前日(6月23日)自宅 後編
『かづ兄ぃ』…俺をそう呼ぶのは一人しかいない。
顔を見て思い出すより先に言葉が出た。
『惟舞?!』
「そうだよ!かづ兄ぃ」
この娘は槻白惟舞
俺の一つ下の従兄妹だ。
昔はよく一緒に遊んでいた。
いわゆる幼なじみだが、両親が離婚してから滅多に会っていない。
最後に会ったのは二年半前のあの日だった。
ちなみに名前の由来はクリスマス・イヴに生まれた事から彼女の両親がそう名付けたそうだ。
今、思うと安易な名前を付けたモノだとつくづく思う。
『…でも、どうしたんだ?
何でこっちに?』
「実はね、かづ兄ぃと同じ学校に通う事になったの」
『…え?』
「河月…実は惟舞の家、今ゴタゴタしててね。
ちょっとまともに惟舞が学校の通える状態じゃないのよ」
『…どういう事…だ?』
その後受けた説明によると、
惟舞の父親が会社をリストラされて現在求職中にあり、
さらに母親が病気で倒れたそうだ。
収入の見込めない状況で、入院費どころか学費まで払うのはとてもつらく、
そこで姉貴に白羽の矢が立ったそうだ。
『それでこっちに…って…アレ?もしかして…』
「今日から私もこの家に暮らす事になったの」
……俺は少し考えて言った。
『そうか』
その次の瞬間姉貴は耐え切れず言った。
「リアクション薄ッ!」