110.春休み・(父との親子水入らずが・・・)
「呼吸。もっと深く息を吸って、ゆっくり吐いて。」
私はカーンの梵字を手で書きながら座布団に慎重に結界を張った。
「ふー。」
・・・ダメだ。薄くない・・・。父は
「さっきよりもよくできてるよ。綻びもない。ただ、もっと細くて薄く結界を編まなくちゃ、広い範囲では張れないよ。もっとリラックスして。体に力が入りすぎているから厚みが出るんだよ。」
と言った。私は
「わかってるんだけど・・・。うまくできないの!」
と父に当たってしまった。私は
「ごめんなさい。」
と謝ると、父は私の頭をくしゃっと撫でて
「いいって!うまくいかないと悔しいよな!わかる!」
と言ってくれた。そして
「焦らなくていいんだよ。ばあちゃんだって初めから完璧にできたわけではないんだよ。ちょっと見てて。」
と言って、父は私の机の上に結界を張った。
「速いし、綺麗!すごい!」
と私が言うと、父は照れながら
「僕だってやればできるんだよ。ねぇ、このは力を抜いて、頭を空っぽにしてやってごらん。」
「わかった!」
と答え、私は座布団にもう一度結界を張ろうとカーンの梵字を書いた時、うっ。気持ち悪い。吐き気をもよおしたため慌ててトイレに駆け込んだ。私がゲーゲー吐いていると、又馬鹿皇子が
「大丈夫か?」
と言って入ってきた。しまった!鍵をかけていなかった!馬鹿皇子が
「無理をするな。少し休め。」
と言いながら背中をさすってくれる。父がやってきて、
「桜さんの言う通り、少し休みなさい。午前中もばあちゃんと修行してただろ。結界を貼るのは魔力を使うからね。」
と言った。私は
「もう、大丈夫です。」
と言って立ち上がると、うがい手洗いをして部屋に戻った。私は畳の上に寝転がった。・・・なんでうまくいかないの?父さんに成長したところを見てもらいたかったのに!ここでしっかりやっているって安心してもらいたかったのに!悔しくて涙が止まらない。
「ちょっといいか?」
馬鹿皇子の声がした。なんなのよ!私が無視をしていたら
「入るぞ!」
と言って勝手に入ってきた。私は
「勝手に入って来ないでください!」
と言うと、馬鹿皇子は
「おじさんから持って行くように頼まれたから。」
と言って机の上にお茶と羊羹が2組乗ったお盆を置いた。
「用が済んだら出て行ってください。」
と言うと、聞こえなかったのか馬鹿皇子はお茶を一口飲み、羊羹をパクリと食べた。
「うん。うまい。」
と言って、今度は小さく切った羊羹を私の口元にもってきた。
「今はいいです。食べたなら出て行ってください。」
と言うと、又、私の言う事を無視して私の隣に寝転がった。




