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 これは本当に固定概念が変わった瞬間だ。

 場所は新居から電車で4つ目の駅を歩いて10分程度。初めてだったので携帯のナビを見ながらだと17分くらいかかった。道のりはそう難しくはない。

 そこは入ってすぐに図書館の想像を遥かに超えた吹き抜け天井で、壁紙は白、いやベージュに近い白をベースに、開放感溢れていた。どこかのオシャレなオフィスビルのような、それでいてカフェスペースもある。テラス席まで。

 陽の光がまるで木漏れ日のように館内に差し込んでいる。

 図書館特有の静かすぎる少し強張った空気はなく、どこからか子供の笑い声や、誰かの話し声が聞こえていた。

 不思議と不快ではなかった。

 建物自体がそういう風な設計になっているのだろうか?それともここを利用している人たちの雰囲気がそうさせているのか。

 どちらにせよ、居心地の良さを感じるのはファーストコンタクトで十分だったのは間違いなかった。

 2階もあるようだったので、一応今後の参考までに見に行った。

 もう、説明するまでもないだろう。


 1階のカフェスペースへ向かった。図書館なのを忘れそうになっていたが、身体はしっかりここは図書館だと認識していたようで、階段を静かに降りた。

 下まで降りた途端、知らないおばあさんに挨拶をされた。少し驚いたが、咄嗟に軽くお辞儀をして挨拶を返した。

 誰かと間違えたのだろうか。

 周りには平日で人は少ない方なのだろうが、私以外にも人はいた。が、紛れもなく私に挨拶をして、おばあさんは出入り口の方へゆっくりと向かって行った。

 こういうことは昔からよくある。

 さっきの役所でもそうだ。番号札の紙を取って、待合席に座ってから目の前にあったマガジンラックに町関連の雑誌がさあ読んでくださいっとばかりに整列していたので読んでいた。

 すると1つとばして座っていたおばあさんから前触れなく、「ここにはよく来るの?」と子供に優しく尋ねるように声をかけられたばかりだった。

 他にも、何故かよく道を尋ねられるし、横断歩道で信号待ちしていた時も「ここの信号は長いねえ」なんて世間話風に話しかけられたりもしたことがある。

 最初は何でだ?と思っていたし、実年齢より幼く見られるコンプレックスも相まって煙たがっていたが、いつからか、それを考えることをしなくなった。

 何故かは分からなかった。

 どうと言うことはない事だ。

 だからだろう。

 あの時、彼女に話しかけられた時。何の疑問も不信感も抱かずに、彼女の提案を断らなかったのは。

 いや、断れなかったのは。


 先程挨拶を交わしたおばあさんと同じ。

 そこにいるだけの、 “ただの人” という認識だけだったんだ。



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