異世界への干渉実験報告書
◯実験内容
・異穴のヒビに以下の素材をねじ込む。
・素材
徒花事案報告ファイルに、「覗いて」複製した日記の断片、人間に発見される前に回収した可哀想な記者の遺書を挟んで新たなページとして取り込んだもの。
・実験目的
この世界の人たちってまだまだなあんにも知らないけど、徒花事案報告ファイルって知ってればもちろん徒花事案への対処法を知ることができるけど、認知度が上がれば上がるほど本に載ってる徒花事案が存在感を増して消滅しづらくなるんだよね!
昔の徒花事案は消滅処理とか、自然消滅とか、あとは潰し合いをして片方が片方を取り込んだりとか、そういうのもいろいろあったんだけど、現在では少ない。それはこれが原因なんだ! 人が死ぬことはある程度防げるけど、その代わり対処を記録すればするほど僕らは存在が強くなって、なかなか死なない。
シリアルナンバーは該当する徒花事案が消滅すると欠番扱いになって、空白になる。昔のものは欠番が多いけど、最近のは全然そんなことはないからね。
異世界からの来訪者の彼女の魂はそもそもこの世界で産まれたものじゃないから残念だったけど、あれは例外かな。
他にも、明確な理由があって徒花事案になってる奴らは、その理由が解消されると消滅する。
編入生の彼女が消した奴らが特にそうだね!
だから、いろんな人に認知されるってのは大歓迎なわけだ。
それは別にこの世界の人たちでもいい。
でも、もし異穴のヒビの向こうに、本当に異世界があったら?
僕の優秀な三角のお耳は異穴のヒビの向こうから聞こえるすごく小さな言葉だって聞こえてきちゃうんだ! だからね、確信した。
体を返してもらった編入生ちゃんが一時期魔法植物学についてのノートを千切って捨ててみたりしてたけど、あれが向こうではよく分からないスケッチとして認識されてるみたい。
向こうには確かに言葉の通じない異世界がある!
そこで僕はこの実験を思いついたんだ!
僕って育ちは悪いけど優秀だからさ、ずっと声を聞いてればある程度向こうの言葉も解析できた。
異穴のヒビからたまに吐き出される文書の文字の解析もした。
その言葉にならって向こうの文字に近いだろう徒花事案報告ファイルのレプリカを作って、編集して、そして投げ込んだ!
まだ実験中だから結果は出てないけど、面白いことが起こるといいと思ってるよ。
人が知れば知るほど僕らの存在感は強くなる。
だからいろんな人が見てくれたら最高!
なら、この世界の人じゃない人たちがこれを見たらどうなる? 僕らは力をつける? それともなんにも変わらない? もしかして、かえって力が弱まっちゃう? 全くの未知!
未知ってすっごくワクワクするよね!
この実験のおかげでこの世界の外の、異世界ってやつにも干渉できるようになったら実験はきっと成功だ。これこそ最高なワルいイタズラに違いない!
もっと、もーっと楽しく過ごせるよ!
ねえ、君もそう思わない?
あれ、気づかなかった?
僕らのことを読んで記憶してくれてありがとう!
ずっと君たちのことを見てたよ。ヒビの間から。目も耳もいいからね!
おかげさまで穴が大きくなってきた。もうすぐ会いに行けるね。楽しみに待ってて!
実験許可: 真紅の貴婦人
実験対象: 異世界
実験者 : 悪さをするオオカミ




