”当時”自宅 夜 後編
『……ッ!』
どうやらあの後、俺はそのまま、この部屋で寝てたようだ。
(部屋に戻って寝直すか……)
電気を消して真っ暗な廊下を歩いて俺の部屋に戻ろうとすると、
何処からか泣き声が聞こえる……
(……母さんの部屋?
ここには誰もいないハズなのに)
「…うっ…ひっく…ひっく…うぅ…」
(……瑠奈?!)
「……お…お母さ……ん
う、うええ…う…うぅ」
『……瑠奈?』
「!!……お兄ちゃん!」
『何してるんだ?』
「な、なんでも、無いよ」
『嘘だろ。
泣いてたじゃないか』
「……」
『瑠奈、君は、本当は……』
「……だって、だって、
お母さんが死んじゃったんだよ!?
お母さんは、お母さんなんだよ!?」
『……ッ!?!!』
その時、瑠奈の思考が俺の頭を巡った。
「あ、私の、頭の中……」
『瑠奈……』
「あ、お兄ちゃ……」
『……大丈夫。
大丈夫だから何も言わないで』
「お……兄ちゃ……ん」
瑠奈は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。
……俺は知らなかった。
瑠奈がこんなにも悲しんでいたなんて……
俺と同じと思ってた。
だけど、本当は違ったんだ……
本当はもっと辛いのに……
不自然じゃない程度に、元気に振る舞って……
このままじゃあ、瑠奈の心は壊れてしまう……
俺に……
俺に何か出来ないのか?
瑠奈を救う事は出来なくても……
心を支える事ぐらい出来るハズだ……
明日から、明日から、目一杯優しく接して――
それで、何かが変わる訳じゃない。
でも、俺はやらなきゃいけない。
兄ちゃんだから、
俺は……
………
彼女は俺同様、能力を持っていた。
俺以上の能力を俺より早く習得していた。
それ故に彼女は敏感で、
心はとても脆い。
彼女にとって身内の死は……
自らの心の死に等しい苦痛だった。
現に彼女の心が癒されるまで一年以上の時が必要だった。
もちろん、それで全てが癒された訳では無いのだが……




