ある編入生の日記 別冊 1
久しぶりの自分のお部屋! 最高!!
ねえ、猫耳さん、実はね? 先生に見せられないからこっそりもう一冊日記をつけることにしちゃった! 嬉しい? この日記はあなたとの交換日記用なの!
だって、だってね! 猫耳さんのこと、みーんな悪く言うんだもの! 確かに校内安全マニュアルにはそう思えって書いてあったけど、私は自分の見たものも信じたいのよね。あ、でも幻覚を見てることもあるんだっけ? そこだけは注意しなくちゃいけないわね!
猫耳さんはたまに寮の窓辺に来て、おしゃべりして帰っていくじゃない。特に害はないし、学院の植物園とか薔薇園で働いてる庭師さんだっていうから物知りで、どっかの善良な無知の像とは大違いよ!
ほら、あなたのおかげで何度も助かってるし。
猫耳さんって呼ぶと困った顔をしながらオオカミだよって訂正してくるけど、私にとっては猫耳さんなの。でも猫耳さんって呼んでても不便よね? 今度ちゃんとお名前を聞いておかなくちゃ。それか、私が考えてあげたほうがいいのかしら?
あ、そうそう! 異穴のヒビってやつ?この前部屋に現れてびっくりしちゃった! ちょうど大きめの穴が空いてたし、上手くいかなかった魔法植物学のノートを捨てちゃった。植物のスケッチをしていろいろ効能とか書くんだけど、全部スケッチしてたら時間がかかりすぎるから別の方法に変えたのよ。ちょうどよかったし、穴の中がどうなってるか分かんないし、面白そうだと思って。
猫耳さんにその話をしたら呆れられちゃったよね! いいアイデアだと思ったんだけど。
この日記帳はしばらくネイル・ストーカーに付き纏われてて、全部解決したあとに買ってるから上に書いてあるのはそれ以前の話だけど、言いたいことはちゃんと書いておきたいし、やっぱり記録しておこうと思って、こうして書いてるわ。
隔離中にお話をしたときに、いっぱい書いて腕とか指は痛くならないの? って聞かれたけど、これはねぇ〜、魔法でペンを浮かせて書いてるから使うのは魔力だけで済むのよ。心配ありがとう! 魔力操作の鍛錬にもなるから、日記を魔法で書くのってすごくいいことなのよね。すごいでしょ?
ネイル・ストーカーはびっくりしちゃったわね。
ノートとかテーブルとか、あと壁とかに三本の爪痕がいつのまにかついてるようになって、一週間の間で頻度がかなり上がってた。あれは怖かった〜。
猫耳さんが相談に乗ってくれてたから、ちゃんと大人しく隔離室にこもってたけど、そうじゃなくっちゃ怖くて震えてたかもしれない。
隔離室で過ごしてる間も、猫耳さんは他の子たちが来てないときに扉の前まで来てくれてて、扉越しにいつもみたいにおしゃべりしたの。だから気が紛れて過ごしやすかったのよね。
先生には提出しないけど、きっと猫耳さんは見にくるだろうからもう一度言っておくね? ありがとう!
先生には言ってないけど、ネイル・ストーカーに狙われてから一週間目の日は私の名前が、ダイナの……私の友達の声で呼ばれた気がして外に出たの。もう大丈夫よって言われたから。
でも、扉の外に出たら大きな二足歩行の、怖い狼がいて、思わず叫んだら猫耳さんが私の前に立ってた。
いつも持ってる剪定鋏を、身長くらいあるでっかい鋏にしてて、そのままネイル・ストーカーの胴体をこう、チョキンッて。
なんだっけ?
「彼女は君の赤ずきんじゃないよ」だったっけ?
カッコよかったよ! ありがとう猫耳さん!!!
ところで赤ずきんってなに?
→見てるって分かってるなら、恥ずかしいからわざわざそんな臨場感のある書きかたしなくてもいいのに。
赤ずきんは赤ずきんだよ。僕が三女の君には絶対勝てないみたいに。奴は赤いものを身につけた女の子を食べるのが趣味なんだ。君は赤いベレー帽を被ってる日があったよね?
→イメチェンのこと? 確かにあったかも! あれが原因なの?
→原因の一つではあるかな。でも君は青のほうがよく似合うから水色とか青色のものを身につけててほしいね。
→ふーん、友達がそういうなら、そうしてみようかな? ありがとう、参考になったわ!
ところで、私って文才ありそう? あなたの活躍を本にしてみたりできないかな?
→絶 対 や め て ! !
あんまり僕に関わらないほうがいいよ。おしゃべりに付き合ってあげてる僕が言うのもなんだけどさ。
→お友達とおしゃべりできなくなるのは困っちゃうわ! 絶対今後も来て!
→気が向いたらね。




