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なんでも欲しがる妹が婚約予定だった人まで欲しがるので交換したら幸せが待っていました。

作者: スズイチ



 ――妹は、何でも欲しがっては私から奪って行く子だった。


「わぁっ! アリシアお姉様のドレス綺麗〜。いいなぁ〜ピティが着たぁい!」

 

「わぁっ! アリシアお姉様のいただいたお菓子、とっても美味しそう〜。ピティも食べてもいいわよね? いただきまぁす!」

 

「わぁっ! そのアクセサリー、かわいい〜。ピティが着けちゃおっ! わっ、これ気に入っちゃった! 貰ってもいいですよねぇ、お姉様?」

 

「わぁっ! それって流行りの小説よね? ピティも読んでみたぁい! 先に借りるわね、お姉様!」


 ――そして、要らなくなれば全て私に押し付けてくる。


「え〜、このドレス思ったよりも地味かもぉ〜。ピティには似合わないから、お返しするわね」

 

「う〜ん、このお菓子、思ったより美味しくないわぁ……。ピティはもういらないから、残りはアリシアお姉様が食べてちょうだい」

 

「あれぇ〜……このアクセサリー、思ったよりイマイチかもぉ。ピティには、もっと可愛くて華やかなデザインの方が似合うからぁ、これはお姉様にお返しするわね」

 

「ふぁ〜あ。この本、思ったよりつまらないかもぉ。ピティもう飽きちゃったから、お返しするわ」


 いつもいつも、これだ。

 何度もやめるように言い聞かせたが、聞く耳を持たず……両親にも「あなたは、お姉さんなのだから我慢しなさい」と言われるだけ。

 両親は妹に甘いというよりも、面倒ごとを避けたくて私に我慢を強いてる様子であった。

 

 ――そんな日々が何年も続いたある日、妹のピティがとんでもないことを口にした。

 

「お姉様と婚約するご予定のジャック様、すごく素敵だわぁ〜。ピティ、あの人のこと好きになっちゃったかもぉ。ねぇお姉様ぁ、私に譲ってくださらない?」

 

「――は? あなた……何を言っているの? そんなの無理に決まっているでしょう」

 

「え〜、そんなの分からないじゃない。お父様とお母さまに聞いてみましょう? それと、ジャック様にもっ!」


 そんなことが、まかり通るはずがないと思っていたが、両親はピティがそう言うのならと直ぐに受け入れて……ジャック様も、堅物でつまらない私よりも愛嬌があって天真爛漫な妹の方が可愛げがあって良いと二つ返事で了承されました。


 こうして、私の婚約者になる予定だったジャック様と妹が正式に婚約という運びになった。

  

 そして、私は本来なら妹に宛てがわれるはずだった方と婚約することになる。

 今日は、その婚約者……カーティス様と初めてお会いすることになっていた。


 ◇


「初めまして、アリシア・エッケルトです。……すみません、妹ではなく私と婚約だなんて……」


 カーティス様は私の言葉に、柔らかな金色の髪を揺らしながら首を傾ける。

 

「なぜだ? 私は、君で良かったと思っているが」

 

「……え?」

 

