告白
ああ。もうちょっとだったのに。
ひっくり返った姿勢を元に戻そうとしたとき、目に飛び込んできたのは逆さまのみんみんの背後でスクールバッグを振りかざす佐藤ミカ。
「うわっ、危ないみんみん」
ばんっ
みんみんは佐藤ミカのスクバアッパーカットを喰らった。遠心力ですっげーい効いてそう。
「出てけ! 何するの、みんみんに! このっ、このっ、このっ」
ばんっ ばんっ ばんっ
目の前でオレの体が佐藤ミカに滅多打ちされてる。
「やめろって、ミカちゃん。痛っ。オレ、オレ、みんみんだって」
みんんみんが半泣きで訴える。
「スト―ップ」
オレが止めるしかなかった。
そして、みんみんとオレはミカちゃんに事の顛末を話したのだった。
ミカちゃんはベッドに腰掛けたまま。そして、みんみんとオレはなぜか畳の上で正座。
「うっそだー」
ミカちゃんはきゃははははと笑った。
「本当だって。オレがみんみんなんだって」
みんみんは正座したままミカちゃんを見上げる。
「じゃ、みんみんしか知らないこと言ってみて」
お題が出された。
「出会いは、吹奏楽部のパート練習場所。オレがそこで昼寝してたから。つき合うきっかけは、フルートの練習をオレんちの防音部屋でやったこと。でLINEでつき合うことになって、初デートはフェス。初ちゅーは学校の階段の下。初エッチはこの部屋」
階段の下にキスする場所なんかあるのか。埃とかありそうじゃん。場所選べよ。
で、やっぱこの部屋が現場なんだな。
「そんなの、みんみんから聞いただけかもしんないじゃん」
ミカちゃんは手強かった。
「初めてのケンカはオレがミカちゃんの前で鼻くそをほじったこと」
「それだって友達だったらみんな知ってるじゃん」
あほくさ。
「ミカちゃんの左足の付け根にホクロが2つ。ミカちゃんはそこにキスすると」
「きゃ――――、言っちゃダメ」
たら~
あかん。鼻血出てきた。
てめーら、高校生らしいつき合い方しろよ。
オレが左の鼻にティッシュを詰めていると、みんみんはベッドの上のミカちゃんに抱きついている。そこまででやめてくれ。鼻血で出血多量になったら困る。
「ミカちゃん、好き。全部好き。信じて」
「私も大好き、みんみん。ホントにみんみんなんだね。さっき殴ってごめんね。私のこと助けてくれたんだね」
思い出した。みんみん、サッカーで鍛えた脚を振りぬいてくれたんだよな。めっちゃ強烈だった。
「オレがオージになっても好きでいてくれる?」
「当たり前じゃん」
ベッドに腰掛けたままひしっと抱き合って二人の世界を作ってっし。
「てか、モテモテのオージんなって嬉しい?」
「びみょー」
びみょーなのか。ちょっと傷つく。
二人は抱き合ったままオレを見た。オレに気遣って離れろ。
「なぁ、オージ。オージのカノジョにも話せよ。でさ、カノジョ交換っつーか、要するにそのままなんだけどさ、他から見たら交換? しよーぜ」
能天気平民男は名案とでも言いたげに得意顔。
「オージのカノジョってミスだった子でしょ? 天使可憐さん」
ミカちゃんが言う通り、オレのカノジョはミスG高の天使可憐。モデルのようなすらっとしたプロポーションの見目麗しい女の子。ダンス部でカモシカみたいな脚。一目惚れだった。中身もめっちゃいい子。明るくて優しい。周りにいる人に心を配る。
「今から電話しろって」
「私も一緒に説明するよ」
幸せな2人は抱き合ったままオレを見つめる。離れろ。バカップル。
考えること5秒。
「可憐には言えない」