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孤独の新月  作者: 瑠璃茉莉
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真実

私が目覚めて1週間が経った。

蕾たちの献身的な介護のおかげでようやく歩行できるくらいには回復した。

この年で介護されるなんて思いもしなかったな。


「では、こちらより扉が開かれましたら真っ直ぐお進み下さい。椅子を用意しているので、皆様まずはその横にお立ちくださいませ」


厳格そうなメイド長さんが大きくて豪華な扉の前まで案内してくれて、そう指示された。

綺麗な一礼をしたあと彼女は早くも遅くもないスピードで去っていった。

そして数分もしないうちに内側から扉が開けられる。


「中へ入れ」


柔らかな男の人の声が響いて、私たちは言われるがまま5席の椅子のある場所へと進んだ。

高い天井、私がいた部屋よりもさらに豪華な壁紙。

左右に並ぶ兵隊たち。

そして目の前には3段ほど高くされた場所に豪華な椅子があり、そこには1人の男性が座る。

王様だ。


「この度の太陽の宴(スレイル・ラージュ)で祭りを盛り上げてくれたこと感謝しよう。かけてよいぞ。さて、まずはそなた達の名を聞かせてもらおうか」


かけてよいとは椅子に座っていいとの事だったようで、翼さんたちが椅子に座り始めたから慌てて私も座る。

薄い栗色の髪の毛と海のような青色の瞳。

20代に見える端正な顔立ち。

確か実年齢は36歳だと聞いたが全然見えない。


「俺の名は翼。そして弟の蕾と妹の愛です。それから今回協力してくれた明莉と紬になります」


翼さんが代表して名を挙げてくれる。

それに合わせてみんな王様へ会釈した。

王様は満足そうに笑みを浮かべている。


「さて、回りくどいことはせずに単刀直入に聞こう。そなた達の願いはなんだ?」


椅子の肘置きに肘を立て、王様は頬杖をつく。

やけに視線が絡んでいる気がするのは気のせいだろうか。


「俺たちの願いは両親が殺されなければならなかった真実を知りたい。そしてそのあとは干渉しないで欲しい。それだけです」


翼さんが堂々と宣言した。。

前に愛ちゃんに聞いた通り。

今の国王様は少し前に変わったばかりだと言う。

今の国王様に聞いてわかるんだろうか?


「なるほど。お前たちは親から何も聞かされていなのか。ふむ、ならば場所を変えよう」


王様が席を立つとついてこいと手招きされる。

大きなその広間をあとにして、私たちは応接室のような場所へ移動する。

これまた大きな椅子があり、触り心地は革細工なのにもふんと体が沈み込む。

王様を目の前にして机を挟んで、長椅子に翼さんと愛ちゃん、明莉さん。

その横の2人がけの椅子に私と蕾が座った。


「さて、何から話そうか…」


王様が記憶を辿るように思案する。

その間にできるメイドさんたちがテキパキと私たちの目の前に紅茶を置いていく。

美味しそうなクッキーもついてきた。


「楓。君も入っておいで」


先程までの厳格な話し方から砕けた話し方に変わっている。

この一週間まともに楓さんと話すことは無かったが、色々してくれていたのを知っている。

そんな楓さんが呼ばれると、待機していたのかと疑うほどすぐに現れた。


「さて、真実を話すのはいいんだが、かなり長い時間になる。覚悟しておくれよ?」


楓さんは私と蕾の正面に座る。

机をみんなで囲む形になった。


「さてまずは翼、蕾、愛。君たちのご両親は、花さんと護さんで間違いないかな?」


蕾の指先がピクリと反応する。

翼さんも息を飲んだ。

どうやら間違いないらしい。


「それから紬と言ったね」


いきなり名前を呼ばれでビクリとする。

私に話がふられるとは思っていなかった。


「君の家族は火事で死んだ、のかな?」


ゾワッと鳥肌が立った。

火事じゃない。

男の人たちが沢山入ってきて、その人たちがお父さんたちだけじゃなく村の人たち全員を殺したんだ。

その証拠を隠滅するために山に火を放った。

どうして、火事の場所から逃げたことをこの人は知っているんだろう。


「よし、それじゃあ心して聞くように。君たちの両親4人の話だよ」


「え?」


愛ちゃんがこぼした声。

翼さんも蕾も私も、声すら出ないくらい驚いている。

私も驚いた。

私の両親と、蕾たちの両親は関わりがあった?

クスッと笑う王様はとても優しい顔をしているように思えた。


「まずは君たちに詫びよう。俺が何も出来なかったことを」


そこから語られた話は衝撃的なものだった。


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