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天使の来訪

街にはクリスマスソングが流れている。

12月入ったら即行クリスマスに早変わり。いや、ハロウィンが終わったら、だったかも。


来週はテスト。

よって本日は部活なしの土曜日。



ぼーっ



コタツ&はんてんの最強アイテムは素晴らしい。

部屋がどんどん散らかって行く。

動きたくなくなるんだよなー。


なんか、手の届く範囲にプリント類が積み上がり始めた。みんみんがどうやって形成されたのか身をもって実感する今日この頃。

みんみん祖父が持っていた孫の手の1つをもらってから拍車がかかった。これ1本でコタツに入ったまま、かなりのことができる。超便利。



がらがら~



玄関の開く音。ドルチェが入ってきたんだと思う。ほっとけば入ってくる。つーか、玄関を閉めに行くものダルイ。今は冬。虫も蛇も冬眠するころだろうし。


「すみませーん」


可憐の声?

まさか。

オレ、とうとう幻聴まで聞こえるようになったのか。もう立ち直ったつもりだったのに。


「すみませーん。平君」



すー



ドルチェがオレの居室の襖を開けて入ってきた。


「わん!」


なんだ? いつもはこんな風に吠えない。


「客?」


可憐によく似た声の? みんみんの知り合いとか?

オレは根っこが生えたケツを上げた。顔すら洗ってねーし。


冷たい廊下をペタペタ歩いて玄関まで行くと、そこには可憐が立っていた。


「突然お邪魔してすみません。天使です。ここの場所は、宝田君から聞きました」


選手宣誓のように可憐は告げた。


「宝田から?」

「『オージに会いたかったら平君の家に行け』って言われて」


宝田、何やってんだよ。やっと失恋が癒えてきたってとこなのに。

お前だってさ、可憐のこと好きなんだろ? だったら、もっと何やってんだよ。


「あら? みんみん、そんなところにお嬢さんを立たせといたら寒いでしょ」


庭の倉庫下で白菜の漬物を作っていた祖母がやってきた。


「こんにちは」

「こんにーちはぁ」

「お祖母ちゃんっ」


「入って入って、お嬢さん。べっぴんやねー。今、茶ぁ持ってくっから。白菜も召し上がれ。コタツ入って温まるといいよー」

「お構いなく」

「お祖母ちゃんっ」


「はーい、ドルちゃんはこっちねー。オヤツ食べに行くよー」


祖母は強引に可憐を玄関の中に押し込むと玄関の扉を閉めてしまった。ついでにドルチェも連れて行ってしまった。


可憐と二人。玄関の三和土。


「あの、ここでは何なので。ちょっと散らかってるんだけど」


やっば。ちょっとじゃねーじゃん。かなり散らかってる。恥ずい。


「突然ごめんなさい。宝田君が連絡してくれるって言ったんだけど」

「あー」


そういえば、LINEあったっけ。


『今日、家にいる?』


そんだけ。


          『一日中。テスト勉』


返信したものの、それっきりだった。


ばばっとものを避けてコタツの一辺の席を勧めた。ああっ。いつもドルチェが寝転ぶとこだから毛がいっぱい。


「ちょっと待って」


オレは立ったままの可憐の足元でガムテープでぺたぺたドルチェの毛を取った。

と、玄関先から声が聞こえた。


「お兄ちゃーん」


妹。


「うぃぃっす」

「お茶とお菓子取りに来て」

「うぃぃ」


呼びに来るなら持ってこいよー。しゃーない。受験生だもんな。


可憐にコタツを勧め、


「あ、どーぞ、適当に座ってて。ちょっと待ってて」


あたふたとオレは母屋へ行った。

母屋では妹が超不機嫌。


「お兄ちゃん、めっちゃ綺麗な人だって? 何やらかしたの?」

「うっせー、ブス」

「お母さん、お兄ちゃんが受験生にブスって言ったぁ」


どうして受験生が関係あるんだろ。


「あらあら、二人とも仲がいいんだからー。ふふふ」


みんみん母はいつものように聖母の微笑みのまま、手作りのパウンドケーキ、紅茶、白菜と爪楊枝が載ったお盆を差し出した。


「ありがと」


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