「君の妹のような軽薄そうな人間よりも、堅実で誠実そうな君の方が好ましい」


 ジャック様と真逆のこと言われて、呆然とカーティス様を見つめてしまう。

 端正な顔立ちに、長い手足。人目を惹く華やかな存在感。家柄や身分も申し分ない方なのに、妹は何故カーティス様ではなくジャック様を……。

 まさか、私の婚約者だったから……? いや、さすがに、それはないだろうと首を左右に振る。


 ――カーティス様は、こちらの都合で私と婚約する羽目になったというのに、紳士的でお優しく……何より、とても気の合う方でした。


「あの作家の新刊だが……」 

「私も読みましたわ! 彼のデビュー作も素晴らしかったです」

「あれは傑作だったな」


「よければ、次の休みに一緒に出掛けないか? 君の行きたい場所はあるだろうか」

「……あ、の……(植物園に行ってみたいなどと、伝えてもよいのでしょうか……)」

「もしないのなら、植物園はどうかと思ったのだが……」

「――っ! ぜひ、私も行ってみたいと思っていました!」


「このお茶は、君が淹れてくれたのか?」

「はい。……お口に合いませんでしたか?」

「いや、とても美味しい。茶葉も好みのものだ」

「あ、ありがとうございます! 私の一番好きな茶葉なんです」


 カーティス様と一緒にいると、とても安心できて心地が良い。この方の婚約者になれて良かったと、心からそう思っていた。これからも、この方と共に過ごして行きたい。

 

 ――こんな毎日が続けばいいと願っていた時。


 その日は、カーティス様がうちの屋敷にいらしゃる予定で、おもてなしの準備に勤しんでいた。


「そろそろ、いらっしゃる頃かしら」


 時間を確認していると、玄関の方からバタバタと大きな音が聞こえてくる。


「……何の音?」


 確認しようと扉に手をかけた瞬間、ピティが中へと入って来た。


「――もう、最っ悪!!」

「ピティ!?」


 妹は、悪態をついてソファに座り込む。


「いったい、どうしたの? 今日はジャック様と一日中ご一緒のはずだったのでは?」


 私が尋ねると、ピティが睨みつけてくる。

 

「あの男、ピティがいるのに浮気してたの! それだけでなく、娼館にも通っていたのよ!? 最っ低! 信じられない! もういい、あんな男いらないっ!!」


「……いらないって、あなたねぇ……」


 言いかけたところで、ピティが思い出したように口を開く。

 

「そうだぁ〜! ジャック様ってぇ、もともとはお姉様の婚約者になる予定だったじゃない? だから、お返しするわぁ。それで、カーティス様をピティに返してちょうだい!」


 ――何を言っているの、この子?

 ジャック様を返す? カーティス様を返せ? まるで物か何かのような言い分に目眩がする。


「ピティ、あなた――」

「あらぁ? 何だかお部屋が可愛くなってる〜! もしかして、カーティス様がいらっしゃるの? そうだわ、このお部屋を整えたのは私ということにして! ねっいいでしょ、お姉様ぁ?」

 

「――っ、いいわけないでしょう!? 何を考えているのよ!」


「なによぉ〜ケチ。アリシアお姉様みたいでケチでつまらない堅物よりも、可愛くて愛嬌のあるピティの方がカーティス様も喜ぶに決まっているのに〜! だから、いつもみたいにピティに譲って? 今度はちゃあんと大事にしてあげるからぁ〜。ねぇ、お・ね・え・さ・ま?」


「――っ! いい加減に……」 

「いい加減にしてくれないか」


 あまりに不愉快な発言に声を荒らげようとした時、清涼感のある落ち着いた声が重なる。


「――カーティス様!?」

 

「言い争う声が聞こえてきたので、上がらせてもらった。勝手に申し訳ない」

 

「い、いえ、とんでもありません。こちらこそ、お恥ずかしいところをお見せしてしまって……」


 私が言い切る前に、ピティが甲高い声を上げる。


「まぁ。カーティス様ぁ! お久しぶりですぅ、ピティです♡ わぁ、お会いできるなんて嬉しいなぁ〜。運命感じちゃいますぅ。それに、いつお会いしてもカッコ良くてピティどきどきしちゃう〜! あ~あ、カーティス様が最初からピティが婚約者だったら良かったのになぁ〜」

 

 ピティは、口元に手をあてて首をこてんと傾けるとカーティス様に微笑みかける。


「今からでもどうですかぁ〜? お姉様なんかやめてぇ、ピティと婚約しません? お姉様よりピティの方が、若くて可愛くてみんなに自慢できちゃいますよぉ?」


 カーティス様に、手を伸ばそうとするピティ。だが彼は、その手をぱしんと音を立てて振り払った。


「気安く触れないでもらいたい」

 

