303.術師覚書実践
チュッ。
チュッ。
私と父はお互いの腕につけた刀傷から血を吸った。そして昨夜読んだ『術師覚書』に書いてあった術をお互いにかけた。
「う。」
「うっ。」
鳩尾を軽く殴られたような衝撃が走った。
「大丈夫か?」
馬鹿皇子が私に声をかけた。
「はい。大丈夫です。」
「父さんは?」
「ああ。問題ない。じゃあ、島津くん、このはをつれて先に行って!3分後に追いかける。」
そう言って父と馬鹿皇子は目を伏せた。
「しっかり掴まっててね。」
「はい。」
私は島津さんの運転するバイクの後ろに乗った。島津さんは皇居内の道を進み、小さな茶室の前でバイクを止めた。
「バイクの音で場所がばれている可能性もあるからさ。バイクをここに置いて少し離れた場所で隠れていよう。」
「わかりました。ここは茶室ですよね。と言うことは東側に来ているんですよね。」
「うん。ちゃんと敷地内の予習をしてるんだ。流石だね。」
と言って島津さんは私の頭を撫でた。私は島津さんと北側に1分ほど歩き、生垣の影に隠れた。
「そろそろ3分経つね。はい。よかったらどうぞ。」
「ありがとうございます。」
私はキャラメルを頬張ると、
「腕の傷は大丈夫?」
「もう血は止まっています。ほんのちょっとしか切ってないから。」
「そう。よかった。」
その時遠くからバイクの音が聞こえ、だんだん近づいてきた。
「うっ。」
又、先ほどと、同じ衝撃が。
「大丈夫?」
「はい。」
すると足音が聞こえてきた。
「あ、あそこに。」
馬鹿皇子の声に私が反応して立ち上がると、
「すごいな。わかりにくいように茶室にバイクを置いてここまできたんだけど。」
と島津さんが言った。
「確かに。そうですね。」
すると父が
「このはの気配を感じながら走ってきたんだ。」
と言った。
「魔力ではなくて?」
「うん。このはは?体に何か感じた?」
「父さんが近くにきた時に体に衝撃が走ったんです。そしたら2人が来たんです。」
「衝撃って大丈夫なのか?」
馬鹿皇子が私の元へやってきて詰め寄った。私は馬鹿皇子のお腹を軽く殴った。
「この程度の衝撃です。痛いというよりびっくりします。」
「なるほど。よくわかった。と、いうことは、昨夜の本はかなり使える魔術が載ってるってことがわかったな。」
「まだ、一つしか試してませんけど、使えそうなものは試す価値があることはわかりました。父さん、父さんが戻るまで使えそうな術を探しておきますね。」
「わかった。頼んだよ。」
それから私は父に見守られながら45分かけて皇居の敷地全てに結界を張った。仕事が終わり玄関口で
「明日から朝は俺が同行してバイクを走らせます。よろしく。」
と島津さんは私に手を差し出した。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と言って握手をした。
「いつまで握手してるんだ?」
馬鹿皇子はじとっとした目で私達を睨んだ。




