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303/328

303.術師覚書実践

チュッ。

チュッ。

私と父はお互いの腕につけた刀傷から血を吸った。そして昨夜読んだ『術師覚書』に書いてあった術をお互いにかけた。

「う。」

「うっ。」

鳩尾を軽く殴られたような衝撃が走った。

「大丈夫か?」

馬鹿皇子が私に声をかけた。

「はい。大丈夫です。」

「父さんは?」

「ああ。問題ない。じゃあ、島津くん、このはをつれて先に行って!3分後に追いかける。」

そう言って父と馬鹿皇子は目を伏せた。

「しっかり掴まっててね。」

「はい。」

私は島津さんの運転するバイクの後ろに乗った。島津さんは皇居内の道を進み、小さな茶室の前でバイクを止めた。

「バイクの音で場所がばれている可能性もあるからさ。バイクをここに置いて少し離れた場所で隠れていよう。」

「わかりました。ここは茶室ですよね。と言うことは東側に来ているんですよね。」

「うん。ちゃんと敷地内の予習をしてるんだ。流石だね。」

と言って島津さんは私の頭を撫でた。私は島津さんと北側に1分ほど歩き、生垣の影に隠れた。

「そろそろ3分経つね。はい。よかったらどうぞ。」

「ありがとうございます。」

私はキャラメルを頬張ると、

「腕の傷は大丈夫?」

「もう血は止まっています。ほんのちょっとしか切ってないから。」

「そう。よかった。」

その時遠くからバイクの音が聞こえ、だんだん近づいてきた。

「うっ。」

又、先ほどと、同じ衝撃が。

「大丈夫?」

「はい。」

すると足音が聞こえてきた。

「あ、あそこに。」

馬鹿皇子の声に私が反応して立ち上がると、

「すごいな。わかりにくいように茶室にバイクを置いてここまできたんだけど。」

と島津さんが言った。

「確かに。そうですね。」

すると父が

「このはの気配を感じながら走ってきたんだ。」

と言った。

「魔力ではなくて?」

「うん。このはは?体に何か感じた?」

「父さんが近くにきた時に体に衝撃が走ったんです。そしたら2人が来たんです。」

「衝撃って大丈夫なのか?」

馬鹿皇子が私の元へやってきて詰め寄った。私は馬鹿皇子のお腹を軽く殴った。

「この程度の衝撃です。痛いというよりびっくりします。」

「なるほど。よくわかった。と、いうことは、昨夜の本はかなり使える魔術が載ってるってことがわかったな。」

「まだ、一つしか試してませんけど、使えそうなものは試す価値があることはわかりました。父さん、父さんが戻るまで使えそうな術を探しておきますね。」

「わかった。頼んだよ。」


 それから私は父に見守られながら45分かけて皇居の敷地全てに結界を張った。仕事が終わり玄関口で

「明日から朝は俺が同行してバイクを走らせます。よろしく。」

と島津さんは私に手を差し出した。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

と言って握手をした。

「いつまで握手してるんだ?」

馬鹿皇子はじとっとした目で私達を睨んだ。


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