「…………え?」


「それに、君が私ではなく姉君の婚約者の方が良いと駄々をこねて、今の形なったのだと聞いたが?」


 驚いて手を引っ込めるピティの頬が引き攣っている。


「……ひ、ひどい……手を振り払うなんて……男の人に、こんな意地悪なことをされたのは初めて……ひどい……うっ……ぐす……誰か……誰か来てぇぇぇ!!」


 ピティの叫び声を聞いて母と使用人たちが部屋に入って来た。


「何事です!?」

「――っ、お母さまぁぁぁ!!」


 母の胸に飛び込むピティ。


「聞いて、お母さま! ひどいのよ、お姉様とカーティス様が二人してピティのことを虐めるのぉ!」


「――アリシア。あなた、この子に何をしたの?」

 

「私は、何も……そもそも、ピティがカーティス様に……」 

「うわぁぁぁぁぁん!! ピティは何もしていないわぁ! なのに、カーティス様がピティの手を叩いたの! ひどいわ! ひど……っ、うっえっ……」


 ピティは口を押さえると、近くの花瓶を手に取り中の花を全て捨てて花瓶の中に顔を突っ込む。


「……うぇ……おえぇ……」

「ピティ! 大丈夫!?」


 母はしゃがみ込むと、ピティの背中をさすりながら、私たちを睨みつける。


「吐いているじゃない! いったい、何をしたのよ! こんなに追い込んで、可哀想に……」 

 

 その様子を見て私は溜め息を落とす。

 

 ――あれは、吐いていない。吐いているフリをしているだけ……ピティのよく使う手だ。泣いて喚いて全身全霊で自分は可哀想なのだと周囲に訴え掛ける。

 恐らく、花瓶の中では舌を出して笑っているのではないだろうか。

 いつもなら、諦めて私が折れるところだ。けれど、今日はそうしない。私だけではなくカーティス様にも迷惑を掛けたのだから、許すつもりはない。私はピティを一瞥してから口を開く――。


「ピティは吐いてなんかいませんよ。試しに花瓶の中をご覧になってみては?」

 

「……え? そ、そんなワケ……」

 

「ピティ嬢、見苦しい真似はそろそろ止めてはどうだ? 不愉快だ」


 カーティス様の言葉に花瓶の中に顔を入れたままのピティが肩を揺らす。


「……ピティ?」


 母が声を掛けると、ピティが顔を出して花瓶を放り投げた。


「――何よ……何よ、何よ、何よ、何よぉっ!! 二人してピティをバカにしてぇ! うわあぁぁぁん! ピティはぁ、浮気されたのよ!? ぐす……っ、ひっく……す、すっごく可哀想なのが分からないのぉ!? あんな浮気男、もういらないからっ、お姉様に返すのぉ! ひぐっ……ぅええ……っ……お姉様の婚約者だったのだからっ……、別にいいでしょう!? ……ぐす……っ、代わりにピティがカーティス様と婚約してあげるって言ってるのぉ! ひっ、ひぐ……っ、そっ、それの何が悪いっていうのよぉ! わあぁぁぁぁん!!」


「ぴ、ピティ……」


 呆れて溜め息を吐く。

  

「――お母さまも分かっていらっしゃいましたよね、ピティがこういう子なのだと。けれど、面倒だからと何事もピティを優先しては、私にばかり我慢をさせていた」


「そ、そんなこと……!」


「ありますよね? さすがに、婚約予定だった方を譲ってくれなどというワガママまで通すとは思いませんでしたが……けれど、お陰で私はカーティス様という、とても素敵な方と婚約できたので、その点においては感謝しておりますわ」


 母の目を真っ直ぐに見ながら伝えていると、カーティス様の手が優しく私の背中に触れる。


「エッケルト家の者たちは、私の婚約者に対して随分と酷い扱いをしていたようだな」


 カーティス様は小さく息を吐くと、私に視線を合わせてくる。


「――アリシア。君さえ良ければ、今日からうちの屋敷に来るといい。こんな家にいても君が辛い思いをするだけだ」


「……カーティス様」


「それと、エッケルト家への援助は打ち切らせてもらう」


「なっ! そ、そんな……!?」


「当然だろう。我が妻になる者に、貴方がたは今までどんな仕打ちをしてきたんだ? 決して許されない行為だ。今後は、ピティ嬢の婚約者に何とかしてもらえばいい」


 話を振られて、ピティが私たちを睨みつける。

 

