ある編入生の日記 別冊 2
この学科には選択授業で魔法生物学があるのだけど、今日はとーってもすごいイモムシさんのお世話をする授業だったわ!
天の白糸っていう、伝説の素材って呼ばれるほどすごい万能な絹糸? を生み出すイモムシさんが発見されたから、特別授業としてみんなで育てることになったのよね。
まさか徒花事案が授業で出てくるとは思ってもみなかったからびっくりしちゃった! こういうこともあるのね。
そうしたら、必修の魔法植物学でも徒花事案の利用があって二度びっくりしちゃった!
豊作ジョウロってやつで、生育が難しい魔法植物を育てて一ヶ月後の魔法薬学の授業でお薬にするために、毎日交代でお水をやりましょう〜みたいな授業だった! クラスで当番を一日二人一組で決めて、順番に毎日朝昼晩に水をあげて、当番表にチェックするんですって。
ミスをしたら魔力反応で分かるようになってるらしいけど、一年生に任せるには結構重大な授業ね?
授業は楽しいし、分からないところとか遅れてるところがあったらダイナも猫耳さんも教えてくれるんだけど、たま〜に悲しい出来事があるから心が重たくなっちゃうわ。
授業のために移動するとき、廊下で「誰かを探す窓」を見たの。お爺さんというには若い気がする……そう、私のお父さんとか先輩のお父さんとか、それくらいのご年齢じゃないかしら? そんな感じの男性の目元が窓から覗いてきてるの。
手までついちゃって、真剣に廊下の中の私たちを見ていたわ。
あの真剣な目、どこかで見たことがあると思ったけど……まるでケーキ屋さんでショーケースを眺めてるお母さんみたいな目だって思ったわ!ちょっと必死になって、値段とケーキを見比べながら血走った感じの目ね。
お名前の通り、誰かを探してるんだと思う。誰を探してるのかは分からないけど、きっと見つけたらそのときは「誰かを探す窓」のはじめての死亡事案が起きるんでしょうね。そんなことを予感させる目だったの。
猫耳さんはどう思う?
(新聞紙の記事が日記の間に挟み込まれている)
猫耳さんはこの記事が関係あると思っているのね?
あなた本当にいろんなことを知ってるのね!
→長年ここに居着いてるから、暇なときに気になったことは全部調べものしてるんだ。それだけだよ。
→そこでちゃんと調べることができるのがすごいのよ! 私は気になってもちゃんと見つけられるとは限らないもの。
そしてこの記事だけど……そっか、この亡くなった人の恋人さんってきっとうちの生徒なのね。
亡くなったかたのお父様は、意識を失ったままずっと犯人を探しているのね。
それなら、はやく見つかるといいわね。
→犯人が死ぬとしても?
→誰かが泣いているなら、泣きやんでほしいと思うことは罪ではないでしょう?




