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ポニーテールの美少女

ヤバい。

これ以上滞在するとボロが出る。

食後のデザートにシャインマスカットが出たが、


「部屋で食う」


言葉少なめで退散した。サンダルがあるから玄関から。




いや~旨かったなー。

明日は何食えるんだろ。



どさっ



みんみんのベッドに仰向けに体を投げ出した。

ぐるっと部屋を見渡す。気になる。漫画が本棚の中で斜めになっていたり、ひっくり返っていたりする。本棚の上には雑誌や参考書が積み上がっている。机の上もひどい。



むくっ



起き上がって机の引き出しの中を見てみた。ぐちゃぐちゃ。思った通り。

箪笥の引き出しの中は綺麗。

察するに、箪笥の中は母親が管理しているのだろう。しかし、他はプライベートスペース。


『部屋、片付ける』


一応、みんみんにLINEを送った。


『ありがてー』


許可を得た。

埃はない。掃除は行き届いている。母親だな、たぶん。

漫画を1巻から並べ、文庫本を作者ごとにまとめ、教科書等を区分。更にプリントを教科ごとの日付順に。

プリントは提出期限がとっくに過ぎたものがいっぱい。どーなってんの? 大丈夫かみんみん。

あれ? なんで現国の教科書2冊もあるんだろ。地図帳も2冊。現国の方は誰のものか分からなかったが、地図帳にはしっかり別の持ち主の名前が書かれていた。隣のクラス。借りたのに返していないんだろーな。

オレは地図帳をリュックに入れた。明日返そ。



がらがら~



誰かが離れに来たらしい。

妹だろうか。ちょっとどきどき。さっきの赤い顔、可愛かったよな。

期待しながら待っていると、


「わん」


ドルチェだった。


「お前かよ」

「わんわんわん」

「怒るなら来んなよ」


犬に向かって普通に会話。ドルチェの前足を見ると土で汚れている。

この犬、庭にも出て来たよな。ってか、庭からしかこの離れには入ってこれねーじゃん。ってことは、土足。


「お座り!」


ちょっとでかい声を出してみたら、ドルチェは条件反射なのか、びしっとお座りをした。


「待て」


自分の命令に自信はなかったが、さすがみんみんの声。ドルチェはじっとしている。

その隙に、オレは雑巾を探した。使っていない風呂場の脱衣所の足元には掃除用と思われるバケツと雑巾があった。


その雑巾を洗い、部屋に戻る。

おおー、まだお座りしてるじゃん。

ドルチェはお座りの姿勢のまま、首だけ向けてじーっとオレの行動を見守っている。


「足拭くから。お手」



たしっ



おおー。ドルチェは見事にお手をした。



ふきふきふき



「おかわり」



たしっ


ふきふきふき



後足も頑張って拭いた。ドルチェが歩いてきた場所も。

ああ! 玄関閉め忘れてた。



がらがら~



カマってやったから猜疑心が解けたのか、ドルチェはオレに甘えてきた。ベッドに寝転ぶと、オレの上に乗ってくる。


「待った。ベッドはダメ。毛が」


すっげー毛。ハンパない。コリー犬ってこんなに毛がつくのか。犬飼ったことないから知らんかった。

こんなん1日いたら、部屋ん中スモーク焚いたみたいんなるじゃん。

だからか。玄関にも机の上にもガムテープがあるのは。

オレは机の上にあったガムテープを丸めて、服に着いたと床に落ちた毛を取った。もちろんベッドも。



がらがらがら~



再び玄関の開く音。ドルチェは鼻先で襖を開けて玄関の方へ走って行った。

今度こそ妹だったりして。


「みんみん、入るね」


そう一言断って、ドルチェが開けた25センチ程の襖戸の隙間から顔を覗かせたのは、隣のクラスの佐藤ミカだった。

ドルチェは出て行ったまま。えっ。二人きり?

ひょっとして、みんみんのカノジョ?

ちょっとたんま。スマホで問い合わせたい。でも、もう目の前にいるし。


佐藤ミカはポニーテールを揺らしながら襖を開けて、部屋に足を踏み入れたのだった。


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