ある貴族少女の日記 3
本日は全部学科合同の夜会が開催されておりました。
こういうイベントごとは神聖魔法学科の校舎では開催されないのが素敵ですわね。一般学科や貴族学科の方々と安全に交流ができるのでとても楽しみにしておりました。
心の内を吐露いたしますと、他学科の施設では命の危険に怯えずに済むので最高な環境でしたの。爵位の高い方々もおりますから気を抜くことはさすがにいたしませんが、徒花事案を気にせずに歓談することができるのは貴重なことです。心ゆくまでに楽しませていただきました。
けれど、どうやら楽しい夜会でもなにやら事件が起こりました。
と言っても、出張してきた徒花事案が……というわけではございません。
なんと、一方的な婚約破棄の事例が発生したのです。
婚約を破棄された令嬢が……思わずわたくしも笑ってしまったのですが、手をぐっと握りしめて天に掲げながら、はしたなく「よっしゃあ!」と雄叫びをあげておりましたわ。
最優秀成績保持者の寮長様でもそんなことなさるのね。
彼女は王太子殿下によって自宅謹慎を言い渡されて、殿下に侍っている平民が聖女の称号を得るに相応しいということで神聖魔法学科に編入することになった故の喜びのお声だったようです。
雄叫びをあげてしまう気持ちは理解できます。
だって、わたくしもこんなところ早く卒業して出ていきたいんですもの。
青薔薇棟の寮長様が謹慎ということで、副寮長をさせていただいているわたくしが一時的に青薔薇棟の命の全てを管理することになりますわね。
楽しい夜会から一転、胃が荒れてしまいそうです。
さすがに編入したての平民が寮長の実権を握ることはなさそうで一安心しましたけれど。
ところで、あの平民。大丈夫かしら。
この学科は生きて卒業することすら難しいというのに、あんなにご自分に甘い子、すぐに死んでしまうのではなくて?
ですけれど、あの子の生死にわたくしには関係ありませんね。
もちろん副寮長ですのできちんと教育は施すつもりですが、言うことを聞いてくださるかどうかは別です。
この学科では誰もが誇らしく咲き、実を結ぶ花であらなくてはなりません。
あの子のような人は、きっと実を結ぶことができないでしょう。
でも関係ありませんわ。間引かれる花のことなんて、誰も気にしなくなりますから。
たとえ平民が命を落としたとしても、いつものように記憶洗浄魔法の儀式が行われるだけです。
わたくしたち神聖魔法学科の日常はなにも変わりません。
大好きな寮長のお姉様を陥れた愚かな女が落花するとしたら、むしろ胸がすく思いになるでしょう。
誰かが真紅の貴婦人に平民の不幸を願うことだってあるかもしれません。さて、どうなるかしらね。




