ループする悪役令嬢、断罪前に過去に戻る。ヒロインと王太子との出会いを邪魔すればきっと断罪は回避できますわよね?って出会い5分前とかこれ詰んでません?どうなるの?
『死にたくないです』
何度かつぶやいた。でもどうしようもなかった。嗚咽する。でも誰も聞いてくれない。
ギロチンが首に落ちてくるのをただ待つ。
私は確かにダメな人だったけど、でも死罪まではひどすぎると思います。
……戻りたい、やり直したい。神様お願いですわ、あの子をいじめたのは謝ります。
いじめたのは悪かったですわ。お願いです! 死にたくないです。
そう思ったのは本当でした。そしてギロチンが……。
「ユフィ様、どうされました?」
「え?」
「ほら、入学式がはじまりますわよ」
ギロチンが首に来ていない。
私は目を開けると、そこには見知った光景があった。
目の前にいるは友人のメアリー、そして私は衛兵に囲まれてはいない。
今は魔法学院の門の前にいた。
「そろそろはじまりますわね」
「……」
戻りたいとはいいましたけどね。戻れるとは。
私はメアリーの手を取って、ぎゅうっと何度も握り返しました。
「どうされました?」
「いえ現実なんだなって思いまして」
いえこんなこと言っている場合ではありませんわ、パンパンと頬を叩き、痛みを実感しながらも私はこの時間帯なら、もうすぐ王太子殿下とあの子が初めて出会うときが近いということを思い出しました。
「半端な時間にも……いえ間に合いますわ!」
私はドレスの裾を持ち上げ、そして走り出します。
皆があっけにとられた顔でみてますが、かまってられませんわ!
「ユフィ様! どちらに行かれるのですかにゅうがくし……」
「すぐ戻りますわ!」
適当にメアリーに声をかけて、私は走ります。
確か出会いは二階から降りる階段、確か道に迷ったあの子が、階段から足を踏み外して王太子殿下に助けられるところですわ!
阻止しなければ!
「どいてくださいまし!」
私が声をかけるとざざっと皆が驚いたような顔で避けていきます。鬼気迫るといった顔をしているようですわ。だって本当にそうですもの。
「あ、あれですわ!」
私はあの子の目立つ髪を見つけましたわ、ほらあんなピンクなんて髪、めったにありませんもの!
私は急いで走り、階段に駆け寄ります。まだ王太子殿下はいらしてませんわよね!
「……まにあ、って……あ!」
ピンクの髪をした少女、というかにっくきあの女が階段の踊り場で驚いたような顔でこちらを見て、あ、足、足が階段に、そして……。
「きゃ、きゃああああああ!」
盛大な悲鳴とともに、あれが降ってきましたわ、う、魔法も間に合いませんわ、私は仕方なくとっさにあれを受け止めるべく手を広げて……というかダメに決まってますわ。
あれが私の上にどすんと落ちてきて、顔、顔があたって、痛い、痛いですわ。
私の意識はそして闇に沈んでしまったのです。
「大丈夫ですか? ユフィ様?」
「……いひゃい」
「大丈夫かいユフィ!」
「申し訳ありません!」
あ、最初の声はメアリー、次は王太子殿下、そして最後はあの……。
「出会い、出会いを阻止できませんでしたの、どうしましょう、ああああああ、首、首、首!」
「落ち着いてユフィ、大丈夫かい?」
王太子殿下が私を見て心配そうに声をかけてきます。あ、大丈夫睨まれませんわ、憎しみに満ちた顔でこちらをみてません、心配そうです。
「王太子殿下……」
「いやどうしたの? いつも通りクリスって呼んでよ、ユフィ、頭でも打ったの?」
いや王太子殿下とよべといったのはそっちでしょう、愛称で呼ぶなって、いやあれは過去というか未来というか……頭が痛い、体中が痛いですわ。口も切れてます。血が! 痛いですわ。
「ユフィーリア様、申し訳ありません!」
「……いえ、ご無事であればそれでよかったですわ、お怪我はありませんこと?」
あれが私を見てひたすら謝りますわ。えっと、出会いはあったが、怪我をしたのは王太子殿下じゃなくて私で、じゃあ出会いは?
「しかし無茶をする、君、この子の下敷きになったんだよ、回復魔法をかけてもらったから、痛いくらいで済んでるけど、骨折れてたし……」
「とっさでしたのでつい……」
あ、骨も折れてましたの? 唇からつうっと血が流れてますが、骨のそりゃ回復が先ですわよね。
私が納得していると、よかったよ、細かい傷は一週間もすれば治るってと王太子殿下がほっとしたように言ってくださいましたわ。
「……驚きましたわよ、階段から落ちたと聞いたときは!」
メアリーが心配しましたわとな泣きじゃくります。うう、出会いが阻止できず、怪我をして、そしてこれふんだりけったりで、これで……。
「ユフィーリア様、私をかばって、本当に申し訳ありません!」
「いえ、お怪我がなくて何よりですわ、足元にはお気をつけてくださいね」
「ありがとうございます!」
あ、何か手をぎゅうっと握られましたけど、えっとあのピンクの髪に、茶色の瞳ってやっぱり取り合わせが変ですわなんて思いながらあの子の顔を見ると、へ? ほほが赤いですわ。
えっとなんですの? 唇があなたもなにやら……。
「ありがとうございます、ユフィーリア様!」
「ユフィでいいですわよ」
「ユフィ様ありがとうございます、私はルビーと申します。私とあのお友達になってくださいませんか!」
あ、やっぱり図々しい子ですわ、未来でもそうでしたもの、でもまあ嫌われると首がちょん……いやです、仕方なくうなずきます。
すると「ありがとうございます」と抱き着いてって痛いですわ!
「颯爽と私を助けてくださったユフィ様は素敵でした!」
「それは……どうも」
「これからよろしくお願いします!」
えっと、これってクリス様がなにやらこの子を助けたときのセリフなんですけど、そして私を抱きしめこの子の手がなにやらなにやらこう……。
えっとそのあの、回避するためにはこの子に嫌われたらダメですけど、えっとその、「初めてがあなたでよかった……」と小さくルビーが呟きますけど、えっとこれってあのその、あうあうあう、どうしましょう!
えっと私もはじめてって……。
「本当に素敵でした」
「えっとその……」
「うふふ」
嬉しそうに笑うルビー、頬が真っ赤で顔が輝いてますわよ。出会いイベントってえっともしかしてこれって、……神様やり直しさせてくれたのはいいですわ。でもこれってどういうことですの!
私はルビーに抱き着かれながら、神様の間違いですよねと心の中で叫び続けることしかできませんでしたわ。
誰か誰か教えてくださいまし!
う、抱きつきながらお姉さまとかいうのや、やめてくださいましい。あ、手に手が、やり直したいとはいいましたけど、神様ー。
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すいません…。