しよ
言っとけよ。部屋に入ってくるカノジョがいるとか、最重要事項だろ。
佐藤ミカは吹奏楽部。サッカー部でチェックが入る程度に可愛い。猫みたいな大きな目に白い肌。
オレがベッドに腰掛けていると、佐藤ミカは隣に座ってきた。ぎしっとベッドが小さな音を立て、マットが少し沈む。
「どうしたの? みんみん、帰っちゃうんだもん。心配だから来ちゃった」
佐藤ミカはずいっと更にオレに近寄る。再びマットが上下する。同時にカーディガンに包まれた胸もゆさっと揺れる。なぜサッカー部チェックが入ったか。それは顔だけじゃない。胸がでかいから。
「あ、ああ、ごめん」
なぜか謝るオレ。
困った。
オレは距離を取るために、さり気なく3センチほど体を傾けながら遠ざかる。
「具合悪いの? 大丈夫?」
「大丈夫」
佐藤ミカは再び距離を詰め、心配そうにオレの顔を覗き込んでくる。近い近い近い。色白い。胸でかい。さっきよりも体密着してるしっ。
こてっ
佐藤ミカはオレの腕に首をもたせ掛けた。耳も白い。綺麗な形。
Yシャツのボタンを1つ外した襟元の隙間から見える鎖骨。制服のネクタイってさ、やっぱ大切。あれ1つあるだけできっちりガードできると思う。見る方の下心が。佐藤ミカはノーネクタイ。
首元ってちょっとエロい。ここからずーっと素肌が繋がってるんだもんな。
上から眺めるベージュのカーディガンは、圧巻のボリューム。
オレの角度から顔が見えない俯き加減の佐藤ミカは言った。
「しよ」
!
なにそれなにそれなにそれ。
えーっえーっえーっ。
オレ、まだそんな経験ないんだけど。みんみんってDTじゃなかったのか。尊敬。この部屋でこのベッドで、あんなことやこんなことやそんなことをしてるわけ?! 母屋から離れてるから親がいてもお構いなしかよ。どんだけ羨ましい生活してんだよ。旨い飯食って可愛い妹がいて更にはカノジョとやりたい放題?
かわいーじゃん。胸でかいじゃん。柔らかそうじゃん。
でさでさでさ、女の子の方から、そんな端的に。
するっ
佐藤ミカはポニーテールを解いた。はらはらと長い髪が肩に下りてくる。
同時に別のものも解き放たれたのか、佐藤ミカは顔を上げてオレを見つめる。ちょっと潤んだ瞳が色っぽい。
「みんみん……」
焦り半分嬉しさ半分でオレの心拍数は急上昇。迫りくる色香に体を仰け反らせながらも視線はしっかりと佐藤ミカの瞳と唇から下辺りを行ったり来たり。
ごくっ
オレは唾を嚥下した。
央治、行け。漢には越えなきゃならない壁がある。据え膳食わぬは男の恥。何ごとも経験だ。経験値は高い方がいい。こんな降って湧いたチャンスはない。
いやいやいや。ダメだろ。佐藤ミカはみんみんのカノジョだ。体はみんみんでも中身はオレ。
ぽち
更に白い指先は自らYシャツの2番目のボタンをも外した。
同時にオレの理性が決壊する。
体の関係を持つわけだからさ、重要なのは体だよな。いーんじゃね? だって体はみんみんじゃん。
じゃさ、ちょっとだけ。ちょっと見るだけ。リアルの裸見たことないし。
ダメじゃん。みんみんのカノジョ。裸を見るなんて許されない。下着姿まで。で、ちょっと触るだけ。だってでかいじゃん。きっと手をちょっと上げたら自然に触れちゃうと思うんだよな、でかいから。なんかふわっふわな感じするじゃん。確かめたいじゃん。ちょっと揉むだけ。どんな反応するんだろ。やっぱ弄ってみる。ちょっとだけ。
ごくっ
再びオレが唾を嚥下し、そっと右手を上げたその時だった。
どかっ
「うわっ」
オレは強烈な蹴りを喰らって吹っ飛んだ。
ベッドと窓の間に落っこちたまま、ひっくり返ったオレの視界に入ってきたのは、息を切らしながら鬼の形相をしたオレ。中身は平民男。