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徒花事案報告ファイル  作者: 時雨オオカミ
徒花事案報告ファイル

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T-10-16 君は最強の冒険者!

 ◯T-10-16 君は最強の冒険者!


 ・発生場所◇位置不特定

 ・危険度 ◇C


 ・詳細

 君は最強の冒険者! とタイトルらしきものが表紙に書かれた分厚い本。位置不特定であり、ランダムな人物の前に現れる。

 本が出現した場合に手を触れるだけでは発動しないが、本を開くことで発動、活性化する。


 内容は本を開いた人物によって変化し、本を開いた人物を主人公に置き換えた物語が延々と展開されているものである。最強の魔王を倒すべく立ち上がった、いわゆる最強主人公ものの物語が綴られているが、本を開いた人物は物語の趣味嗜好にかかわらずこの内容を必ず好意的に受け取り、没頭することとなる。(この手のよくある物語に嫌悪を感じる人物であっても好意的に受け取る)


 一度から二度目まで本を開いた軽度依存の人物は、この本を好ましく思い、他者から本の存在を秘匿しようとする。また、通常の生活の中でも本の続きを読むことしか考えられなくなり、ぼんやりとするなどの症状が発生する。

 三度目に本を開いた人物は、物語の中に引き込まれたように錯覚し、自身の周囲の環境が物語の中と同一のものに変化したように感じ取る。


 どのような部屋で本を開いたかにかかわらず、三度目に本を開くと本人の周囲が冒険者の酒場の中にいるように変化(錯覚)し、本を開いた人物は本当に本の中の主人公になったかのように振る舞い始める。


 三度目に本を開いた末期依存においては、本人以外の人物に出会うと、本を開いたものはどんな人物が相手であろうともモンスターの姿をしているように見えてしまい、主人公となっている人物は武器を手にして、あるいは魔法を使って襲いかかろうとする。この症状は本人が意識を失うまで継続する。


 ある程度の人物を殺害することに成功すると、今度は本のある場所に引き返しはじめ、本のある場所に引き返すと本に四度目の接触を行う。

 この接触で本を開くと、(三度目で開きっぱなしにしていても、引き返して戻ってくると本は閉じられている)物語に侵食されていた人物が本の中に吸い込まれて消失する。

 開かれたままの本の内容には、その人物の名前を主人公として置き換えた状態で最強の魔王を倒し、最強の冒険者となった主人公を讃える言葉でエンディングを迎えたことが書かれている。

 全てを読み終える頃に本には自然に火がつき、焼失する。


 なお、次に出現した際に確認した内容によると、前回最強の冒険者となった人物が最強の魔王の名前に置き換えられていることが判明している。


 本は開かずに燃やすとあっさりと効力を発揮せずに消失するため、対処は容易である。


 ・補遺

 このタイトルの本を見かけたら絶対に開かないでください。もしくは、見かけたら必ず燃やして処分をしてください。


 危険度ランクはこのまま据え置きです。殺人が引き起こされる可能性は存在しますが、接触だけでは効力を発揮せず、最終段階までに行われる段階が多く、防ぐことが難しくないからです。

 様子のおかしな生徒がいた場合、必ず教師に連絡してください。

 もし三度目に開いた人物が現れた場合、実力行使をもってその人物の意識を刈り取り無力化を行なってください。

 意識を失った場合、本の影響は最初の段階に戻ります。ただちに本を処分することができれば、精神汚染の除去のみで本を開いてしまった生徒の復帰が可能です。


 ・生徒による体験談

 第三段階で殺人を行ったものの、本に入る前に取り押さえられた生徒による供述をここに記します。


 ◇


 頭の中に声が聞こえてくるんです、なにかを殺すたびに。


 ゴブリン(せいと)(ころ)した。レベルが上がった!

 ゴブリン(せいと)(ころ)した。レベルが上がった!

 姫に擬態していたミミック(こいびと)(ころ)した。レベルが上がった!

 とても強いボスオーガ(たんにんのせんせい)(ころ)した。たくさんレベルが上がった!


 もっともっと強くなろう!

 君は最強の冒険者になるんだ!

 もっともっと強くなろう!


 そんな声が……ずっと……うっ、あっ、僕は、あの子を……この手で……。


(錯乱したために昏倒させられ、別室に移動させられたので強制的に体験談は中断された)

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軽度依存から一気に末期症状まで進むの恐ろしい…
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