107.春休み・(皇子、皇女御一行様④)
食事を済ませると、父から今回馬鹿皇子と風花様がこちらに来た経緯を聞かされた。
陰陽教の信者らしき者達から皇族を殺害するという脅迫状が数十通も届いたのだ。しかも、皇居周辺や、陛下や皇太子の公務先などで人為的に起こされた魔物の被害が多発しているという。だから現在学校が春休み中である馬鹿皇子と風花様は身を隠すためにここに来たというのだ。ここには師匠がいるから帝都より安全だろうということらしい。
だから馬鹿皇子と風花様がここにいることは私達だけの秘密。(うどん部のメンバーに馬鹿皇子が来たって知らせてあげたいけど、残念ながらできません。)名前についても馬鹿皇子は鷹西桜、風花様は鷹西花子偽名を使うので、2人のことは桜さん、花子さんと呼ぶように言われた。そして馬鹿皇子と風花様、2人の警護にあたる父とともにいちゃんはここにいる間は修行に来た人としてここで過ごすとのこと。だから明日から私達と一緒に日課をこなすこととなった。
食器を洗っている私に師匠は、
「このは、悪いけど、これをクリーニング屋に持って行ってちょうだい。」
と言った。あ、これ、馬鹿皇子のスーツ。私は
「わかった。でも、これ、高いやつじゃないの?皇子達がここにいるってバレない?」
と尋ねると
「大丈夫だよ。だってこれは正敏が成人式で着ていたスーツなんだから。」
と答えた。私はスーツの内ポケットあたりを見ると芦屋と刺繍がしてあった。今はお腹周りがぽっちゃりしている父も、昔は馬鹿皇子みたいにスタイルは良かったんだなと感心していたら、師匠は、
「変装させるにも、お2人は高価なものしか持ってなかったんだろうね。だから正敏は、自分のお古のスーツを着せたんだろうよ。花子さんの着ていたスーツも花子さんに合うようにお直しはされていたけど、正敏が昔、着ていたものだよ。」
と言った。私は
「父さん、昔はスマートだったんだね。」
と言うと、師匠は
「ここにいる間、正敏を鍛えてスマートにしてやろうかね。」
と言って笑った。・・・父さん、頑張って!
私は紙袋に入ったスーツを持って家を出ようとしたら馬鹿皇子に呼び止められた。
「このは、でかけるのか?」
「はい。お使いに。」
「そっか、あのさ・・・。」
馬鹿皇子が何か言いかけた時、ともにいちゃんがやってきた。
「これからお使い?」
「うん。クリーニング屋さんに。」
と答えると、ともにいちゃんは
「そっか、気をつけて。」
と言って送り出してくれた。




