表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徒花事案報告ファイル  作者: 時雨オオカミ
徒花事案報告ファイル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/109

T-02-09 君だけのハッピーエンド

 ◯ T-02-09 君だけのハッピーエンド


 ・発生場所◇位置不特定

 ・危険度 ◇S


 ・詳細

 君だけのハッピーエンドは地面から突き出した5メートル程度の鱗のある茶褐色の尻尾部位と、その先に揺れる品種不明の花で構成されている。


 地面の下を目撃した者は全て亡くなっているが、尻尾の鱗の形状などから身体の三倍程もある長い尻尾を持つ巨大なワニのような存在が地の下に埋まり、尾を弓形に反らせ、釣り糸のように高い位置から垂らしている状態なのではないかと推測されている。


 位置は不特定。しかし、林や学院内の森、庭園、薔薇園など周囲に尻尾の花がある程度溶け込める環境であることが条件である可能性が存在する。

 決まって霧の出ている天気の際に出現している。


 花の形状は膨らんだ薔薇にも似ているが、自然界に存在しない(赤色の薔薇を作り出す行為は禁忌であるため、オレンジ系統への品種改良も基本認められていない)オレンジ色の八重咲の形状であるため、薔薇と似て非なるものである。


 その花は美しく、甘く香り、幻覚作用があり、人を著しく惹きつける。


 君だけのハッピーエンドの影響下にある人間は花の中心に会いたい人物が腕を広げて待っているという幻覚を見る。その姿を見ると、影響下にある人間は抱きしめてやりたい、または感極まって抱きつきたいと感じ、多幸感と抗いがたい衝動のまま自ら歩み寄っていく。


 捕食の瞬間は確認されていないが、この徒花事案に接触した人間は血溜まりだけを残して完全に消失するため、捕食行動が行われていると推測されている。

 (以前は遺殻の竜が遺体を盗んでいると思われていたが、実験記録により訂正)


 ・注意事項

 霧の出ている日は匂いに限定した遮断魔法をかけてから外出してください。また、近道などで林、森、庭園の中を歩くのは推奨されていません。必要があって通る際には十分な注意をしてください。


・補遺


 当該徒花事案の名称を変えることはできません。

 一度徒花事案報告ファイルに記載された事項は、補遺や注意事項などで追記する形以外では変更することができません。


 また、報告ファイルに記載されるのは最低限な記述以外は実験を行い、発見された特性などのみです。

 (誘引されている際の多幸感、花の中心に見えるものの発見は安全のため、縄で縛られた教員一名が当該徒花事案への遭遇実験を行った際判明した特性です)


 詳細な実験記録は別紙を参照してください。


 ・補遺2

 近年の死に顔カメラの出現により、上半身がない犠牲者の写真が当該徒花事案によるものと判明しました。よって、花弁の中で抱きしめられた人物はそのまま上半身を食いちぎられ、下半身は絶命した後に捕食されているものと思われます。


 以上のことから花弁の中にも口、あるいは歯のようなものが存在し、地の下のワニであろう本体と上半身、下半身を分け合って捕食している可能性が示唆されました。


 (※ 死に顔カメラが映すのは死因であるため、絶命した瞬間の上半身が食いちぎられたときの写真のみが残されているのだと思われます)


 ・事案1

 授業に遅刻しそうな際、生徒Aが嗅覚遮断の魔法を怠り近道として林の中に進入。当該徒花事案に遭遇し、血溜まりだけを残して消失しました。

彼の痕跡は血溜まり以外に見つかっていません。


 ・事案2

 妹を亡くしたばかりの生徒Bが当該徒花事案を自ら探索し、発見。死亡しました。

身内の不幸があった生徒の精神ケアは徹底してください。


中略


・事案128

 生徒Rのものと思われる血溜まりが発見されました。


 血液の残留魔力を利用し、彼女の個室から回収された手記を開錠したところ、数日前の実験室事故において幻惑売りの女の影響を確認。他の生徒にはマッチの影響は見られなかったため、事件性を考慮して綿密な捜査がされましたが、彼女にマッチの影響を与えた犯人は発見されていません。


 また、手記の記述から幻覚を見ている中で死に顔カメラの影響も確認されています。

 死に顔カメラの元の持ち主であった女子生徒が手記における「先輩」である可能性が高く、主体的に生徒に働きかけていたことから、死に顔カメラ、幻惑売りの女の幻覚作用、どちらも変質の可能性があります。

 また、今回の件で必要性が判明したため、記述の見直しと、記憶洗浄手続きの見直しが行われます。

これにて記者の彼女による第一部は完結。

次回からは第二部です。

おもしろい!と思っていただけたならブクマ・評価などをいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
事案数を鑑みると納得の危険度……事案128以降も件数は増えていると思うと恐ろしい数になりそうです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