「はあ!? なんで? なんで? なんでよ!? そんなことしたら、あの男の所に戻らなきゃいけないじゃない! 嫌よ、あんな浮気ばかりする偉そうな男! 絶対に嫌っ!!」


 私は、溜め息を一つ落とす。

 

「――それくらい我慢してはどう? 今まで散々こちらに我慢を強いて、婚約者まで交換させておいて……そもそも最初にジャック様がいいと言ったのは、あなたの方じゃないの」


 悔しそうに唇を噛むピティ。


「――っ、お姉様なんて……お姉様なんて……ピティの言う通りにしていればいいのよ!! ピティの要らなくなった物を身に着けて、ピティのお古だけで生きて行けばいいの! それがお似合いなのよ! なのに……なのに……っ! うわあぁぁぁぁん!!」


「……アリシア。あなた、ピティが可哀想ではないの? こんなにも泣かせて……あなたは、お姉さんなのだから、言うことを聞いてあげればいいじゃない。それと、カーティス様のお屋敷に行くことは許しませんからね」


 私はカーティス様と目を合わせると、互いに溜め息吐く。ダメだ、この母子。


「お母様の許可など必要ありません。私はカーティス様の元へとまいります」


「――何を言っているの? 私は許さないと言ったでしょう!?」


「許していただかなくても結構です。私もあなた方を許しませんから」

「なっ!?」


「……そ、それでいいと思います!」


 突然入って来た声に驚いて振り返ると、やり取りをずっと見ていた使用人の一人……メイドのサリーだった。彼女は、涙目で震えながら母と妹に向かって叫び続ける。


「アリシアお嬢様は、ずっとずっとピティお嬢様のワガママに耐えていらっしゃいました! もう自由にしてあげてください!」


 サリーの叫びを皮切りに、他の使用たちも次々と口を開く。


「サリーの言う通りです、アリシアお嬢様はいつもお一人で我慢していました!」

「それに、お嬢様は私たちがピティお嬢様に酷い扱いを受けるたびに庇ってくれていたんです!」

「我々が虐げられていたら、矛先が自分に向けられるようにしてくださって……」

「そんなお嬢様を、これ以上苦しめないでください!」


「……みんな……」


 主に物申すなんて、恐ろしいでしょうに……。

 私を庇うために立ち向かう使用人たちの健気さに、泣きそうになる。


「あなた達、誰に向かって口を聞いているの!? 使用人風情が、なんて生意気な! 全員クビにするわよ!!」


「――ならば、その者たちはうちの屋敷で雇おう」


 カーティス様の思いもよらない言葉に、私と使用人たちは驚きの声をあげる。

 

「……よろしいのですか、カーティス様!?」

 

「ああ、もちろんだ。この屋敷の使用人たちは、勇敢で見る目もあるようだ。好待遇で迎えよう」


「わあ!」

「やったぁ!」

「ずっと辞めたいと思っていたの!」

「良かったね、サリー」

「うん!」

 

「皆、急いで屋敷を発つ準備するといい。アリシア、君も支度しておいで」 

「……はい!」


 部屋から出ようとすると、弱々しい声でピティが語りかけてくる。


「……ね、ねぇ、お待ちになって、お姉様……本当に行ったりしないわよね? ピティのこと置いて行ったりなんて……ねぇ? だってピティは、あなたの妹よ? 世界でたった一人の可愛い妹のピティなのよ? なのに、そんなこと……」


「……何を言うかと思えば……可愛い妹? 私から何もかもを奪って行って、要らなくなれば返してくる……まるで、私のことをゴミ箱のように扱うような妹のどこが可愛いというの?」


