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 図書館の入り口で、私は彼女と出会った。

 あの日は蒸し暑さが増して、肌にまとわりつく湿気が嫌にしつこい日だった。

 朝から洗濯機を回して、昨日朝食用に買っておいた6枚切りの食パンにマーガリンを塗ったトーストと、甘めのコーヒーを飲んで役所に行く準備を着々と進めていた。

 一応それなりにちゃんと見える服にするか、と半袖のワイシャツをクローゼットから選ぶことにした。別にTシャツに短パンとかでも良いんだろうけど、この町では初めて行く場所でもあるし、何より役所なんて頻繁に行く場所でもない。故にこの年齢になっても多少は緊張というものをする。

 まあ私だけなのかもしれないが。

 兎に角、それ以外にも理由はあるがここは無難に行きたいところ。

 私服っぽく尚且つビジネスでも行けますよ風なデニム素材のものにした。

 会社に行っていた頃は3パターンくらいのセットアップを着まわしていた。清潔感重視の好きでもない色の何の変哲もない服だった。今はそれが皮肉にもありがたい。

 「今日の南部は晴れ時々曇り、ところにより雨が降るでしょう。急な雷雨にお気をつけください。」

 何となくつけていたテレビからの天気予報のお知らせを聞きながら洗濯物を干した。降水確率は午前が30パーセント、午後が50パーセントらしかった。

 何とも微妙。

 今のところ空模様は晴天で何の問題もない。これまでの経験上、この空の感じだと雨が降った試しはないと勝手に自負していたが、ここは慣れない土地。しかもここは南部よりの北部だ。そして役所は南部側にある。

 もしもに備えて大人しく折り畳み傘を持って行くことに決めたのだが、後にこれを悔やむことになった。

 時刻はちょうど午前9時を過ぎたところだった。役所はとっくに開いている時間だが、まぁ、そんなに張りきって行きたいわけでもなかったので、コーヒーをもう一杯飲んでからのんびりと向かおうではないか。この後予定が詰まっているわけでもない。

 何となしにパソコンを開いた。淹れたてのコーヒーの香りはいつも落ち着く。

 その時思いついた。用事が終わったら、今日はこの町にあるカフェに行くことだ。久しぶりに気持ちが踊った。私はこう見えてカフェで寛ぐのが好きだった。お洒落なカフェも好きだし、喫茶店もなかなかに好きだ。忙しい日々もお気に入りの場所だけは足繁く通った。

 ほんの数ヶ月前を懐かしく思いながら、パソコンで『カフェ 喫茶店 オススメ』などと検索ワードをいくつか打った。ヒットしたのは有名チェーン店から古民家カフェやらホテルのレストランまで。

 大変失礼だが、もっと少ない数を見積もっていたので予想以上の数に少しばかり驚いた。

 星の数や店内の雰囲気を写真で確認したり、メニューはどんなものがあるかなど。終いには口コミまで…

 まったくキリが無かった。何だかだんだん気持ちが億劫になってきた時、一際気になるワードを目にした。

 さっきまで、散々何に悩んでいたのかさえ忘れてしまった。

 「ここに行ってみるか。」

 時計の針を見た。本来の目的を忘れぬうちにと残りのコーヒーを飲み干して必要書類が入った鞄の中身を再度確認した。

 ベットサイドに放り投げていた携帯を充電器から引き抜いて、鍵と一緒にポケットに入れて、早々に部屋を出た。




「図書館の固定概念が変わる。緑溢れるカフェタイムはいかがですか?」





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