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妹、かっわ

スマホの地図を頼りに、てくてくとみんみんの家まで行った。


「ここって横浜だよな?」


そう疑問を抱くほど長閑な景色。駅から歩くと広がる田んぼ、畑。


駅徒歩8分。

平家は純日本風の、いかにも農家ですといった家屋だった。敷地内の倉庫には軽トラ&トラクター。


「わんわんわんわんわん」


怖っ。

コリー犬が毛をふわっふわなびかせながら走ってきた。すっげーでかい。レトリバーよりも。

あいつ、ドルチェとか言ってなかったっけ。そんな名前、ミニチュアダックスとかトイプードルしか想像できねーじゃん。

なんでこんなにオレに吠えるんだろ。分かるのか? オレがみんみんじゃないって。


かっわ。


「お帰りなさい、お兄ちゃん」


今度は母屋から女の子が出てきた。これが中3の妹か。めっちゃ美少女。みんみんは生意気で毒ばっか吐くなんて言ってたけどさ、もうオレ、「お兄ちゃん」って響きだけで感動なんだけど。


「ただいま」

「……あれ? なんか、お兄ちゃん、いつもと違う気がする」


鋭っ。

プリティな妹は小首を傾げる。小首ってこの子のためにあるんじゃないのかってくらいの可愛い仕草。


「そう?」

「あ、分かった! だら~ぼけ~って感じじゃないからだ」


毒。これか。

妹はたたたっと走って母屋に入って行った。


「わん。う”~」


まだいるし。ドルチェ。怖いんだけど。


ドルチェの気を荒立てないように、オレはそっと離れらしき建物に行く。

みんみんは離れを自分の部屋として使っていると言っていた。聞いたときは4畳半くらいの物置的なものを想像してたんだけどさ。なんか、でかいんっすけど。


がらがらがらがら~


引き戸。

なんつー不用心な。鍵は、鍵!

玄関脇の下駄箱の上にはガムテープ。なんで?


離れは異空間だった。

田の字形に部屋4つ。他に使っていないキッチンあり。

使っていそうなトイレあり。風呂は未使用。スノーボードや扇風機が置かれていた。

まるっと一軒家を自分の部屋として使っている模様。


極めつけは防音部屋。

8畳間の1つが防音部屋になっている。中にはピアノ、キーボード、ベース、アンプ、マイクスタンド、よく分からない機械、りんごマークのパソコン、太いコード、がごちゃごちゃと置かれている。


ピアノか。中2まで習ってたんだよな。最近弾いてなかった。

自宅にあるピアノには埃が被っていると思う。


防音部屋の隣にはベッドと机がある8畳間。

ラグが敷いてない部分には畳が見える。天井は低い。ドアの高さも自分の家より低い。

机の上はぐちゃぐちゃ。ノートを広げるスペースなし。ど真ん中にガムテープが乗っかっている。



ごん



オレは扉を潜るたびに何度も頭をぶつけた。

みんみんとオレは同じくらいの身長。180あたり。みんみんが猫背なのは、頭をぶつけないようにしているからかも。



ぶぶぶぶー



みんみんから電話が来た。


『あのさー、かーちゃん帰って来るのいつ? 飯は?』

「冷蔵庫ん中に家政婦さんが作ったのが入ってる。ホワイトボードにメモあっから」


オレの家、星野家は両親とも弁護士。帰りは遅い。週2で通いの家政婦が来る。家政婦は掃除、洗濯、2日分の食事を用意し、ホワイトボードにメニューとレンチン時間のメモを残す。週4で家政婦の料理を食べ、週2が母の手料理、週1で外食。


『うぃーっす。オレんとこの飯は6時以降だったらいつ食ってもOK』

「分かった」


オレはベッドの上にあったくたくたのスウェットを身に着けた。人が脱ぎっぱなしのものを着ることにちょっと抵抗があったが、着てみると柔らかさと肌触りが心地いい。



オレも飯食おっと。

母屋へ行ったら、あの可愛い妹に会えるじゃん。


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