 ピティの顔色が絶望に染まる。


「ピティ、お母さま。アリシアなんていう娘はいなかったと思ってください。もう二度とお会いする事はないでしょう、さようなら」


 私が踵を返すとカーティス様が手を握ってくださる。私は息を一つ吐いてから握り返すと、二人で部屋から出て行った。 

 

「やだやだやだやだぁぁぁ!! 絶対にいやぁぁぁぁ! ジャック様と結婚なんて、いやぁぁぁぁ! お姉様の婚約者だから貰ってあげようと思っただけなのにぃ! こんなのひどい! ひどいわぁぁぁぁぁ!!」

「アリシア!! 戻って来なさい、アリシア!!」


 ◇

 

 その後、エッケルトの家は使用人がごっそりと居なくなり、新しい使用人を雇おうとしても酷い扱いを受けると噂され、誰も寄り付かなくなってしまった。

 そもそも雇うにも、カーティス様からの援助を打ち切られしまい資金繰りが上手くいかずに、かなり落ちぶれている様だ。

 

 妹のピティは、結局ジャック様の元へと行くことになった。ただ、ジャック様との婚約は姉への嫌がらせだということがバレてしまい、随分とぞんざいな扱いを受けているらしい。そのことからエッケルトの家への援助を願い出るも、鼻で笑われてしまったとか。

 ジャック様は外に愛人を作りまくり、ほとんど屋敷には戻って来ることなく、使用人たちからも腫れ物扱いで居場所がないと、毎日のように泣き喚いていると風の噂で聞いた。


  

 ――そして、私はというと……。

 


「お義姉さま、いただき物の焼菓子がありますの。ご一緒に召し上がりませんか?」


「まあ。ありがとうございます、ソフィーさん。でしたら、お茶は私が淹れますわね」


「嬉しい、お義姉さまのお茶大好きです! そうだ、お兄様にも声を掛けてきますわね」


 兄であるカーティス様を呼びに行くソフィーさんを見送ると、私はお茶の準備を始める。

 お茶を用意し終えた頃に、お二人がやって来て私は小さく微笑む。


 三人でテーブルに着くと、和やかなティータイムが開始される。


「わたくし、ずっとお姉様がいたらいいのにって思っていましたの。だから今とっても幸せなんです!」


 にこにこと心の底から嬉しいというような笑顔でお茶を飲むソフィーさんを見て、穏やかな気持ちになる。


「私もソフィーさんのような可愛らしい妹ができて、とても幸せですわ」


 私の言葉に、ソフィーさんの大きな目が一段と輝く。


「まあ……まあ! お兄様、お聞きになりまして?」


「ああ。良かったな、ソフィー」


「ええ、とっても嬉しいです!」


 私は、カーティス様と目を合わせると互いに微笑み合う。


「妹は、君のことが本当に好きなようだ」


「ふふっ、嬉しいですわ」


「私も、妹に負けないくらい君を愛しているよ」


「……え? え? ええ!?」


 突然の言葉に顔が真っ赤になり、私は俯く。


「……あ、ぅ……あ、ありがとうございます、カーティス様。……わ、私もカーティス様のこと……」


 言いかけたところで、そっと手を重ねられると、とろりとした笑みで見つめられる。


「続きは、二人きりの時に聞かせてくれると嬉しい」


「……ぅ、は、はい!」


「きゃー! 大人ですわー! 大好きなお二人がイチャイチャしているところを見れて、わたくし幸せです!」


 はしゃぐソフィーさんに、少し眉を下げなから微笑みかけるとお茶会を再開する。

 

 ふと窓の外を見ると、私に付いてきてくれた使用人たちが楽しそうに仕事をしている姿が目に入り、ほっと息を吐く。


 ――私、アリシア・エッケルトは素敵な婚約者さまと、素直で愛らしい義妹いもうと、それから私に付いてきてくてた大切な使用人たちに囲まれて、幸せな毎日を過ごしております。




 ♢おわり♢




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