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孤独の新月  作者: 瑠璃茉莉
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とある屋敷

本日は1話が短いため2話更新です。


「よくやったぞシンデレラ」


宝石を沢山つけた大きな手のひらで頭を撫でられる。

ほっとする、訳などない。

(わたくし)はこの人に養子として受け入れていただいているが、それはお互いの利害のため。

(わたくし)はこの人を尊敬したことも敬愛したこともない。

父と母の不用意な失敗で見世物として売られた(わたくし)を拾ってくださったことには感謝しないこともない。

けれど、(わたくし)は成り上がりたいだけ。


「お前は賢い。そして美しく稀有な存在だ。この度の祭りでは存分にその美しさを見せつけてきなさい」


褒めて伸ばし、優しく接して心酔させる。

それがこの人のやり方。

(わたくし)は絆されたりなどしない。

それはこの人も知っていて黙認してくれている事だ。


「はい。お義父さま。では明日に備えて(わたくし)は下がらして頂きます」


報告の義務は終了した。

明日からの本選は(わたくし)にとっても転機となるはず。

必ず優勝してみせる。

一礼して扉の取っ手に手をかけた時だった。


「シンデレラ。あの双子を確保したい」


ピクリと指が跳ねる。

はぁ、また始まってしまった…。

希少物収集癖のあるこの変態。

(わたくし)も今は違うが元は希少物だから買われたという経緯だ。


「片方は飾るだけでもまぁまぁだろう。もう片方はキチンと使える。シンデレラ、あれは殺さずに保護しておけ」


面倒くさい。

そう言うだろうと思ったからお金であの子たちを戦闘から遠ざけようとしていたのに、あの子たちも了承しなかった。

どいつもこいつも思い通りになってくれやしない。


「お言葉ですがお義父さま。明日からは殺し合いを目的とした見世物だと聞かされております。下手に手加減してはこちらが危ないですし、人々も満足しないのでは?」


「それが何か私に関係があるのか?」


「…いいえ。確固たるお約束は致し兼ねます。彼らはそれなりに強いので手元が狂うこともありましょう」


「シンデレラ、私はお前に頼んでいるのではない。命令をしているのだぞ」


言外に、別に今すぐ養子から外してもいいんだぞ?と聞こえてくる。

あぁもう!面倒くさい!

自己都合しか考えていない主なんてクソ喰らえだ。

ムチで叩いたり暴力を奮って来たりしないだけマシだが、予定をコロコロと変えられるのもかなり腹立たしい。

本選は国中が注目する。

だからその場で自らのコレクションをお披露目するのが(わたくし)に下った命令だったはずだ。

敵の収集なんて今更面倒くさいことを追加するんじゃない。


「分かりました。善処致します」


これ以上何を言ってもこの人は譲らない。

そう思いながらもう一度取っ手を握った。

あぁそう言えば一つ言い忘れていた。


「それからお義父さま。(わたくし)はもうシンデレラではありませんわよ。貴女の養女(むすめ)、美姫ですわ」


童話収集もこの人の趣味の1つ。

その童話に出てくるキャラクターの名前を使用人につけるという変人ぶり。

とてもつまらないわ。

あぁ、そう言えばつまらなくない事もあったわね。


「あの黒髪の子、一体何者なのかしら…」

来年は皆様にとってよい年になりますように

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