別に。」

そう言って私のうなじに顔を埋めた。

「ちょっと、いい加減にしないと怒りますよ!」

私がそう言うと馬鹿皇子は腕を緩めたので、その隙に、西園寺先生の隣に座った。

「早めに始める?」

「はい。お願いします。」

すると馬鹿皇子は、ソファーから降りて床に座り、又先程と同じように私を両足の間に挟んだ。そして、

「ちゃんと休憩しとけ。」

と言って私を抱きしめた。馬鹿皇子のことは放っておこう。時間がもったいない。

「西園寺先生、始めてください。」

「あ、ああ。始めよう。次は物理かな。」

「はい。ですが物理は得意なので、化学を教えてください。」

「そうだった。このはさんは物理得意だったね。大学ではやっぱり物理分野を専攻するの?」

「はい。力学に興味があって。」

「そうなんだ。帝大には素晴らしい先生が多くいらっしゃるけど、力学で有名な菅井俊先生が昨年帝大から九州帝大に移動されてね。九大には新しい研究施設もできて、素晴らしい論文が次々に発表されているよ。」

「それはすごいですね。知りませんでした。私、菅井先生が書かれた参考書を愛用してるんです。わかりやすいし面白いし。九州帝大は冨久岡ですよね。私の曽祖母が冨久岡にいるの・・・。」

「ちょっとまて、このは?九州帝大に行くのか?帝大じゃなくて?・・・っていうか、西園寺さん、このはに変なこと吹き込まないでください。このはは帝大を目指しているんですよ。迷わせるようなこと言わないでください。」

「桜華様、ちょっと待ってください。私は家庭教師として情報を伝えているだけです。それに進路希望を聞いた上で受験対策をした方がより効率的です。それに大学で物理を勉強したいとこのはさんが言えば、九州帝大に菅井先生がいらっしゃることを私からでなく、夏休み前の進路指導で担任から話を聞くでしょう。桜華様、いくら桜華様でも、このはさんの進路に口出しするのはやり過ぎかと。大学は高いお金を出して学ぶんです。自分が学びたいことを良い環境で学ばないともったいないですよ。ですからこのはさんには後悔しない大学選びをして欲しいんです。同じ学ならより良い環境でと。桜華様もそう思いませんか?」

馬鹿皇子は西園寺先生にそう言われて返す言葉がなかったのか何も言わず、西園寺先生が帰るまで一言も喋らず、ずっと私を両足に挟んでいた。

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