22.思い出作り①
「加代子さん、この着物とこの服どっちがいい?」
「そうですね。どちらでもお似合いですけど、カフェに行かれるのであれば店の雰囲気に合わせて洋装でもいいかと思います。この緑のカーディガン、このはさんとってもお似合いだし。でも昨日クラスの皆さんから頂いた赤い飾りのついたかんざしが素敵だったからこの椿の柄の着物にかんざしを刺していくのもいいと思うんですよね。」
「あ、かんざし。いいわね。今日は椿の着物着てく。ありがとう加代子さん。」
私は着替えて髪を結いかんざしを刺し、椿と同じ紅色の巾着の中に財布とハンカチちり紙、飴玉を入れて、腕時計をつけた。そして私は玄関の掃除をしている加代子さんの元に行った。
「加代子さん、どう?」
「素敵です!あ、ちょっと待ってくださいね。」
と言って加代子さんは洗面所の方は行き、手を拭きながら戻ってきた。
「せっかくですから紅を引きましょう。」
「私、口紅持ってないよ。」
「これ、私のなんです。若い人向けの色なんですが、私は顔色をよく見せる為にこれを頬紅がわりに使ってるんです。ちょっと椅子に座ってください。」
と言って加代子さんは私を食堂に連れて行き食卓の椅子に私を座らせた。そして私の口に紅を引くと、加代子さんは
「ちり紙を咥えてください。」
と言って私にちり紙を渡した。加代子さんは手鏡を出し
「ちり紙はもういいですよ。」
と言って私がはずしたちり紙を受け取り鏡を見せてくれた。
「よくお似合いですよ。」
鏡にはいつもよりちょっぴり大人に見える私がいた。
「うわー。素敵、加代子さんありがとう。」
私は加代子さんにお礼を言い、居間にいる父の元に行った。
「お父さん、どう?加代子さんに口紅塗ってもらった。」
「いいじゃないか。どこの女優さんかと思ったよ。」
「本当?やったー。じゃあ、行ってくる!」
私は赤い鼻緒の草履を出し、マフラーを巻き(着物用の)コートを着て
「いってきまーす!」
と元気に家を出た。
待ち合わせの10分前にもかかわらず、バス停に着くとみっちゃんとマチが待っていた。
「おはよう!2人とも早いね。」
と声をかけると、マチが、
「おはよう!あー口紅かわいー!かんざしもこれ選んでよかった!」
と言ってくれて、みっちゃんも
「本当だ。かんざし似合う!これ、私とマチと、山下さんで選んだの。似合ってる!かわいい!」
と褒めてくれた。
私たちは、9時53分のバスで、中央駅に向かった。私たちは1番後ろの席に座った。3人で楽しくおしゃべりをしていたのであっという間に目的地の停留所に着いた。
中央駅付近には洋食屋、料亭、喫茶店、呉服屋、履物屋、雑貨屋など、沢山のお店があります。私たちはチラシの喫茶店に向かって歩いていると向こう側に人だかりが見えます。マチが
「あの人たち、喫茶店に並んでるみたい。」
と言うと、みっちゃんが
「うそー。もうこんなに並んでるの?」
と言った。私は
「どうする?別のところに行く?」
と言うと、みっちゃんが
「ハイカラな洋食、3人で食べたかったなー。」
とがっかりしていた。
私たちがお昼をどうするか話をしていたら、履物屋の引き戸が開き、
「ありがとうございました、」
と言う声が聞こえた。喫茶店の長い行列は、6軒隣の履物屋まで伸びていた。その最後尾にいた私は何気なく履物屋の方を見たら、馬鹿皇子が中田さんと体格がいいイケメンと一緒に出てきた。馬鹿皇子と一瞬目が合ったが私はそれを無視して、スッとみっちゃんの後ろに隠れた。




