上手けりゃいーっつーもんでもねーし
「そーゆーミカちゃんはさー、オレのどこが好きなの?」
ミカちゃんの胸で、みんみんが甘えた声を出した。
「中指と人差し指」
即答。
指?! みんみん、お前はいったいこの指で何をしでかしてるんだ。テクニシャンなのか? そーなんだな?
たら~
あかん、みんみんの体で自分の中指と人差し指を見つめて鼻血。
鼻の穴にティッシュを詰めているとミカちゃんの声が聞こえてきた。キスの音と一緒に。
ちゅ
「ベースの弦抑えてるみんみんの指ってすっごくステキだもん」
なんだよ。紛らわしい発言すんじゃねーよ。
みんみんにはもう1つやっていることがあった。
バンド。
学祭のときだけのバンドだけど、ときどき集まるらしい。みんみんはベース。林も一緒。林はドラム。
林、みんみん、オレで相談。
「オレ、ベースの練習するし。ピアノ習ってたから、なんとかなるかも。テニスもなんとかなったし」
オレは調子こいてた。
「オージ、左手怪我したことにする? 包帯巻こーぜ」
と林。
「え?」
怪我?
「右はラケット持つじゃん。テニ部。だから左に」
「え、ベースってそんなに難い?」
やったことねーけど、何事もチャレンジだろ。ベースって学祭前から3ヶ月くらいでみんな弾けちゃったりしてっじゃん。
「つーかさ、みんみん、ベース、上手いんだわ」
「へー」
やる気出てきた。
「絶対ムリだから。包帯してスタジオ行こっか」
林はやたら包帯を勧める。
「じゃさ、包帯してる間に練習しとく」
オレが意気込みを見せると、林は首を横に振った。
「いいって。バンドってさ、スポーツとはちょいちげーから」
林はオレをバンドに入れるつもりが全くない様子。友達になってクラスでもテニス部でも一緒。それでもやっぱり、林の1番の友達はみんみんで、みんみんとのテリトリーがあるらしい。
ずっと黙っていたみんみんがやっと口を開いた。
「オレー、バンドしたいなー」
それだけ。
でも、林はめちゃくちゃ反応した。
「来いよ、みんみん。怪我してるからピンチヒッターってことでさ」
眩しいほど目がきらっきら。どんだけみんみんと一緒にバンドやりたいんだよ。
当日、オレは左手に包帯。理由は自転車で転んだ、とても弦を押さえらる状態じゃない、ってことにした。
で、星野央治、中身みんみんと一緒にスタジオに行った。
と、オレはギターのヤツにすっげー睨まれた。ボーカルのヤツは口に出した。
「人の女盗るゲスと何へらへらしてんだよ、みんみん」
星野央治と平民男、二人分傷つく。星野央治は今や男の敵なのか。
「あー。それは勘違いだって。今日はオレの代わりにベース弾いてくれるから。連れてきた」
みんみんとして発言。すると、林以外のバンドメンバーは嘲笑。
「ムリっしょ」
「できんの?」
「上手けりゃいーっつーもんでもねーし」
拒否ってる。
なんか、嫌われてる自分の姿って目を覆いたくなる。辛ぇ。
林がタンタンタンタンとスティックを慣らした。
「ま、さ、合わせてみっか。それからじゃん?」
助け船を出してくれた。
ジャーン♪
始まった。息ぴったり。カッコいー。
が、1曲目の途中で止まった。そして、ギターが星野央治を凝視した。でもって、
「みんみん?」
つった。
「「……」」
みんみんもオレも黙ったまま。
「確かに今のベース、みんみんだよな」
「おい、みんみんだろ、なあ」
「キメんとこバッチリだったじゃん。遅れそうんなったとき難しいとこリズム変えてくれたじゃん。その立ち方も」
「みんみんじゃん」
「すっげー。みんみん、どーしたんだよ」
「なんだよー、みんみん」
バンドメンバーは嬉しそうにみんみんを小突き始めた。




